概要
胆嚢摘出後症候群とは、胆石や胆嚢炎などの疾患により胆嚢を摘出した後も、これら疾患に関連した腹部症状が持続する状態を指します。
手術前にはみられなかった腹部症状が新たに出現することもあります。発症した場合には、原因や疾患に応じた治療が行われます。
胆嚢摘出手術を受ける際には、こうした合併症が発生する可能性や、発生時の対応などについて理解しておくことが大切です。
原因
胆石や胆嚢炎などで行われる胆嚢摘出術をきっかけとして発症します。
胆嚢周囲には膵臓や肝臓などが存在しており、これら臓器から分泌される消化酵素が消化管の中で適切なタイミングで食べ物と混じりあうためには、Oddi括約筋が適切にはたらく必要があります。
このOddi括約筋が手術によって硬く縮まることや、機能不全を起こすことが、胆嚢摘出後症候群の発症にかかわっていると推定されています。
また、胆管内の結石や内臓に分布する感覚神経の過敏性などが発症に関連するとも推定されています。
症状
胆石症や胆嚢炎などで胆嚢を摘出した後、さまざまな腹部症状がみられます。
具体的な症状としては、上腹部の不快感や痛み、吐き気、嘔吐、下痢などを挙げることができます。
こうした症状が手術後数週間程度続くこともあれば、年単位で持続することもあります。慢性的に症状が持続することで、日常生活に支障を生じることもあります。
検査・診断
酵素の流れや肝機能障害の有無、炎症反応などを確認するための検査を行います。
具体的には、血液検査によってALTやAST、ビリルビン、アルカリフォスファターゼ、γ-GTP、アミラーゼ、リパーゼ、白血球、CRPなどを測定します。また、超音波検査やCT検査、MRCP検査などの画像検査により形態的な評価を行うこともあります。
Oddi括約筋の異常によって胆嚢摘出後症候群が誘発されることがあるため、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)により胆道系の内圧を測定することもあります。
胆嚢摘出後症候群で生じる症状は、胃食道逆流症や胃炎、過敏性腸症候群、膵炎、腫瘍などでもみられるため、こうした疾患がないか確認するために、血液検査や画像検査、内視鏡検査などを行うこともあります。
治療
原因に応じてさまざまな治療が考慮されます。Oddi括約筋の機能不全が原因であると考えられる場合には、この筋肉に対する外科的な治療が行われることもあります。
また、結石が残存している場合には結石を摘出する治療や、結石を溶解させるための内服薬治療などが行われます。
胆嚢摘出後症候群は、胆嚢摘出術を受けた方に5~40%の割合で生じる合併症です。合併症発症の可能性や発症時の対応方法などについて、理解しておくことが大切です。
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