せきずいくうどうしょう

脊髄空洞症

最終更新日
2023年11月02日
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2023/11/02
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

脊髄空洞症とは、脊髄(せきずい)の中に脳脊髄液と呼ばれる液体がたまることで脊髄内に空間ができる病気のことです。発症すると脊髄が圧迫され、麻痺などさまざまな神経症状が引き起こされます。国の指定難病ですが、適切な治療を行うことで症状の進行を抑えられるケースも多いとされています。

脊髄空洞症の原因は、生まれつきの脳や脊髄の形態異常、脊髄の腫瘍(しゅよう)や脊髄の血管の異常など多岐にわたりますが、はっきりした原因が分からないことも少なくありません。治療は手術が主体となりますが、しびれなどの症状がある場合は症状を緩和させるための薬物療法も行われます。

原因

脊髄内に脳脊髄液がたまる原因はさまざまですが、後頭部に存在する小脳が脳から続く脊髄のほうへ生まれつき落ちくぼんでいる“キアリ奇形”が代表的です。一方で、脊髄空洞症は脊髄や脊髄を包む髄膜などの組織の炎症や腫瘍、脊髄血管の出血や梗塞(こうそく)外傷による脊髄損傷なども原因となり得るとされていますが、原因がはっきり分からないケースもあります。

また、通常は遺伝する病気ではありませんが、まれに血縁者の発症があることから何らかの遺伝的な要因が関与している可能性があるという考えもあります。

症状

脊髄空洞症を発症すると、内部にたまった脳脊髄液が内側から脊髄を圧迫してダメージを与えるため、さまざまな神経症状が引き起こされます。

症状が現れる部位は空洞が形成された部位や大きさによって異なりますが、多くは片方の腕の脱力、感覚障害、痛み、しびれ、重苦しさなどの症状から始まるとされています。そして進行して空洞がさらに大きくなると、反対側の腕や足などにもしびれ、脱力、感覚障害といった症状が現れるようになり、筋肉の萎縮も伴うようになります。また、空洞が脳にまで広がっていくと物の飲み込みが悪くなるなど脳の神経の異常による症状が現れるようになります。

一方で、脊髄空洞症では自律神経にも障害が及ぶことがあり、発汗の異常や立ちくらみなどの症状がみられることも少なくありません。

検査・診断

脊髄空洞症が疑われる場合、脊髄の内部に空洞が形成されていることを確認するため、MRIやCTミエログラフィーなどの画像検査が必要です。また、ほかの病気と鑑別するために、X線などの画像検査が行われることもあります。

治療

脊髄空洞症の治療は、しびれなどの症状を緩和するための薬物療法と形成された空洞を縮小するための手術が行われます。手術には、“大後頭孔拡大術”と“空洞短絡術”という2つの方法があります。

大後頭孔拡大術は、脊髄が頭蓋骨(ずがいこつ)を通る“大後頭孔”という穴を広げて脳脊髄液の流れを改善する手術です。主に生まれつき大後頭孔から脊髄へ小脳が落ち込んでいるキアリ奇形が原因のケースで行われます。一方、空洞短絡術は脊髄の空洞内にチューブを通して本来脳脊髄液が流れる部位とつなげることで、空洞内に脳脊髄液がたまるのを防ぐ手術です。

選択される手術方法は発症原因や全身の状態などによって異なります。

予防

脊髄空洞症は明確な発症メカニズムが不明な点も多く、現在のところ確実な予防法はありません。

しかし、この病気は適切な治療を行わないと脊髄の空洞が広がり、強い運動麻痺が生じて車いす生活を余儀なくされるケースも少なくありません。何らかの神経症状が続くときは、軽く考えずに医師の診察を受けるようにしましょう。

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