いじくねんてんしょう

胃軸捻転症

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

胃軸捻転症(いじくねんてんしょう)とは、胃が生理的な範囲を超えて病的にねじれてしまった状態をいいます。この病気は、1960年代にBertiという人物が女性の解剖を行った際に発見・報告されました。胃軸捻転症は、「胃が180度以上、または飲食物の流れを閉塞するのに十分な角度まで捻れてしまった状態」と定義されています。

胃軸捻転症は、その特徴により分類されます。胃の捻転の方向による分類(長軸性・短軸性・混合型)や、発生した要因による分類(特発性・続発性)、発症の経過による分類(急性・慢性)などがあります。

成人では比較的まれな病気です。胃X線検査(胃バリウム検査)で胃軸捻転を発見する確率は、小児が3.4%であるのに対して、成人では0.17%と低かったとする報告もあります。ただし、一過性のケースでは診断が正しくなされていないと考えられており、正確な発生の頻度については不明確であるとされています。高齢で発症したり、急に重篤な状態となったりする場合もあるため、早期の診断と、正確な病態把握が必要です。

原因

胃軸捻転症の発症には、新生児や小児において靭帯(じんたい)による胃の固定が不十分であったり(あるいは欠如していたり)、奇形があったりすることが関与すると報告されています。また、乳児の胃は未発達であるため、成人に比べると捻転を起こしやすいとされています。

成人の場合、約3分の2の方が続発性(何らかの病気に伴って起こること)であるとされています。原因となる病気としては、横隔膜弛緩症(横隔膜の筋層が萎縮したり薄くなったりして、横隔膜の緊張が低下した状態)や、食道裂孔ヘルニア(胃の一部が、横隔膜より上の胸部に脱出してしまっている状態)が多いです。

次いで、特発性(原因となる病気がはっきりしないもの)や、胃自体の病気によるものが多いとされ、大腸のガスや胃下垂が影響したという報告もあります。その他、強い腹圧がかかった場合や、高齢者が過食した場合に発症したという報告があります。

症状

突然の嘔吐、上腹部の膨満感(ぼうまんかん)(張る感じ)が一般的な症状とされています。特に急性期では、以前から下記の3徴が診断をつける際に有用であるとされています。

(1)激しいみぞおちの痛みとお腹の張りがある

(2)嘔吐はあるが、内容物がない(吐物がない)

(3)胃管(鼻から胃に挿入するための細い管)が挿入できない、もしくはとても困難である

慢性期では、症状がない状態で経過することが多いとされており、胃X線検査(胃バリウム検査)などで偶然発見されることもあります。

検査・診断

胃軸捻転症の検査としては、問診、腹部単純X線検査、腹部CT検査、胃X線造影検査などを行います。

問診

痛みの状態や、嘔吐時の吐物の量を確認します。

腹部単純X線検査(腹部のレントゲン検査)

捻転により空気の通過が障害されるため、著明に拡張した胃のガス像を認めます。

腹部CT検査

著明に拡張した胃のガス像を認めます。また、胃の壁が壊死(血流が悪くなり、その部分が死んでしまうこと)した場合には、門脈という血管の中にガス像が見られることがあります。

胃X線造影検査(胃バリウム検査)

胃に造影剤(バリウムなど)を流すことで、形などの評価ができる検査です。胃軸捻転症では、捻転した胃の形を捉えられることがあります。また、捻転のために造影剤の通過障害を認めることもあります。

治療

急性の胃軸捻転症の場合は、外科的処置(手術治療)が第一の選択肢となります。手術では胃の捻転を解除してから、胃を前方のお腹の壁に固定する治療方法などが行われます。近年では、腹腔鏡による手術も行われるようになっています。この方法は、お腹に数か所の小さな穴を開け、そこから腹腔鏡というカメラや器具を挿入して行う手術です。より患者さんの体への負担が少なく術後の回復が早い方法であるとされています。

慢性の胃軸捻転症や、間欠的に捻転が起こる場合では、手術ではなく保存的治療をまず行って改善を図ります。具体的には、胃管を挿入してたまったガスを抜き減圧する、上部消化管内視鏡(胃カメラ)で捻転をもとにもどす、などを行います。

これら保存的治療で改善がみられない場合や、壊死、穿孔(せんこう)(あながあくこと)が起きている場合など、緊急手術を行うこととなります。高齢者の場合は、症状がはっきりしなかったり全身の状態が悪かったりするため、保存的治療が選択される場合もありますが、手術時期が遅れてしまうと致命的となる場合もあるため注意が必要です。

胃軸捻転症の死亡率は15~30%とされており、予後の悪い病気の一つです。続発性の胃軸捻転症の場合には、原因となった病気の治療も併せて必要となります。なお、新生児や乳児に起こる慢性の胃軸捻転症の場合であれば、一般的に、胃が発育して、子どもが立って移動するようになる1歳を過ぎると自然に改善するとされています。幼児期になっても症状がよくならなかったり、捻転を繰り返したりする場合などは、手術が必要になることがあります。

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