概要
血清病とは、主にヒト以外の動物の血清*から作られた薬剤の副作用として起こる、アレルギー反応(III型アレルギー)の一種です。
III型アレルギーとは、抗原と抗体**が結びついた免疫複合体と呼ばれる塊が体の組織に障害を引き起こすアレルギーです。III型アレルギーのなかでもアレルギー反応が局所にとどまるものをアルサス反応、全身にまで広がるものを血清病といいます。
投与から数日後に、発熱、発疹、リンパ節の腫れ、関節痛などのアレルギー症状が出現します。まれに、腎障害などの症状が出現することもあります。
血清病が生じた際は、重症度に応じて処置や治療を決定します。軽症の場合は、アレルギー反応を抑える薬剤を用いた対症療法が検討されます。アナフィラキシーショック***などにより命に関わるケースでは、救命救急処置を行います。
*血清:血液を構成する成分のうち、赤血球などの凝固因子を除いた部分のこと。凝固剤を含まない容器で遠心分離を行った際に残る上澄みを指す
**抗原と抗体:体に侵入してきた病原体や花粉などの異物を抗原、体内に入った異物(抗原)を排除しようとはたらく物質を抗体という
***アナフィラキシーショック:重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)のうち、血圧低下や意識障害を伴う命に関わる状況のこと
原因
動物の血清を含む薬剤に対して、自分の免疫反応(アレルギー反応)が過剰に起こることが原因です。
免疫反応とは通常、ウイルスや細菌などの異物が体内に侵入した際に、体内から排除しようとするはたらきを指します。まれに分子標的薬やワクチンなど動物由来の血清を含む薬剤を異物と認識して、アレルギー反応が生じることがあります。
症状
自覚症状としては、発熱、発疹、関節痛、リンパ節の腫れなどがあります。このような症状は、原因となる薬剤を投与してから1~3週間後に現れることが多いとされています。
また、これらの症状は、軽度であれば多くは1~2週間で自然に軽快する一方、重症化すると腎臓などに障害が及び、血尿などの症状がみられることもあります。
検査・診断
血清病はアレルギー反応の一種であるため、発症までの経緯や症状などから診断します。また、ほかの病気との鑑別を目的として、血液検査や尿検査、画像検査(CT、X線など)を行います。
治療
症状を誘発する要因となった薬剤を速やかに中止し、症状に対する対症療法を行います。アレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬などを用いた薬物療法により、かゆみなどの症状の緩和を図ります。
ただし、呼吸困難や血圧低下などアナフィラキシーショックを起こしている場合には、気道確保やアドレナリン注射などの救命救急措置が必要になります。また、臓器障害が生じた場合には、障害された臓器に対する治療も併せて行います。
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