ひとりでも多くの患者さんの人生が豊かになりますように

大阪大学大学院医学系研究科教授(形成外科学)
細川 亙 先生

ひとりでも多くの患者さんの人生が豊かになりますように

形成外科発展のため走り続ける細川亙先生のストーリー

公開日 : 2017 年 03 月 22 日
更新日 : 2017 年 06 月 01 日

形成外科の存在意義とは?治療をもっと多くの人へ

形成外科は、特定の臓器の専門を持たない診療科です。「いったい何をしているの?」と疑問の目を向けられることもありますし、もともとその臓器を専門にする診療科との摩擦が生じかねないところもあります。では、形成外科の存在意義とは何でしょうか。

その問いに私はこう答えます。

「患者さんの人生を豊かにするための診療科です」と。

患者さんの体の機能・整容を改善して、患者さんが自信を取り戻すこと。患者さんが自信を取り戻せば、様々なことへの意欲が湧いて人生が豊かになってゆくと感じています。

形成外科が患者さんの人生を豊かにするための診療科であるならば、地域格差や医師の不足によってその恩恵を受けられない患者さんがいてはならない。そう思い、私は形成外科の治療をより多くの患者さんへ届けるためにこの数十年間を走り続けてきました。

1年目は皮膚科を選択。でも診断学だけでは自分には物足りない

今でこそ大阪大学の形成外科分野の教授や日本形成外科学会の理事長や会長を務めていますが、実は大学卒業後すぐに形成外科医になったわけではありません。その当時は大阪大学に形成外科はなく、はじめは、皮膚科を専攻しました。

しかし、皮膚科は疾患の診断、つまり診断学がメインの領域です。患者さんがどんな疾患に罹患しているのか、その診断をつけることが最も重要で、その後の治療は軟膏を塗る、薬を飲む、紫外線を当てるというふうにパターンが決まっていて誰がやっても同じという時代でした。

とにかく自身の治療技術を磨きたいと燃えていた当時の私には、それが物足りなく感じてしまったのです。

もちろん、皮膚病理診断学は奥深いものであり、立派な皮膚科医の方が多くいらっしゃることに疑いの余地はありません。しかし、私の医師としての長い人生を考えたとき、皮膚科医として生きていくことは、自分の目指すところではないと思いました。では何の医師を目指そうかと考えたとき、当時私が皮膚外科を学ぶために週1回通っていた形成外科に興味を持ちました。

このような経緯があり、最初に勤めた大学病院の皮膚科を半年で辞め、形成外科のあった住友病院の門を叩きました。当時は医師のほとんどが医局に属し、医局人事のもと勤務先が決定する時代。それでも腕のいい形成外科医になりたいとの思いを買い、私を招き入れてくれた住友病院の当時の形成外科部長であった薄丈夫先生にはとても感謝しています。それから十数年間、母校・大阪大学の医局にも属さずに系列と関係なく市中病院などで修練を続けた私が奇異な目で見られていたのは間違いありません。

形成外科との出会い

こうして私は住友病院で形成外科医としての一歩を踏み出します。当時は、形成外科を標榜している病院が少ない時代でした。

関西でもなかなか形成外科がないなかで、住友病院は年間1000件を超える形成外科手術を行う、関西圏の形成外科領域のパイオニア的存在。先天性の疾患から、やけどや交通事故の傷跡を治す整容・再建・皮膚・手などあらゆる領域の手術を行っていたのです。

住友病院に勤務している当時、私は私を含めた5名の形成外科医で年間1000件以上の手術を行っており、数をこなすうちに自ずと手術の腕が磨かれていることを実感しました(このような環境での経験が私の形成外科医としての礎をつくっていますし、後進の教育において「若いうちからどんどん手を動かす」という教育方針のもとにもなっています)。

形成外科医として治療に打ち込み、勤務して5年経ったころには、住友病院で行う手術は一通りマスターしていました。そして、その後のキャリアを考えたとき、次の1年を住友病院で過ごすよりも新天地で過ごす方が有意義だと思い、その当時すでに形成外科講座ができていた香川医科大学に異動しました。香川医科大学では助手(現在で言う助教)として働きながら研究を行い博士号を取得しました。

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大阪大学大学院医学系研究科教授(形成外科学)

細川 亙 先生

大阪大学医学部卒業後、住友病院形成外科医長、関西労災病院形成外科部長などを歴任し、現在は大阪大学大学院医学系研究科にて形成外科学教授を務める。類型に当てはまらない疾患などの治療経験に富み、新たに開発した手術治療法を国内外に向けて多数公表している。日本形成外科学会の理事長を務めるなど、形成外科学におけるオピニオンリーダーとして活躍する一方、臨床医として常に患者さんの声に寄り添う診療にも力を注いでおり、医療者・患者さん双方からの高い信頼を得ている。 弟子の育成にも定評があり、各地の大学の形成外科に教授や診療科長を輩出している。2017年に日本人として初めて(世界でも7人目)のアメリカ形成外科学会名誉会員となった。

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