名医とは、自分ができることを見極められる医師のこと

昭和大学医学部産婦人科学講座 講師
石川 哲也 先生

名医とは、自分ができることを見極められる医師のこと

常に責任を持ちながら患者さん第一の医療を突き詰める石川哲也先生のストーリー

公開日 : 2017 年 09 月 04 日
更新日 : 2017 年 09 月 04 日

結果がすぐみえることが、やりがいにつながる

幼いころ、私は体が弱く、町のクリニックに通院していました。そんなこともあって医師はとても身近な存在でした。医師を志したのも、私からすればごく自然なことでした。

医学部卒業を間近に控え、手術を志向していたことから外科系を中心にさまざまな診療科を回りました。そのなかでも、医師などスタッフの雰囲気や、扱っている領域の幅広さなどに惹かれて産婦人科を選択しました。

産婦人科の扱う領域は多岐にわたります。不妊症の治療などを扱う生殖・内分泌領域、妊娠・出産を扱う周産期の領域、子宮頸がんなど女性特有のがんを扱うがん領域、子宮筋腫・子宮脱などの良性疾患を主に扱う領域。内科的治療も外科的治療もともに行い、実に幅広く構えている点が産婦人科の特徴です。

私は特に良性疾患の内視鏡手術を専門としています。良性疾患ですから、がんのように直接命に関わることはありません。しかし、放置しておけばつらい生理痛や不妊など、患者さんの生活の質の低下につながりかねないものです。

一生付き合ってゆく体だからこそ、良性疾患であってもしっかりと治療すべきですし、子宮筋腫など「手術をすれば治る」病気の治療は、結果がすぐにわかり、私にはとてもやりがいを感じられました。

手術で患者さんにつらい思いをさせたくない

一方で、私が医師として働きはじめた当時は内視鏡手術が普及しておらず、開腹での治療が主流でした。開腹手術はお腹に10cmほどのある程度の大きさの傷が残ってしまううえに、術後も傷が痛みます。これらの点に対して抵抗感を持つ患者さんも少なくありませんでした。また子どもを持つ女性では、家事や育児などのため長期の入院に抵抗を覚える方もいました。

しかし同じ治療を開腹手術ではなく腹腔鏡手術で行うことで、入院期間を短くすることができ、術後の回復も早い。腹腔鏡手術でなら、患者さんがつらい思いをすることが少なく、治療ができる――。

しかし当時は今ほど腹腔鏡手術の技術が進歩していなかったため、腹腔鏡で治療できる症例が限られていました。今の技術を発達させ、腹腔鏡手術で治せるものを増やせば、傷や術後の痛みも少なく、早く日常生活に戻ることができます。そこで私は腹腔鏡手術の腕を磨くために、懸命にトレーニングに励みました。

日々トレーニングを積むうちにわかってきたことは「術式の選択には見極めが大事である」ということでした。

できること、できないことを見極める

医師としての技量が試されるもののひとつが、術式の選択です。たとえ同じ疾患の治療であっても開腹手術、腹腔鏡手術のどちらを選ぶか確実に判断することが大切になってきます。そしてその判断や手術の適応は、医師の手術の実力や技量によって左右されているのが現状です。

良性疾患の腹腔鏡手術は施設や医師の技量によってまちまちで、絶対的な術式の決まりはありません。だからこそ私は、良性疾患において傷の大きさや術後の回復の早さにこだわっています。

腹腔鏡手術のメリットは傷が小さく、術後の回復が早い点などが挙げられます。一方で開腹手術に比べ視野が限られることや体内での操作に限界がある点がデメリットです。そのため、どちらがより患者さんにとって有益な治療かを考え、手術方法を選択することが重要になってくるのです。

当然ですが、同じ疾患でもその状態は患者さんによって多種多様です。そのため、開腹手術と腹腔鏡手術のどちらがより安全で確実なのかということも、患者さんの状態により変わってきます。

すべての症例で無理をしてまで腹腔鏡で手術することに固執してしまうと、取る必要のなかったリスクまで抱えてしまうことになります。手術はあくまで患者さんの体や生活をよくすることを目的としていますから、患者さんを不必要なリスクにさらしてしまうのでは本末転倒です。

つまり、目の前の一人の患者さんの治療を、どのような方法で安全・確実に最後まで成し遂げるのかということは、患者さんに対し責任を取るという覚悟のもと行わなければなりません。

ですから、術式の選択を決して誤らないように、私は患者さんを診た際に腹腔鏡で手術を選択するか、開腹で手術を選択するか、と常に自分に問いかけています。

しかし、技術的に自分ができること、できないことの見極めは難しいものです。できることの閾値(いきち)は医師によって違いますし、外部の人から教えられるものでもありません。やはり最終的な見極めは自分で行うしかなく、その感覚を養うには、手術経験を重ねるしかありません。

私は多くの内視鏡手術を手がけていますが、それでも術前に腹腔鏡手術を選択することに限界があると判断すれば、始めから開腹手術を選択することもあります。

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昭和大学医学部産婦人科学講座 講師

石川 哲也 先生

内視鏡手術を専門としており、年間約400件の腹腔鏡手術を手掛けている。都内でも有数の内視鏡手術件数を誇る昭和大学病院の産婦人科内視鏡グループのトップであり、日常診療のみならず後進の育成や教育に携わっている。

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