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性器脱を自分で治すことはできるの? ~“骨盤底体操”は正しい方法で行うことが重要~

性器脱を自分で治すことはできるの? ~“骨盤底体操”は正しい方法で行うことが重要~
石川 哲也 先生

昭和大学 医学部産婦人科学講座 准教授

石川 哲也 先生

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性器脱(子宮脱、腟脱)は子宮などの位置が下がってくる女性特有の病気で、主に出産や加齢によって骨盤内の靱帯や骨盤底筋が緩むことが原因で起こります。

自覚症状としては下腹部や腟内の違和感がみられ、進行して腟外に脱出すると腟から丸いものが触れたり、脱出部分が下着に擦れて痛みや出血が生じたりするようになります。

患部がデリケートな場所であるために病院への受診をためらう人も多く、病院に行かずに自分で治せるのか気になっている人も多いことでしょう。性器脱は自分で治すことができる病気なのでしょうか。

性器脱が軽度であれば、特別な治療を行わなくても自宅で簡単にできる骨盤庭筋体操で症状の改善や進行を止めることができる場合があります。また、出産直後に一時的に性器脱になることもありますが、この場合にはお腹に力を入れないように注意していれば自然に治ることもあります。

一般的に性器脱のステージ分類にはPOP-Qという分類法が用いられ、下垂の程度に応じてI~IV期の4段階に分類されます。最下垂点が処女膜より1cm奥(つまり膣内にとどまっている場合)はステージI、最下垂点が処女膜を超えてくると下垂の程度(膣外への脱出の程度)によってII~IVに分類されます。骨盤底体操はI期に有効で、II期以上の場合は効果が少ないとされています。中等度以上に対してはペッサリー療法もしくは手術が治療の中心となります。

子宮などの骨盤内にある臓器は靱帯や骨盤底筋などによって支えられているため、重力の影響や腹圧がかかっても下がることはありませんが、出産や加齢に伴って靱帯や骨盤庭筋が緩むと下がってくるようになります。この緩んだ骨盤庭筋を鍛え、子宮などの支持力を強化するのが骨盤底筋体操です。

骨盤底筋体操は寝た状態でも椅子に座った状態でも行うことができ、繰り返し腟や肛門(こうもん)を締めたり緩めたりする運動によって骨盤底筋を鍛えます。毎日行うことで、通常2~3か月程度で効果が現れてきます。

まず仰向けに寝て足を肩幅くらいに開き、両膝を立てます。そして全身の力を抜いた状態で以下のように行います。

  1. 肛門や腟を、胃のほうに吸い上げるような感じでぎゅーっと10秒間締め、30秒間緩めます。これを10回繰り返します。(※肛門や腟を締める際、肩やお腹、足に力が入らないように注意すること)
  2. 次に、1と同じ動作をより速いテンポで行い、10回繰り返します。
  3. 1~2の運動を1セットとし、朝・夜など時間を分けて1日5セット以上行います。

椅子に少し浅めに座って背筋を伸ばし、足を肩幅くらいに開きます。その後の手順は寝て行う場合と同様です。10秒締めて30秒締める動作を10回繰り返し、次により速いテンポで10回繰り返します。

腹圧が上昇すると骨盤底に強い負荷がかかります。

日常生活で腹圧が上昇する状況として、長時間の立ち仕事、力仕事、スポーツ、きつい服やコルセットの着用などが挙げられます。そのほか、肥満や便秘、咳を伴う呼吸器疾患も腹圧を上げる原因となります。そのため、重いものを持ちすぎない、きつい服の着用を控える、減量する、便秘を改善するなどして、なるべく腹圧がかからないようにすることも大切です。

性器脱の治療には骨盤底筋体操のほかにも、リングペッサリー(柔らかい素材のリングを腟内に留置し脱出を抑えるもの)や性器脱用のクッション付き下着の装着、手術などがあります。

矯正器具を用いた治療はあくまで対症的なもので、性器脱を根本的に治すには手術が必要となります。

骨盤底筋体操は性器脱が軽度の場合に効果が期待できます。継続的に行う必要がありますが、自宅などで簡単に実践でき体操自体に副作用がないため、一度試してみるのもよいでしょう。

ただし、間違った方法で行うと効果が出ないばかりか悪化してしまう場合もあります。また、性器脱が中等度以上では効果が期待できません。診断を受けていない人はまず病院を受診し、診断を受けたうえで適切に治療を行うようにしましょう。

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