概要
過活動膀胱とは、突然トイレに行きたくなり我慢するのが難しい、日中や夜中に何度もトイレに行く、トイレまで我慢できずに漏らしてしまうなど、排尿(おしっこ)に関わる症状が現れる病気です。
40歳以上の女性の約8人に1人が過活動膀胱であることが分かっています。「トイレが心配で旅行に行けない」「漏らしてしまうので長時間の外出ができない」などと考えてしまいがちであるため、生活の質を損ねてしまうことがあり、自宅に引きこもりがちになってしまうといった恐れもあります。
原因
膀胱に尿がたまり膀胱の容積と圧力が増加すると、膀胱の知覚神経が感知し、その情報が脊髄を通って大脳へ伝わります。このとき、排尿できる状況であれば、大脳で意識的に尿の出口を調節する筋肉(尿道括約筋)を緩め、同時に自律神経系が無意識的の中で膀胱の筋肉を収縮させることによって、排尿が起こります。つまり、排尿はたくさんの神経や筋肉が連動することで初めて正常に行われるのです。これらのどこかで異常が生じると、過活動膀胱などの排尿のトラブルが起きます。
過活動膀胱の原因は、神経系の異常で起こる神経因性過活動膀胱と神経系の異常とは関係なく起こる非神経因性過活動膀胱の2つに分けられます。
神経因性過活動膀胱
脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの神経変性疾患や外傷などにより、脳と膀胱の筋肉を結ぶ神経の回路に障害が生じて起こります。
非神経因性過活動膀胱
男性の膀胱の下流にある前立腺という臓器が腫大して尿道を圧迫したり膀胱を刺激したりして排尿をじゃまする病気(前立腺肥大症)や、女性の出産や加齢によって子宮、膀胱、尿道などを支えている骨盤底筋と呼ばれる筋肉が弱くなった場合などに起こります。
症状
過活動膀胱の症状には、排尿に関わるさまざまなものがあります。たとえば、以下のような症状が一般的ですが、中でも尿意切迫感は必須の症状です。
検査・診断
検査では、過活動膀胱の症状をチェックするために過活動膀胱症状質問票(OABSS)というチェックシートの記入を行います。これにより過活動膀胱が疑われる場合には、尿検査や膀胱の超音波検査による残尿測定をはじめ、原因を特定するためにCTやMRIなどの画像検査、または(PSA検査を含む)前立腺の診察や神経診察などを行い、治療すべき原因を調べます。
治療
過活動膀胱の薬物療法では抗コリン薬、β3作動薬などの薬を使用します。いずれも膀胱の筋肉が過剰に収縮するのを抑えるはたらきや、膀胱の下流である尿道を広げやすくするはたらきをもっています。
男性で前立腺肥大症が原因と思われる過活動膀胱に対してはα1遮断薬などが用いられます。
上記の薬物療法と併せて生活指導(ダイエット、水分やカフェインを取りすぎない、早めにトイレに行くなど)、膀胱訓練(トイレを少し我慢する)、骨盤底筋訓練(排尿に関わる筋肉を鍛える体操)、低周波電気刺激装置による骨盤庭筋を刺激する治療も行われます。
これらの治療を行っても症状の改善がみられない場合には、ボツリヌス療法や仙骨刺激療法といった手術が必要となることもあります。
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予防
過活動膀胱を引き起こす神経系の病気にかからないことも大切です。たとえば、脳梗塞は高血圧・高脂血症・糖尿病などを抱えていると生じやすいため、これらの生活習慣病にかからないよう、脂質・塩分を控えた食生活を送ることなどを心がけましょう。気になる症状がある場合、早めに病院の受診を検討することも肝要です。
また、ストレスが原因で頻尿となることもあるため、日頃からストレスをためすぎないようにしましょう。
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