しきそしっちょうしょう

色素失調症

最終更新日:
2025年03月19日
Icon close
2025/03/19
更新しました
2023/12/27
更新しました
2017/04/25
掲載しました。
この病気の情報を受け取るこの病気は登録中です

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

医師の方へ

概要

色素失調症とは、粘膜や皮膚の元となる外胚葉(がいはいよう)と呼ばれる組織*に異常が生じることで起こる遺伝性疾患です。10万人あたり0.7人に発症するまれな病気で、男女比は1:20と、ほとんどが女性に認められます。

色素失調症では皮膚症状のほか、中枢神経や目、毛髪、爪、歯などにさまざまな症状がみられます。特徴的な皮膚症状は出生直後からみられ、膿疱(のうほう)(皮膚に(うみ)がたまったもの)や水疱(すいほう)(水ぶくれ)が生じてかさぶたになり、長い色素沈着期間を経てやがて消失するというように、いくつかの段階を踏んで進行します。

また、斜視や先天白内障、網膜剥離などをきたして高度の視力障害が現れたり、中枢神経症状としてけいれんや精神発達遅滞を認めたりするケースもあります。

色素失調症に特異的な治療法はなく、出現する症状に対する対症療法が中心となります。

*外胚葉組織:胎児期に形成される組織の1つで、皮膚、歯、爪、汗腺、毛髪などを形成する。

原因

色素失調症は、IKBKG遺伝子の異常によって発症する遺伝性疾患です。この遺伝子は、細胞内の“NFκB”というタンパク質のはたらきを助け、炎症の調整や細胞の自己破壊(アポトーシス)の防止に関わっています。IKBKG遺伝子が正しく機能しない場合、これらの制御機構が正常にはたらかず、特に外胚葉組織において異常な細胞死が引き起こされることが病気の原因として考えられています。ただし、その詳細なメカニズムについてはいまだ解明されていません。

色素失調症は主に女性に発症する疾患です。これは、IKBKG遺伝子が性染色体であるX染色体上に存在していることに関連しています。男性の場合、X染色体を1本しか持たないため、この遺伝子に異常があると正常なタンパク質を産生できず、多くは妊娠初期に流産となります。ただし、極めてまれなケースとして、XXYという特殊な染色体構成を持つ場合や、正常細胞と変異細胞が混在する体細胞モザイクの状態では、男児として出生する可能性があります。一方、女性は2本のX染色体を持つため、片方の遺伝子に異常があっても、もう一方の正常な遺伝子が機能を補完することで、色素失調症を持つ女児として出生します。

この疾患の遺伝形式は、X連鎖顕性(優性)遺伝と呼ばれます。色素失調症の母親から子どもへは、女児の場合は50%の確率で遺伝します。ただし、両親のいずれにも色素失調症がない場合でも、親が精子・卵子を形成する過程で偶然に生じる遺伝子の変化(突然変異)によって発症する場合もあります。色素失調症の母親から生まれる子どもの割合は、色素失調症の女児:健康な女児:健康な男児が1:1:1となることが知られています。

症状

色素失調症では、皮膚や中枢神経、目、毛髪、爪、歯などにさまざまな症状を認めます。

特徴的な所見である皮膚症状は、大きく以下の4段階で進行していきます。

皮膚症状

第1期(炎症期):出生直後から皮膚に膿疱や水疱が多数現れ、次第にかさぶたになります。

第2期(苔癬(たいせん)期):出生後数週間〜数か月で硬く盛り上がった丘疹(きゅうしん)がみられます。

第3期(色素沈着期):生後3~4か月ごろから褐色で線状あるいは渦巻き状の色素沈着がみられ、長期間持続します。

第4期(色素沈着消退期):4〜5歳ごろになると色素沈着が消失していきます。

その他の症状

全体の約90%で歯の発育不全や欠損などが認められます。また、約半数の患者に円形脱毛症など毛髪の異常がみられます。さらに、40%程度に指の形成異常や頭蓋骨(ずがいこつ)の変形、低身長症などの骨の異常、30%程度に斜視や先天白内障、網膜性疾患などを認め、視力障害や失明につながることもあります。このほか、30%ほどには中枢神経の異常も認められ、精神発達遅滞やけいれんなどをきたすこともあります。

検査・診断

皮膚症状に基づいて診断されます。特徴的な皮膚症状を認めた場合、母親や姉に色素失調症の既往歴がないか確認するほか、皮膚の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査を行うこともあります。

皮膚症状から色素失調症と診断された場合には、目や歯、中枢神経の症状の診断のため、眼科や歯科のほか、小児科、小児神経科、発達小児科などの専門科で定期的に検査が行われます。眼科検査は生後4か月までは1か月に1回、4か月~1歳までは3か月に1回、1~3歳までは6か月に1回、以降は1年に1回の頻度で行われます。

治療

特異的な治療法はないため、出現する症状に対する対症療法が行われます。

皮膚症状として水疱がみられる場合には、外傷を避けるなどして、必要に応じて感染症の治療を行います。また、網膜の血管が閉塞(へいそく)するなど網膜剥離の兆候がある場合には、進行を防止するためにレーザー光凝固療法や凍結療法を行います。網膜剥離が生じている場合は外科的手術などが行われることがあります。

中枢神経症状としてけいれんを認める場合には、抗てんかん薬が処方されます。このほか、頭髪脱毛部の縫合術や歯の欠損に対するインプラント治療など、症状に応じてさまざまな治療が行われます。

医師の方へ

医師向けの専門的な情報をMedical Note Expertでより詳しく調べることができます。

この病気を検索する

この記事は参考になりましたか?

この記事や、メディカルノートのサイトについてご意見があればお書きください。今後の記事作りの参考にさせていただきます。

なお、こちらで頂いたご意見への返信はおこなっておりません。医療相談をご要望の方はこちらからどうぞ。

「色素失調症」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

メディカルノートをアプリで使おう

iPhone版

App Storeからダウンロード"
Qr iphone

Android版

Google PLayで手に入れよう
Qr android
Img app