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食道裂孔ヘルニア

最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

腹部でのヘルニアとは、腹部の臓器がお腹の壁を構成している筋肉の弱い部分(脆弱部)から外側に飛び出している状態をいいます。食道はお腹の中(腹腔内)に入るとき、横隔膜で構成された穴を通ります。この穴を食道裂孔といい、食道裂孔に起きたヘルニアのことを食道裂孔ヘルニアと呼びます。

食道裂孔ヘルニアは以下の型に分けられます。

  • 腹圧がかかることで胃と食道の境目の部分がそのまま口側に上がってくる「滑脱型」
  • 食道と胃の境目は固定されたまま周囲の胃が食道側に入り込んでできる「傍食道型」
  • 両者の要素が混ざった「混合型」

さらに、胃だけでなく大網や結腸などが一緒に食道側に入り込んでくる「複合型」がありますが、この場合には胃の大部分が食道側(縦郭側)に入り込んでいます。食道裂孔ヘルニアで最も多いとされるのは滑脱型です。次に混合型が多いとされており、この2つの型で90%以上を占めているといわれます。

原因

本来、食道は食道裂孔の部位で、丈夫な膜組織により横隔膜に固定されています。この固定が、高齢になったり腹圧がかかったりすることで緩んでしまい、食道裂孔が広がることで食道裂孔ヘルニアが生じます。

症状

食道裂孔ヘルニアは型によって症状に違いがあります。

滑脱型

食道下部で胃酸の逆流を防いでいる下部食道括約筋の働きが弱くなり、食道が閉じにくくなります。そのため、胃内容物や胃液が食道側に逆流を起こします。胸やけ、吞酸(酸っぱい液体が口や喉まで逆流する感じ)といった症状を起こしますが、小さな滑脱型ヘルニアでは無症状のケースも多くあります。

混合型ヘルニア

混合型は、滑脱型がさらに進行したものです。より大きな食道裂孔ヘルニアとなるため逆流もひどくなります。また、胃が圧迫されたり、血流が悪くなって痛みを生じたり、胃潰瘍を起こしたりすることがあります。

傍食道型ヘルニア

傍食道型はまれなタイプです。通常、胃酸や胃内容物の逆流は起こらず、胃が圧迫されることでみぞおちの痛みを生じたり、胃が食道を圧迫することで飲み込みにくさ(嚥下困難)を自覚したりすることがあります。

複合型ヘルニア

高齢化により問題となっているタイプです。高齢の女性に多く、腰が曲がって(亀背といいます)くることで食道裂孔が広がり、また腹圧が上がるため、胃が食道側に入り込みます。重症となると胃全部が食道側に入り込み、複合型ヘルニアの状態となります。これは、傍食道型ヘルニアの進行した形です。

胃酸や胃内容物の逆流は少ないものの、入り込んだ胃が近くの心臓や肺を圧迫してしまい、動悸や息切れの症状が出ます。また、胃のねじれを起こすため、食べ物の通りが悪くなり嚥下困難などの症状をきたします。胃のねじれが高度になると、胃軸捻転という状態となり、血流の障害を起こすことがあります。血流が悪くなることで胃が腐って(壊死)、生命が危険な状態となる可能性があります。

検査・診断

内視鏡検査(胃カメラ)

口や鼻から内視鏡(胃カメラ)を挿入して直接胃の中を観察します。食道と胃の接合部を観察することで、食道裂孔ヘルニアの有無、また型について診断することができます。さらに、胃酸の食道側への逆流による炎症(逆流性食道炎)の評価や、食道がんの有無についての評価も可能です。

上部消化管造影検査(胃バリウム検査)

バリウムを飲んで、食道や胃の形について評価し、ヘルニアの有無や型について評価します。

CT検査

食道側に入り込んだ胃の様子を確認することができます。

治療

経過観察

食道裂孔ヘルニアのすべてが治療の対象となるわけではありません。小さな滑脱型食道裂孔ヘルニアは胃カメラの検査ではよくみられるものであり、症状が特になければ経過観察することが可能です。

手術を考慮する食道裂孔ヘルニアとは

手術を考慮すべき場合とは、食道裂孔ヘルニアの症状があり、ヘルニアが大きい場合です。

胃酸の逆流による症状に対しては制酸薬(PPI)が有効ですが、制酸薬を使用しても症状の改善がみられない場合には、手術を考慮します。大きな食道裂孔ヘルニア、特に複合型のように胃全体が食道側に入り込んでしまった状態では、入り込んだ胃が周囲の臓器を圧迫することで、動悸や息切れを起こしたり、食物の通過障害を起こして食べ物が摂れなくなったりします。このような場合も、手術治療を考慮します。

胃軸捻転の場合には、血流が悪くなって胃が壊死を起こし死亡する危険性が高く、緊急手術が必要となります。ただし、こうした大きな食道裂孔ヘルニアは高齢者に多いため、手術するかどうかは全身の状態、他の病気の有無などを考慮して慎重に判断します。状況が許せば、胃管(鼻から胃へ入れる管)を挿入して圧力を抜き保存的な治療で改善を期待することもあります。

食道裂孔ヘルニアの手術

代表的な手術方法は、胸のなかに上がった胃をお腹のなかの正しい位置に戻し(ヘルニア還納)、広がった食道裂孔を小さくし(食道裂孔縫縮)、逆流を防止するための処置を行う(付加的逆流防止手術:Nissen手術)というものです。

近年では、ヘルニアの大きさに関わらず腹腔鏡での手術が広く行われています。腹腔鏡手術とは、お腹に数か所の小さな穴を開けて、内視鏡や手術器具を挿入して処置を行う方法です。腹腔鏡手術では、体への負担を減らし、入院期間の短縮を図ることもできます。(※ただし胃軸捻転での緊急手術の場合は、開腹手術となります。)

手術の合併症としては、嚥下困難(食べ物を飲み込みにくくなる)が出ることがあります。ただし症状は1か月くらいで軽くなり、3か月程度でほとんど違和感がなくなるくらい改善することが多いです。

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