概要
骨軟骨腫とは、大腿骨や上腕骨などに発生する良性骨腫瘍のひとつで、おもに小児に発生します。骨の成長に重要な「成長板」と呼ばれる付近に発生する骨腫瘍であり、骨の外側に向かって増殖することから「外骨腫」とも呼ばれる病気です。
骨軟骨腫は、良性の骨腫瘍のなかでもっとも頻度が高く、単発性に生じることもあれば多発することもあります。多発性の骨軟骨腫は遺伝性疾患として発症することもあり、家族性に発生するものを「先天性多発性外骨腫」と呼びます。
骨軟骨腫は骨の成熟が完了するとともに、腫瘍の増殖も止まります。症状として日常生活に支障をきたさないこともあれば、痛み、近傍の神経圧迫に伴うしびれなどを呈することもあります。症状の有無、骨の変形などを評価しながら治療方針を決定します。
原因
骨の端に当たる部分には「成長板」が存在しています。成長板は軟骨から骨を形成するため、骨の成長には重要な部位です。年齢を経るにつれて骨の成熟度も高まり、成長板は完全に骨へと置き換えられます。
骨軟骨腫は、成長板付近における骨の成長が骨の外側に向かって生じることで発生します。腫瘍の構成成分には、骨や軟骨が含まれています。発生部位としては上腕骨や大腿骨が多く、特に関節近くの部位に発症します。
骨軟骨腫は単発性に生じることもあれば多発することもあります。多発性の骨軟骨腫は遺伝性疾患として発症することもあり、家族性に発生するものを「先天性多発性外骨腫」と呼びます。いずれのタイプの骨軟骨腫であっても、EXT遺伝子と呼ばれる遺伝子への関連も報告されています。
多発性の骨軟骨腫のうち、先天性多発性外骨腫は家族性に発生することが多いですが、このタイプの病気は「常染色体優性遺伝」と呼ばれる遺伝形式をとります。すなわち、病気の原因遺伝子を持つ方から産まれたお子さんを考えた際、お子さんに病気の原因遺伝子が伝わる可能性は50%です。原因遺伝子を持つからといって必ずしも病気を発症するわけではありませんが、先天性多発性外骨腫では90%以上の確率で病気の発症に至るとされます。
症状
骨軟骨腫では、必ずしも症状が出現するわけではありません。別の理由で撮影した画像検査を通して、偶発的に骨軟骨腫が診断されることもあります。
骨軟骨腫で生じる症状として、外向性に発生する腫瘍を反映して関節周囲に隆起を触れることがあります。症状の出る関節は膝や肩が多く、腫瘍そのものでは痛みを生じません。しかし、骨軟骨腫が周囲の組織を物理的に刺激するようになると、そのことに関連した症状が出てきます。たとえば、腱付近に腫瘍が発生すると、運動する度に腱が腫瘍で刺激されるため、痛みにつながります。また、神経に対して圧迫をきたすと、部位に応じて手足のしびれや痛みが生じます。
そのほか、まれではありますが血管が圧迫されて血流障害をきたすこともあります。また、茎のような形の骨軟骨腫が発生し、外傷をきっかけに茎が折れて急激な痛みや腫れを生じることもあります。
さらに、多発性の骨軟骨腫の場合は、上記の症状に加えて骨の変形症状を呈するリスクが高まります。具体的には、低身長や手足の変形、脊椎のゆがみなどを生じます。
検査・診断
骨軟骨腫では、第一選択としてレントゲン写真による検査を行います。骨軟骨腫の腫瘍性病変には骨成分が含まれているため、レントゲン写真で見極めることが可能ですが、骨成分以外にも軟骨成分(骨成分の表面にあり軟骨帽とも呼ばれる)もあり、これらをより詳細に評価するために、レントゲン写真以外にCTやMRIなどの詳細な画像検査を行います。その際に腫瘍性病変が周囲の腱や神経などへの圧迫が分かることがあります。
骨軟骨腫の診断は、病変部位の組織を実際に採取する生検検査を行います。生検によって得られた検体を顕微鏡でみて、骨軟骨腫特有の変化を確認します。生検検査は、骨軟骨腫の診断が可能であるとともに、骨軟骨腫で合併しうる悪性腫瘍の除外にも有用な情報をもたらします。
治療
骨軟骨腫の治療方針は、症状の有無を中心に決定します。骨軟骨腫によって骨に隆起が生じている場合であっても、症状がない場合には無治療で注意深く経過観察することが多いです。
骨軟骨腫に伴う症状が生じている場合には、手術的に骨軟骨腫を摘出します。特に多発性の骨軟骨腫の場合は、骨が変形していることもあり、変形を修正する手術を行うこともあります。また、骨軟骨腫では悪性化による軟骨肉腫が発生することが頻度は低いですが、報告されています。特に軟骨帽が2㎝以上の厚さや骨が破壊されるなどの所見を認める際には、悪性化を疑い、生検検査を行って診断することが必要となります。悪性化して発生する軟骨肉腫はタイプにもよりますが、一般的には放射線治療や化学療法は効果に乏しく可能であれば手術(広範切除:腫瘍を正常組織に囲んだまま大きく摘出する)が主な治療となります。
さらに、先天性多発性外骨腫は遺伝性疾患としての側面もあるため、遺伝カウンセリングが必要となることもあります。
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