しきゅうだつ

子宮脱

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概要

子宮脱(性器脱)とは、子宮が本来の位置から垂れ下がり、外陰部から外へ飛び出す病気です。

通常、子宮は骨盤の底にある骨盤底筋や靱帯(じんたい)に支えられ、正しい位置に収まっています。しかし、出産や加齢などによって骨盤底筋や靱帯が弱くなると子宮を支えられなくなり、子宮は徐々に垂れ下がってきます。これを子宮下垂といいます。子宮下垂が進行すると、腟から子宮が飛び出す(子宮脱)ため、違和感や異物感をはじめとした症状が現れます。

なお、子宮脱のように、膀胱や直腸など骨盤の内部に収まった臓器が外へ出る病気を総称して“骨盤臓器脱”といいます。発症する際は1つの臓器だけでなく、膀胱や直腸など、複数の臓器が飛び出ているケースも多く見られます。

                   イラスト:PIXTA

子宮脱は女性のおよそ10%に起こる病気です。患者の95%が出産経験者で、好発年齢は60歳代といわれています。

外陰部:皮膚の表面が変化して生じた生殖器。恥丘(ちきゅう)大陰唇(だいいんしん)、小陰唇、陰核などからなり、体外の刺激から生殖器を守っている。

原因

子宮脱は、妊娠や出産、加齢などによって臓器を支える骨盤底筋が弱まり、臓器を支えきれなくなることで生じます。

妊娠中は子宮が重くなることにより、骨盤底筋の負担が増えます。また、出産時には、胎児が骨盤内を通過する際に骨盤底筋を損傷しやすいうえに、いきむ際の腹腔内圧(ふくくうないあつ)(腹圧)*によって骨盤底筋の負担が非常に大きくなるため、骨盤底筋が障害されやすいことが分かっています。そのため、特に出産経験のある方は、加齢によってさらに骨盤底筋が弱まり、閉経頃に子宮脱が生じやすくなるといわれています。

また、腹圧のかかりやすい習慣も子宮脱の原因となります。たとえば、慢性的な咳や便秘の症状がある方、介護を行っている方、重い荷物を持つことの多い方、肥満の方などは腹圧がかかりやすいため注意が必要です。

*腹腔:胃や腸などの臓器が収まっている空間を指す。腹筋や横隔膜などが収縮することで腹腔内部にかかる腹腔内圧(腹圧)という圧力が高くなる。

症状

子宮脱は症状の程度に応じて、以下の4段階のステージに分かれます。

  • ステージI……子宮のもっとも垂れ下がっている部位が腟の入り口(処女膜輪)より1cm以上、上方にある
  • ステージII……子宮のもっとも垂れ下がっている部位が腟の入り口の上下1cmの間にある
  • ステージIII……子宮のもっとも垂れ下がっている部位が腟の入り口より1cm以上、下方にある
  • ステージIV……子宮が完全に脱出している

ステージIの段階では“子宮下垂”の状態であり、症状はほとんどありません。

ステージIIとステージIIIの段階は、“部分子宮脱”と呼ばれます。力を入れたときやしゃがんだときなどに外陰部から何かが下りてくるような感覚があります。

ステージIVでは、さらに下垂が進み、子宮全体が外陰部から飛び出す“完全子宮脱”に至ります。腟のところにものが挟まった感覚があるほか、飛び出した部分が下着などにこすれるため、出血などが生じることもあります。

横になって体を休めている間、子宮は体内に収まるため、このような症状は起床して間もなくはあまり生じません。長時間立ったままでいたり、ある程度活動したりした後に現れる傾向にあります。

検査・診断

診断では、まず問診で症状や妊娠・出産歴、現在服用している治療薬、過去の病気、生活習慣などについて詳しく質問されます。

続いて、わざと咳をしたり力んだりして、子宮が下垂する程度を確認します。また腟から腟鏡を挿入して内部を観察することで、子宮がどれくらい垂れ下がっているのかを調べます。

そのほか、超音波検査やMRIなどの画像検査を用いて子宮やほかの臓器の下垂の程度を確認することもあります。

治療

子宮脱の治療方法には、保存的治療と手術治療があります。

保存的治療は、ステージIやIIなど症状が軽い場合に行われ、手術治療は主にステージIII以上で検討されます。

保存的治療

具体的には、骨盤底筋を鍛える体操やトレーニング、子宮下垂を防ぐサポート下着の着用、腟内ペッサリーの挿入などを行います。

症状が軽い場合は、体操やトレーニングで骨盤底筋を鍛えることで、子宮下垂の改善を図ります。

サポート下着は、腟の入り口にクッションがついています。子宮が腟内に収まっている状態で装着し、さらにベルトで支えることで子宮が落ちてくるのを防ぐ効果があります。

腟内ペッサリーは、一般的にシリコン樹脂でできたリング状の器具で、腟内に挿入することで子宮が落ちてくるのを防ぎます。挿入時の痛みはほとんどありませんが、リングが腟壁に当たると炎症や感染症、または出血を生じる可能性があるほか、症状の進行に合わせてリングのサイズを変える必要があるため、定期的な管理が必要です。

腟内ペッサリーは本人が手術を希望しない場合や、何らかの理由で手術が難しい場合に検討されます。

手術治療

子宮脱の手術治療には大きく分けて3種類あり、患者の年齢や病気の状態などに合わせて選択されます。

腟式子宮全摘術と腟壁形成術の併用

子宮を腟から摘出して緩んだ腟壁を形成し直す、“腟式子宮全摘術”と“腟壁形成術”を併用する手術です。従来から婦人科で多く行われた手術手法であり、開腹せずに腟から子宮を摘出し、腟壁を縫い縮めることで臓器をサポートします。一方、元々緩んだ腟壁を縫い縮めるだけの術式であるため、腟壁が再び緩んで再発することがあります。

経腟メッシュ手術

腟壁と骨盤内臓器の間にメッシュを挿入し、骨盤内臓器をサポートする“経腟メッシュ手術”と呼ばれる手術が検討されることもあります。従来の手術方法と比べて再発率は低いものの、腟内にただれや感染症、疼痛(とうつう)などが生じる可能性があるので、この手術に習熟した医師が行う必要があります。

仙骨腟固定術

メッシュを使って子宮頸部(しきゅうけいぶ)を仙骨前面の靱帯に固定する“仙骨腟固定術”と呼ばれる手術が行われることもあります。仙骨腟固定術では、子宮の上部を切断した後に、前後の腟壁にメッシュを縫い付けて仙骨前面の靱帯に固定します。再発率が低く、手術後の社会復帰が早いなどのメリットがありますが、手術手技が煩雑で、手術時間が長くなる傾向があります。また、臓器を引き上げすぎると腹圧性尿失禁が生じることもあります。近年では通常の腹腔鏡のほかに、ロボット支援手術としても仙骨腟固定術が行われています。

治験

子宮脱に関連する治験の情報をご覧いただけます。

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予防

子宮脱の予防には、骨盤底筋を鍛えるトレーニングを行うことと、腹圧を必要以上にかけないことが大切です。

骨盤底筋を鍛えるためには、腟や肛門(こうもん)を締める運動が効果的であるといわれています。また、肥満や便秘により腹圧がかかりやすくなるため、体重をコントロールし、健康な排便習慣を心がけましょう。

最終更新日:
2025年09月02日
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2025/09/02
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

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