じょうみゃくきけい

静脈奇形

監修:

概要

静脈奇形は、生まれつき静脈がスポンジ状や袋状に肥大して、血液がたまってしまう病気です。かつて血管腫または海綿状血管腫などと呼ばれていたこともあります。一般的に、皮膚の膨らみや青あざなどにより出生時や乳幼児期に病気が見つかることが多いですが、筋肉や関節など体の深いところに起こっている場合には、学童期や青年期になってから診断される場合もあります。

病気の原因として、血管の発達や形成に関わるいくつかの遺伝子の異常が考えられています。しかし、明確な原因は明らかではありません。

一般的な症状は、皮膚の腫れと色の変化(赤や青みがかった暗い色)です。多くの場合、特に痛みは感じません。しかし、成長に伴って症状が進行し静脈に炎症が起きることで、痛みを感じたり、場所によっては関節が動かしづらくなったりするなどの症状が現れる場合があります。

治療方法は病状に応じて選択されますが、病状の範囲が小さい場合は切除を行います。切除が難しい場合は、病変のある血管を固めるための薬剤を注入する場合があります。そのほかの薬物療法としては、血栓症の治療や予防を目的とした抗凝固薬や、近年静脈奇形の治療薬として承認されたシロリムスが使用されることもあります。

種類

静脈奇形にはいくつかの種類があり、病変の深さや発症部位により分類されます。多くは孤発性(非遺伝性)ですが、遺伝性のものや混合型など特殊な静脈奇形もあります。

深さによる分類

  • 表在性静脈奇形……皮膚表面の浅いところに病変があるものを指します。血管が透けて見えやすいため、色の変化や血管の膨らみなどの変化が分かり、病気に気付きやすいとされます。
  • 深在性静脈奇形……筋肉や関節など、皮膚表面から深いところに病変があるものを指します。血管が外側から見えにくいため、膨らみが分かる程度で気付きにくくなります。

部位による分類

  • 筋肉内静脈奇形……筋肉の中に病変がある静脈奇形です。出生時には気付きにくく、成長とともに見つかる場合が多くなります。痛みやしびれがあり、運動時に血管が膨らむなどの症状があります。
  • 顔面部静脈奇形……顔に病変があるものをいいます。あらゆる部分(頬、口唇、眼瞼(がんけん)、顎、額など)に現れる可能性があります。寝かすなど姿勢を変えたり、泣いたり笑ったりすることで顔面に力が入ると、血管が膨らんだり、皮膚が紫色になったりします。
  • 咽頭部静脈奇形(いんとうぶじょうみゃくきけい)……喉や舌に病変があるものです。病変が大きくなると、気道がふさがることで、話しづらくなったり飲み込みが難しくなったりするなどの症状や、睡眠時無呼吸症候群に伴う症状(日中の眠気やイビキなど)が現れる場合があります。

特殊な静脈奇形

  • 青色ゴムまり様母斑症候群……皮膚や消化管にいくつもの病変が起こるまれな静脈奇形です。皮膚症状のほかに、消化管出血や貧血などが起こる場合があります。
  • 家族性皮膚粘膜静脈奇形……遺伝性で、皮膚や粘膜などに小さい病変がいくつも現れる静脈奇形です。
  • グロムス静脈奇形(グロムス奇形)……手足の末端や爪などに、硬いしこり状のものが敷き詰められたような病変がみられます。若年成人に多く、痛みを伴います。
  • 脳海綿状血管腫(脳海綿状血管奇形)……頭蓋内に起こる静脈奇形です。ほとんどは無症状ですが、部位によっては出血やけいれん、麻痺、しびれなどが起こります。

原因

静脈奇形が発症する原因は、現在(2025年2月)は解明されていません。一部では、血管の形成や成長、修復などに関係する遺伝子の異常が背景にあると考えられています。

症状

静脈奇形の一般的な症状は、皮膚の膨らみ、色の変化(赤や青みがかった暗い色)などで、初期には特に痛みを感じない場合が多いとされます。皮膚の膨らみは軟らかいか少し硬さがあることが多く、指で押したり心臓よりも上にあげたりすると萎みます。

皮膚の変化は全身のどこでも起こりますが、特に首から上の部分(頭、顔、口、喉、首など)に起こりやすいとされています。皮膚のほかに、骨や筋肉、内臓に病変が現れることもあります。病変の大きさや数はさまざまで、1か所に1つだけ現れることもあれば、広い部分に複数現れる場合もあります。

成長に伴い症状が進行することが多く、静脈の中に石ができたり、炎症が起きたりすると痛みを感じます。静脈奇形によって血管内に血液がたまり、血栓が形成されやすくなることで出血しやすくなる場合があります。そのため、手術などの際には注意が必要です。静脈内に石や血栓ができると、血管を触ったときに硬いものに触れます。 また、関節が動かしにくくなることもあります。

検査・診断

静脈奇形が疑われる場合には、血液検査が行われます。血液成分の測定結果で全身の出血傾向を把握することができ、血栓の有無などが検査結果から確認されます。

また、超音波検査やCT、MRIなどの画像検査を行うことで、病変の大きさや深さ、形、広がりなどを確認し、診断や治療方針を決める際の参考とされます。

治療

病状の大きさ、数、部位などによって治療を選択します。主に以下のような治療が行われ、いくつかの治療法を組み合わせることもあります。

切除術

メスを使って病変を切り取る方法です。一般的に、病変が小さく、範囲が限られている場合に選択されます。また、硬化療法が難しいとされる部位、たとえば目の周りや指先などの病変にも切除術が行われることがあります。ただし、大きな病変では、切除により過度に出血する可能性があるため慎重に判断されます。

硬化療法

病変に注射針を刺し、硬化薬(モノエタノールアミンオレイン酸塩など)と呼ばれる薬剤を注入する方法です。血管を固めたり塞いだりする目的で行われます。特に、切除が難しい大きな病変や、病変と周りの境目がはっきりしない場合に選択されます。複数回にわたって行われる場合もあります。

保存療法

弾性ストッキングや着圧サポーターを用いて、血流を促し、血液の滞りを減らします。痛みを緩和させたり、血栓を防止したりする目的としても使用が推奨されます。

薬物療法

血栓の治療または予防を目的として、アスピリンやワルファリンカリウム、ヘパリン類縁物質などの抗凝固薬が使用される場合があります。また、シロリムスという内服薬を静脈奇形の患者に使用することで、病気の進行が抑えられ、症状が改善したとの報告があり、治療薬として承認されています。

症状により、強い痛みを伴う場合は鎮痛薬、病変に細菌感染を起こしている場合は抗菌薬も使用されます。

最終更新日:
2025年03月19日
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2025/03/19
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