原因
色素失調症は、IKBKG遺伝子の異常によって発症する遺伝性疾患です。この遺伝子は、細胞内の“NFκB”というタンパク質のはたらきを助け、炎症の調整や細胞の自己破壊(アポトーシス)の防止に関わっています。IKBKG遺伝子が正しく機能しない場合、これらの制御機構が正常にはたらかず、特に外胚葉組織において異常な細胞死が引き起こされることが病気の原因として考えられています。ただし、その詳細なメカニズムについてはいまだ解明されていません。
色素失調症は主に女性に発症する疾患です。これは、IKBKG遺伝子が性染色体であるX染色体上に存在していることに関連しています。男性の場合、X染色体を1本しか持たないため、この遺伝子に異常があると正常なタンパク質を産生できず、多くは妊娠初期に流産となります。ただし、極めてまれなケースとして、XXYという特殊な染色体構成を持つ場合や、正常細胞と変異細胞が混在する体細胞モザイクの状態では、男児として出生する可能性があります。一方、女性は2本のX染色体を持つため、片方の遺伝子に異常があっても、もう一方の正常な遺伝子が機能を補完することで、色素失調症を持つ女児として出生します。
この疾患の遺伝形式は、X連鎖顕性(優性)遺伝と呼ばれます。色素失調症の母親から子どもへは、女児の場合は50%の確率で遺伝します。ただし、両親のいずれにも色素失調症がない場合でも、親が精子・卵子を形成する過程で偶然に生じる遺伝子の変化(突然変異)によって発症する場合もあります。色素失調症の母親から生まれる子どもの割合は、色素失調症の女児:健康な女児:健康な男児が1:1:1となることが知られています。
この記事は参考になりましたか?
なお、こちらで頂いたご意見への返信はおこなっておりません。医療相談をご要望の方はこちらからどうぞ。
「色素失調症」を登録すると、新着の情報をお知らせします