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インタビュー

食道裂孔ヘルニアの手術-術後の合併症や他の治療との比較、手術適応など

食道裂孔ヘルニアの手術-術後の合併症や他の治療との比較、手術適応など
柏木 秀幸 先生

富士市立中央病院 院長、東京慈恵会医科大学 客員教授

柏木 秀幸 先生

食道裂孔ヘルニアとはー逆流や食道のつかえを引き起こす」では、食道裂孔ヘルニアがどのような疾患なのかについてご説明しました。この記事では、引き続き富士市立中央病院院長・東京慈恵会医科大学客員教授の柏木秀幸先生に、食道裂孔ヘルニアの手術の詳細や、合併症、その他の治療との比較について解説していただきます。

食道胃接合部の食道裂孔への固定は加齢とともに弱くなってきますが、もともと弱い方もいます。また、内視鏡検査を受ける年代ではその過半数に食道裂孔ヘルニアが認められていますが、無症状であることが少なくなく、すべてが治療の対象となるわけではありません。食道裂孔ヘルニアを病気として考える場合は2つあり、1つは胃食道逆流症です。そして、もう1つは食道裂孔ヘルニア自体の問題です。

胃食道逆流症に対する手術は「胃食道逆流症の手術治療」でお話ししましたが、胃食道逆流症の重症化の要因として、滑脱型食道裂孔ヘルニアの存在が重要です。胃食道逆流症に対する手術では、逆流防止手術を加えるだけでなく、食道裂孔ヘルニアの修復を行っています。噴門形成術を行っても、術後に食道裂孔ヘルニアの再発があると、再び逆流するようになりますので、食道裂孔ヘルニアの修復が非常に重要です。

胃食道逆流症の治療の立場からは、プロトンポンプ阻害薬(PPI)に対する反応が重要です。PPIを使っても症状が改善できない場合には、手術適応となります。特に、大きな食道裂孔ヘルニアがあれば、さらに重症な食道炎を伴っていれば、将来的には手術を考慮する必要があると思われます。

ただし、滑脱型食道裂孔ヘルニアとの鑑別で、短食道の存在には注意する必要があります。これは従来先天性と考えられていましたが、重症の逆流性食道炎が持続することにより食道が短縮した、後天性の病気と考えられています。もともと食道裂孔ヘルニアが存在したのかもしれませんが、食道に対する炎症が粘膜だけでなく全層に影響を与え、食道が短くなってきたことにより、さらに逆流が重症化するという悪循環の状態にあります。また、狭窄のような合併症を伴うことが少なくありません。短食道の場合、手術に際し食道をはがしても胃が腹腔内に戻りにくくヘルニア再発が起こりやすいので、手術自体が非常に難しくなります。

病気としての食道裂孔ヘルニアのもう一つの要素は、ヘルニアを起こす臓器による症状です。典型的なものとして、複合型のように胃が縦隔内に入っている場合には、入り込んだ胃による周囲臓器の圧迫、呼吸・循環器の圧迫症状、すなわち動悸や息切れをきたします。また、胃が捻れてくるために食物の通過障害が生じ、食べ物を摂れなくなります。

これらの症状は薬にて改善することができませんので手術が必要です。特に強い痛みを伴う場合は、胃の軸捻転により死亡する危険性が高く、緊急手術の適応となります。ただし、胃管を挿入して減圧を図ることにより、保存的治療により改善することがあります。胃が入り込んでいると、嚥下困難が強いのですが、自然に胃が腹腔内に戻ることもありますので、その場合には食事が取れるようになります。食道裂孔ヘルニアは高齢者が多いために、他の病気の有無などと手術の危険性を考慮して、必要な場合に手術を勧めることになります。

胃の軸捻転に対する緊急手術以外は、食道裂孔ヘルニアに対する手術も腹腔鏡手術が用いられるようになってきました。腹腔鏡手術では、腹腔の数か所に小さな孔を開け、手術器具を挿入して手術を実施します。

食道裂孔ヘルニアの手術では、まず胸の中に上がった胃をお腹の中の正しい位置に戻します。そして、大きくなった食道裂孔を小さくします。

混合型食道裂孔ヘルニア術前後の消化管造影検査

複合型食道裂孔ヘルニアの術前後の消化管造影

食道裂孔ヘルニアを起こすことには、亀背や肥満のように腹圧の上昇が関係していますので、そのようなヒトは手術後も高い腹圧がかかりやすくなります。高度肥満の多い米国では、肥満例の食道裂孔ヘルニアや胃食道逆流症に対しては逆流防止手術では再発しやすいため、肥満手術が行われています。

また、腹腔鏡手術は体に優しい手術で、腹腔内における癒着が起こりにくいことが特徴です。癒着が起こりにくいことはお腹にとって良いことですが、修復時の食道の固定が弱く、ヘルニア再発が起こりやすいとも報告されています。そのため、ヘルニア再発を予防するために方法として、人工布(メッシュ)による補強が行われるようになってきました。

このメッシュによるヘルニア修復は、鼠径ヘルニアにおいて行われています。メッシュは人工物ですが、生体への安全性が高められています。ただし、食道裂孔ヘルニアでは、食物の通過する食道の近くにメッシュが位置するため、食道への損傷などメッシュによる合併症にも注意する必要があります。

食道裂孔ヘルニアの手術で逆流防止手術を加えるかどうかに関しては、意見が分かれます。滑脱型ヘルニアで、胃食道逆流症を起こしている場合には、トゥーペ手術などの逆流防止手術が行われます。食道裂孔ヘルニアの修復だけでも逆流の軽減効果がありますが、時間経過とともに再発しやすくなります。そのため、1960年代にはニッセン手術などの噴門形成術が開発されました。

では、傍食道型のように食道胃接合部が動いていない場合には必要でしょうか。純粋の傍食道型では、胃を腹腔内に戻して開大した食道裂孔を閉じれば良いので、逆流防止術の付加は必要ありません。しかし純粋な傍食道型はほとんどなく、多くの例で食道胃接合部は頭側へ移動しています。この部分の修復を行う際に、食道胃接合部と食道裂孔部の固定が外れてしまうために、固定とともに逆流防止手術が加えられるようになりました。食道裂孔ヘルニアの手術では、ヘルニアの修復が主で、逆流防止術は従となります。食道運動機能低下が起こりやすい高齢者が対象となることから、東京慈恵会医科大学ではトゥーペ手術による噴門形成術を以前から行っています。

食道裂孔ヘルニア手術の合併症としては、胃食道逆流症の手術と同様に、術後に嚥下困難(食事を飲み込みにくくなる)が出やすくなります。噴門形成術の影響も大きいのですが、食道裂孔を縫縮するため、裂孔の絞めすぎの影響もあります。ただし、1か月程度で症状が軽快し、3か月程度で違和感を意識することがなくなるというケースが大多数だとされています。

複合型をはじめ大きな食道裂孔ヘルニアでは、腹圧がかかりやすく再発しやすい要因が存在します。術直後からヘルニア再発の危険性があり、再発の形により捻れや締め付けが起こる危険な状態になるため、緊急手術が必要となります。そのため、確実な食道裂孔ヘルニアの修復手術が行われる必要があります。

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