かんしつせいぼうこうえん

間質性膀胱炎

最終更新日
2023年05月24日
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2023/05/24
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

間質性膀胱炎(かんしつせいぼうこうえん)とは、頻尿や尿意切迫感を感じたり、膀胱に尿がたまると痛みを感じたりする病気です。一般的に40~70歳代の女性に多い傾向があり、2019年に発行された『間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドライン』によると、日本で治療中の患者数は4,500人程度であるといわれています。

間質性膀胱炎は細菌感染による病気ではなく、原因が明らかになっていない膀胱炎です。間質性膀胱炎の症状と類似した症状が現れる病気が複数あることから、診断および治療が難しく、難治性の病気といわれています。

原因

間質性膀胱炎は、大きく分けてハンナ型間質性膀胱炎と非ハンナ型間質性膀胱炎に分けられますが、そのどちらにおいてもはっきりとした原因は不明です。

ただし、ハンナ型間質性膀胱炎においては、膀胱の粘膜を覆う細胞や免疫系の異常が関係している可能性が疑われています。

症状

間質性膀胱炎の主な症状は、頻尿や尿意切迫感、膀胱に尿がたまった際に感じる痛みです。

そのほか、骨盤部の痛みや圧迫感または不快感、尿意亢進(にょういこうしん)などの症状が現れることもあります。

また、痛みや不快感は排尿することで軽くなったり、なくなったりすることがあります。一方で、症状はよくなったり悪くなったりを繰り返す傾向があり、生活環境やストレスなどによる影響を受けやすいといわれています。

香辛料などの刺激物やカリウムを多く含む果物などの摂取、排尿の我慢などによって症状が悪化することもあります。

検査・診断

間質性膀胱炎には、急性膀胱炎過活動膀胱など類似した症状を示す病気が複数あります。

そうした病気と鑑別するためにも、排尿日誌や尿検査、膀胱鏡検査、膀胱生検などの検査が行われます。

間質性膀胱炎の症状があること、膀胱鏡検査で膀胱内にハンナ病変が確認できることに加えて、ほかの病気との鑑別ができる場合にはハンナ型間質性膀胱炎と診断がされます。一方で、ハンナ病変が確認できず膀胱水圧拡張術後に点状出血を有する場合には、非ハンナ型間質性膀胱炎と診断されます。

排尿日誌

排尿日誌とは、1日の排尿回数や飲水量、1回の尿量、尿失禁や痛みの有無を記録するためのものです。1日を通してそれらの情報を記録し客観的に確認することを目的としています。

尿検査

間質性膀胱炎は細菌感染による病気ではないため、尿検査における尿培養では細菌は検出されないことが多いです。また、軽度の尿を示すことがあります。

膀胱鏡検査

尿道から膀胱鏡を入れて、生理食塩水を注入し、膀胱内や尿道、前立腺などを観察する検査です。

膀胱を拡張した際に点状出血や五月雨状出血がみられることに加えて、ハンナ病変が確認される場合には間質性膀胱炎と診断されます。

膀胱生検

病理診断のための検査です。ふつう全身麻酔下に手術室で行われ、膀胱がんなどほかの病気と鑑別することが可能です。

治療

間質性膀胱炎に対して行われる治療は、麻酔下で行われる膀胱水圧拡張術や経尿道的ハンナ病変凝固術などの手術療法、薬物療法、保存的治療などです。ただし、間質性膀胱炎における根本的な治療方法は現時点ではありません。

手術療法

間質性膀胱炎の手術療法としては、麻酔下膀胱水圧拡張術や経尿道的ハンナ病変凝固術などが行われます。

麻酔下膀胱水圧拡張術は、生理食塩水で膀胱を押し広げる治療法です。膀胱に生理食塩水を入れて拡張させることにより、膀胱を広げ、膀胱に尿がたまったときの痛みや頻尿などの症状を緩和させることを目的としています。ただし、治療して1~2週間程度は症状が軽減されなかったり、人によっては一時的に悪化したりすることがあります。一般的には時間の経過とともに改善する傾向があり、治療による血尿も数日で治まるといわれています。

経尿道的ハンナ病変凝固術は、レーザーおよび電気を用いてハンナ病変を焼灼凝固したり切除したりする治療法です。ハンナ型間質性膀胱炎の場合に選択される治療法で、麻酔下膀胱水圧拡張術と合わせて行われます。経尿道的ハンナ病変凝固術についても、麻酔下膀胱水圧拡張術と同様に膀胱に尿がたまったときの痛みや頻尿などの症状を緩和させることを目的としています。

薬物療法

間質性膀胱炎に対する薬物療法としては、服薬治療と膀胱へ直接薬剤を入れる薬物注入療法などがあります。

服薬治療では、症状に併せて抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、鎮痛薬、抗菌薬、漢方薬などの処方が検討されます。ただし、これらの薬剤については間質性膀胱炎に対する治療薬として認められているものではないため、あくまで対症療法として用いられる治療法です。

薬物注入療法は、ジメチルスルホキシド(DMSO)やヘパリン、ステロイドなどが用いられます。膀胱に直接薬剤を注入することで、膀胱粘膜を修復したり、炎症を軽減したりする効果が期待できます。ジメチルスルホキシド(DMSO)については、2021年4月に保険適用が認められています。

生活指導

間質性膀胱炎は、生活環境やストレスなどによる影響、香辛料などの刺激物、カリウムを多く含む果物などの摂取、排尿の我慢などに影響を受けやすいといわれています。それらの原因を避けることに加え、食事療法が重要となります。

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間質性膀胱炎を得意な領域としている医師

  • 日本大学医学部 泌尿器科学系 泌尿器科学分野 主任教授、日本大学医学部附属板橋病院 病院長

    • 過活動膀胱
      • 薬物療法
      • 手術
    • 前立腺肥大症
      • 薬物療法
    • 前立腺がん
      • 手術
      • 薬物療法
      • 密封小線源治療
    • 間質性膀胱炎
      • 薬物療法
  • 東京女子医科大学附属足立医療センター 骨盤底機能再建診療部 教授/診療部長/泌尿器科 教授

    • 骨盤臓器脱
      • 経腟メッシュ手術(TVM手術)・ロボット支援下仙骨腟固定術などを骨盤臓器脱の部位・重症度・患者背景によって、症例にあった術式を決める。

      骨盤臓器脱には、膀胱瘤、子宮脱、直腸瘤、膣断端脱などがある。

    • 腹圧性尿失禁
      • 骨盤底筋訓練・薬物療法に加え、中部尿道スリング手術であるTVT手術やTOT手術でスポーツができるようになることを目指す。
    • 過活動膀胱
      • 抗コリン薬やβ₃作動薬による薬物療法を行う。内服薬で効果不十分や副作用で継続できない難治性過活動膀胱には、ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法を外来にて行う。
    • 間質性膀胱炎
      • 原因不明の頻尿・膀胱痛を排尿日誌や膀胱鏡で診断をつけ、経尿道的に膀胱水圧拡張術やハンナ病変を焼灼するハンナ型間質性膀胱炎手術を行う。食事療法やDMSO膀胱内注入療法も併用する。