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逆流性食道炎の治療――薬の種類や生活習慣のポイント

逆流性食道炎の治療――薬の種類や生活習慣のポイント
秋山 純一 先生

国立国際医療研究センター病院 消化器内科 医長・診療科長

秋山 純一 先生

目次
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逆流性食道炎は、強い胸焼けなどの症状からくる精神的・身体的ストレスによって、生活の質(QOL:Quality of Life)が大きく低下してしまう病気です。そのため逆流性食道炎の治療では、QOLの向上を目指した症状のコントロールが大きな目標となります。本記事では、薬物治療を中心とした逆流性食道炎の治療内容や生活習慣のポイントについて、国立国際医療研究センター病院 消化器内科診療科長の秋山 純一(あきやま じゅんいち)先生にお話を伺いました。

逆流性食道炎の治療では、まず胃酸の分泌を抑える薬を使用します。これには“PPI(プロトンポンプ阻害薬)”と“P-CAB(ピーキャブ)(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)”の大きく2つの種類があります。

PPIは、胃酸を分泌する細胞が持つプロトンポンプというはたらきを阻害することで、胃酸の分泌を抑制する薬です。PPIは登場してから30年ほど経ち、今も逆流性食道炎の基本の治療薬となっていますが、患者さんによって効果に差が大きいことが弱点です。この弱点を克服すべく、2015年に新たに登場したのが-P-CABです。これは従来のPPIとは異なる作用機序でプロトンポンプのはたらきを阻害する薬で、より強い胃酸の抑制効果があります。また、効き目の速さと持続力の高さもあり、従来の薬では治療効果が得られなかった患者さんにとってよい薬となっています。

これらの胃酸の分泌を抑制する薬のほか、胃酸を中和する制酸薬、胃の動きを活発にする消化管運動改善薬、胃を弛緩(しかん)させて物をため込む機能を高める六君子湯(りっくんしとう)という漢方薬などを用いることもあります。

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逆流性食道炎は、軽症(グレードA・B)と重症(グレードC・D)で薬の選択方法や治療の進め方が異なります。ここでは重症度別に治療の進め方について解説していきます。

軽症の場合の初期治療としては、先述したPPIまたはP-CABの服用から開始します。PPIであれば8週間、P-CABであれば4週間の服用を続けていただき、加えて生活習慣の改善にも取り組んでいただきます(生活習慣については後述します)。初期治療が終了したら、あらためて病気の状態を確認します。

その段階で症状の改善が見られている場合には、“維持療法”に移行します。これは、逆流性食道炎の悪化や再発を防ぐために、少ない量のPPIを引き続き継続して飲んでいただく治療です。患者さんによっては、症状が出たときにだけの服用も可能です。

一方、初期治療後に症状の改善が見られない場合には、PPIの服用量を倍に増やす、もしくは初期治療でPPIを服用していた方はより効果の強いP-CABに変更します。それでも改善が見られない場合には、ほかの原因や病気の可能性を探るために、24時間pHモニタリング検査や食道内圧検査などを実施します(検査内容については後述します)。

重症の場合、炎症によって食道の出血や狭窄(きょうさく)(狭くなること)、バレット食道などの合併症を起こすリスクが高くなります。そのため、初期治療から胃酸分泌抑制の効果が強いP-CABを4週間服用します。症状の改善が見られたら、P-CABを減量したり、PPIへ変更したりして、引き続き維持療法を継続していきます。重症の方の場合、再発する可能性が高いため、維持療法はしっかり続けていただく必要があります。

一方、初期治療で症状改善が得られない場合にはP-CABをさらに8週間延長して服用し、それでも効果がなければ軽症と同様、詳しい検査を行います。

また、どうしても薬物治療だけでは改善しない場合には外科手術も検討します。これは下部食道括約筋の締め付けを物理的に強める手術になります。

バレット食道:胃酸が食道に逆流することで、食道の粘膜が胃の粘膜のように変化してしまう病気。まれに食道がんに移行することもある。

症状がなかなか改善しないときは、病気の状態を詳しく調べるために24時間pHモニタリング検査を行います。これはpH(酸度)を測定する装置の付いた細い管を鼻から挿入して、食道のpHを24時間連続で記録する検査です。食道のpHは通常6〜7ですが、酸の逆流が起きていると4未満になります。1日のうち、4未満になる頻度やタイミングを計測することで、酸の逆流がどの程度生じているかが分かります。

また、モニタリングの機械にはいくつかボタンがついており、胸焼けを感じたら1番を押す、呑酸を感じたら2番を押す……など、症状によって決められたボタンを押していただきます。これによって、患者さんが感じている症状と酸の逆流との関連を調べることができます。酸の逆流がないときに症状を訴える患者さんもいらっしゃり、その場合には逆流性食道炎以外の原因を考える必要があります。

食道内圧検査は、食道の内圧(内側の圧力)を測定することで、食道や下部食道括約筋のはたらきを調べることができます。胃から食道への逆流の起こす原因となる下部食道括約筋の緩み具体が分かります。また、逆流性食道炎と似たような症状が現れる食道アカラシアという病気が見つかることもあります。

食道アカラシア:下部食道括約筋が硬くなって開かなくなることで、胸焼けなどの症状が起こる病気

満腹になるまで食べすぎると、げっぷが出て一時的に下部食道括約筋が開きます。このとき、酸の逆流が起きてしまうので、お腹いっぱい食べ過ぎず腹八分目を心がけるようにしましょう。

脂肪の多い食事を取ると、十二指腸から脂肪を分解するためのコレシストキニン(CCK)というホルモンが出ます。このホルモンには、下部食道括約筋を緩める作用があり、酸の逆流の原因となります。そのため、高脂肪食の取りすぎないようにしましょう。

また、チョコレートやミントも下部食道括約筋を緩めるといわれています。

胸焼けの症状があるとき、すっきりさせるために炭酸水を好んで飲まれる方も多いですが、過度の炭酸水の摂取はおすすめできません。炭酸水を飲むとげっぷが出て、酸が逆流しやすい状態になってしまいます。

また、アルコールは下部食道括約筋を緩める作用があるため、できるだけ控えるようにしましょう。ただし、薬で症状がコントロールできていれば完全に飲酒をやめていただく必要はないでしょう。逆流性食道炎の治療の大きな目標はQOLの改善ですので、適量であれば嗜む程度であれば問題ありません。

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食べてすぐに横になると、重力の作用がなくなるために酸の逆流が起きやすくなります。特に、食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニアがある方は横になるとより酸が逆流しやすい状態にあるため、特に注意するようにしましょう。

食道裂孔ヘルニア:胃と食道の間にある横隔膜の食道裂孔(食道が通る穴)から胃の一部が上にはみ出してしまう病気。

MN撮影

日本では約10人に1人が逆流性食道炎を持っているといわれており、とても身近な病気です。もし胸焼けや呑酸といったつらい症状が続いていて、市販薬などでも対処が難しい場合には、ためらわずに受診をしていただきたいと思います。つらい症状が続くと、夜しっかり眠れなかったり、思うように食事ができなかったりして生活の質が大きく低下してしまうことも考えられます。また、治療せずにいることで出血などの合併症を起こす危険性もあります。逆流性食道炎は適切に治療すれば症状の改善が見込める病気ですので、まずはお近くの医療機関や病院を受診してみてください。また現在治療中で、なかなか症状が改善しない場合には、当院でも24時間pHモニタリング検査などの詳しい検査を実施していますので、ぜひご相談ください。

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