骨盤臓器脱は中高年以上の女性に多い病気で、子宮や膀胱といった骨盤内臓器と呼ばれるものが腟から体外に脱出してしまうものです。股の間に何かが挟まったような、不快な自覚症状が現れます。
骨盤臓器脱の主な原因は“骨盤底筋群”と呼ばれる筋肉や靱帯の緩みです。骨盤底筋群は通常どのような役割を担っており、どのようにして骨盤臓器脱が引き起こされるのでしょうか。
骨盤臓器脱は、女性の骨盤内臓器と呼ばれる臓器が元ある位置からだんだんと下がり、腟から体外に脱出してしまう病気の総称です。骨盤内臓器は子宮、膀胱、直腸、小腸などを指し、脱出する部位よって子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、小腸瘤などと呼び名が変わります。
自覚症状は股の間に何かが挟まったような違和感から始まり、脱出度合いが大きくなると脱出した腟壁が下着と擦れて出血したり、下垂により臓器が圧迫されることで尿や便が出にくくなったりします。
女性特有の病気であり、特に中高年以上の女性に多くみられることが知られています。比較的頻度の高い病気で、アメリカの研究では出産経験のある女性の約半数は骨盤臓器脱の何らかの症状を自覚しているともいわれています。しかし、症状の特徴から受診を躊躇してしまう女性が多く一般的な認知度もあまり高くないことから、なかなか診断には至らずに悩んでしまう女性が多いといわれています。
骨盤臓器脱のもっとも大きな原因は、骨盤底筋群と呼ばれる筋肉や靱帯の緩みです。骨盤底筋群は骨盤内臓器を支えるハンモックのような役割を担っていますが、この機能が弱くなってしまうことで骨盤内臓器が支えきれなくなり、位置が下がってきてしまいます。
骨盤底筋群が緩むもっとも大きな要因は妊娠・経腟分娩であり、骨盤底筋群のハンモック機能を損傷させることが知られています。しかし、出産を経験してすぐに骨盤臓器脱を発症するとは限らず、若い頃の損傷に加え女性ホルモンの減少や加齢による筋力の低下などが加わります。
また、骨盤内には骨盤底のほかにもさまざまな筋肉や靱帯があり、これらの力が複合的に弱くなることで中高年以上になって症状が現れることが多いと考えられています。
先ほど述べた骨盤臓器脱の原因から、骨盤臓器脱になりやすい人の特徴には以下のようなものがあります。
妊娠中は子宮が大きくなり、胎児の重みも加わるため骨盤底筋群が引き伸ばされやすくなります。また、経腟分娩は骨盤底筋群に大きくダメージを与えます。
加齢によって骨盤底筋群や骨盤内のさまざまな筋肉が弱くなることで、骨盤臓器脱のリスクが高くなります。また、女性ホルモンが低下することで腟の組織が弱くなることも知られています。
骨盤底筋群の力が弱まっているときにお腹に力(腹圧)がかかると、骨盤内臓器が体外に脱出しやすくなります。肥満体型の人は標準体型の人に比べて腹圧がかかりやすく、骨盤臓器脱になりやすいといわれています。
便秘しがちでトイレでいきむことが多い人や、喘息で咳を繰り返す人も腹圧がかかりやすい状態にあり、骨盤臓器脱になりやすいといわれています。
重い荷物を持つ動作も腹圧がかかりやすく、仕事などで頻繁に重い荷物を持つ人は骨盤臓器脱になりやすいといわれています。
骨盤臓器脱は骨盤底筋群の損傷や緩みによって起こる病気です。
決してめずらしい病気ではなく、特に出産経験がある場合はほとんどの女性に起こりうる病気であるため、股の間の違和感など何らかの症状がある場合には骨盤臓器脱の症状である可能性も考え、必要に応じて医療機関の受診を検討するようにしましょう。
昭和大学江東豊洲病院 産婦人科 准教授
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