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子宮脱とは――女性なら誰にでも起こる可能性がある病気

子宮脱とは――女性なら誰にでも起こる可能性がある病気
川村 尚子 先生

JAとりで総合医療センター 泌尿器科 部長

川村 尚子 先生

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女性の中には、「腟から何か下がってくる感覚がある」「陰部から何か出てきた」「トイレが近くなる」といった症状でお悩みの方がいらっしゃるのではないでしょうか。これらの症状は“子宮脱”という病気によるものの可能性があります。子宮脱とは、子宮が本来の位置から下がってきて腟から体外に出てくる病気です。症状が進行すると、股間に違和感が生じて歩きにくくなるなど日常生活に支障をきたす可能性もあるため、早めの受診が望まれます。今回は、JAとりで総合医療センター 泌尿器科 部長の川村 尚子(かわむら なおこ)先生に子宮脱の原因やチェックすべき症状、検査の内容についてお話を伺いました。

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イラスト:PIXTA

子宮脱とは、本来あるはずの場所から子宮が少しずつ下に降りてきて、最終的には腟から体の外に出てくる状態です。

骨盤内の臓器が本来の位置よりも下がってくる状態を総称して骨盤臓器脱と呼び、子宮は骨盤臓器脱の一種です。骨盤臓器脱には、子宮脱のほかに膀胱瘤(膀胱脱)、直腸瘤があります。いずれも、臓器が本来あるべき位置から下がってきて、腟を通して体の外に出てきている状態です。直腸が腟から出てくる“直腸瘤”は、医学的には肛門から出てくる“直腸脱”と分かれていますが、混同されることも多くあります。

臓器は直接出てくるのではなく“腟の皮を被った”ような状態で出てくるため、外から見えているのは腟の部分です。よって見た目はほとんど同じですが、体の外に出てきた臓器によって子宮脱や膀胱瘤と呼び分けています。頻度としては膀胱瘤がもっとも多いですが、同時に複数の骨盤臓器脱が起こることも珍しくありません。

子宮脱が起こる原因は主に加齢と出産で、女性の約10%が経験するといわれています。閉経を迎える頃から増えてきて60歳代が発症のピークとなり、それ以上の年齢になると自然分娩の回数が多いほど発症リスクは高くなります。

そのほかに、人種や遺伝的要素も関係するといわれており、黒人は発症頻度が少なく、ヒスパニックは他人種に比べて子宮脱の、アジア系は膀胱瘤の発症リスクが高いといったデータがあります。また、便秘や喘息、重いものを持ち上げる動作をする機会が多い、など腹圧がかかりやすい方も発症リスクは高くなります。女性ホルモンの減少が関係するという説もありますが、詳細は分かっていません。

子宮脱が起こる直接的な原因は、骨盤底筋などの骨盤臓器を支えている筋肉が弱くなり、子宮を支えている靱帯(じんたい)や筋膜が緩んでしまうことです。この緩みは加齢や分娩によって起こるといわれています。

特に分娩時には、赤ちゃんが骨盤内を通る際、骨盤底を損傷するために子宮脱の発症リスクが上がると考えられます。日本人だけのデータではありませんが、出産を経験していない方に比べて、2回経腟分娩を経験した方は発症リスクが約8倍になるといった報告もあります。

一度緩んだ靱帯は、緩みの進行を遅らせることはできても元の状態に戻ることはありません。また、子宮や大腸の手術などで靱帯が傷ついている場合、別の臓器脱が起こる可能性もあります。たとえば、子宮を摘出しているとしても膀胱瘤や直腸瘤になることがあります。

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「腟から何かが下がってきているような感覚がある」「脚の間に何かが挟まっているような感覚がある」という場合は、子宮脱を起こしている可能性があります。お風呂に入っている時に「股間からピンク色の丸いピンポン玉のようなものが見えた」と言う患者さんもいらっしゃいます。

もし子宮脱に気が付いたら、一時的な処置として出てきているものを自分の手で押し戻して問題ありません。出てきているのは腟で、ばい菌には強い臓器ですので手で触っても大丈夫です。初期は痛みなどの症状もありません。

子宮脱が進行すると、子宮が腟から飛び出たままの状態になり、戻らなくなってしまいます。そうすると歩きにくくなるなど日常生活にも支障が出てきます。また、出てきた子宮が下着に擦れて痛みが生じたり、出血したりする場合もあります。

最初は目立った症状もないため、恥ずかしがったり我慢したりして受診しない方もいらっしゃいます。しかし、進行すると日常生活に影響を及ぼすため、症状が軽いうちから受診して医師に相談することが大切です。子宮脱は年齢を重ねて筋肉が緩んで起こる現象で、誰にでも起こる可能性があります。また、受診したからといってすぐに入院や大変な治療をするわけではないため「腟から何か出てきた」と思った段階で気軽に受診していただきたいと思います。

受診する診療科は、可能であれば当院の女性泌尿器科外来のように骨盤臓器脱を専門とする科が望ましいです。通院できる範囲にないようであれば泌尿器科か産婦人科のどちらかを受診してください。

受診の際は、患者さんの状態に応じた検査を行います。まずは内診で飛び出ているものを確認して、重症度や進行度合いを確認します。それに加えて、落ちてきた子宮が腎臓を圧迫して腎機能障害を起こしていないか確認するための尿検査や超音波検査、後日手術する可能性がある方は婦人科がんの有無を確認する検査などを行う場合もあります。

先述のとおり当院は、子宮脱などの泌尿器科疾患でお悩みの女性患者さんに向けた女性泌尿器科外来を2017年5月に開設しました。主に木曜午後を診療時間とし、女性医師、女性看護師など女性スタッフが対応いたします(2023年8月現在)。

骨盤臓器脱以外にも、トイレが近い、排尿しにくい、頻尿、尿漏れが起こるといったお悩みの方も診察しています。これらの症状は、腹圧性尿失禁切迫性尿失禁過活動膀胱、排尿困難、間質性膀胱炎といった病気の可能性があり、子宮脱に関係しているものもあります。

女性泌尿器科外来では、こうした泌尿器科疾患の診療を行っております。気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。

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