2025年03月19日
2025年03月19日
更新履歴従業員の健康は、企業の持続的な成長に不可欠な要素です。近年、「健康経営」という概念が注目を集めています。数多くの企業が従業員の健康増進を重要な経営課題と捉え、その実現に向けて積極的に取り組みを進めています。
健康経営という言葉が一般的になる前の2003年から、浜松市の本社敷地内に自前の定期健康診断施設「ヤマハ健康管理センター」を設置するヤマハ株式会社。従業員の誕生日付近に定期健康診断を行うことを「誕生月健診」と名づけ、社内で受診できる運営と健診センターと連携して受診した当日にすぐ健康診断結果が届く体制を整えています。また受診者全体に対して当日の午前中に健康診断結果に基づいた医師の診察、保健指導、集団健康指導もおこなっています。日々働く従業員の健康意識を高めることに成功した取り組みについて伺ってきました。
インタビューに応じてくださった方:
人事部 健康安全グループ リーダー グローバルHRグループ主幹(兼務) プラダナ ムハマッド ナスルルさん
人事部 健康安全グループ 主幹 桑原正之さん
人事部 健康安全グループ健康管理センター センター長 統括産業医 水田潔さん
――健康経営にはいつから取り組まれていますか?
健康経営という言葉が生まれる以前の2000年ごろから、ヤマハは従業員の健康を考え、新しい形式の定期健康診断と喫煙者対策が重要であると考えていました。ちょうどそのころに社内診療所の老朽化による建て替えの時期が重なり、診察室、指導室、会議室などを組み込んだ新しい健康管理センターを本社敷地内に設けました。
その施設で、従業員の誕生日付近で健康診断の受診をしてもらう「誕生月健診」を実施しています。「誕生月健診」の最大の利点は、健診日の当日の午前中に結果についての説明を受けられることだと考えています。結果のよい部分、悪い部分などについて医師・保健師から説明してもらい、改善に向けたアドバイスを受けることで何よりも効果的に健康への意識づけができると考えています。
――健康診断の受診以外で実施している取り組みはありますか
「誕生月健診」のもう1つの特長は受診者全員(年間約5000人)に対して「健康講話」と称する集団健康指導を行うことです。採血などの結果判定を行う待ち時間を使って実施しており、テーマは医療職が毎年現状に合わせて考え、資料を作成しています。今年度は、テレワークなどの増加による運動不足を背景として「筋肉を効果的に増やそう」というテーマにしています。これまでの20年間で、喫煙対策・高血圧症・糖尿病などの病気だけでなく、AED導入時期には心肺蘇生法などの実習も行うなど、のべ32個のテーマで実施してきました。新型コロナウイルス感染症拡大の期間はやむなく中止していましたが、一部の社員からは「いつから再開するのですか?」という問い合わせがあったくらい社内では浸透している活動です。
――健康経営の浸透はどのようにされてきたのでしょうか
健康経営という概念が一般的になってきた2010年台後半での大きな出来事として、2018年に「ヤマハグループ健康宣言 “Sound Minds+Sound Bodies=Sound Living”」を策定しました。
音に関わる会社ですので“Sound” の文字を取り入れました。意味としては「健康・健全・安心」となります。また、グローバル企業として世界中の社員がそれぞれのイメージで自身の“Sound Living”をイメージしてもらえるように数式の形で策定し、3つのギアを用いたイメージ図も作成しています。「誕生月健診」に代表されるように従業員の健康に対する意識は高いものと考えていましたが、さらにそれらを高めるきっかけになったと考えています。
――再構築した取り組みは何かありますか
健康への取り組みの初期から喫煙者対策を行ってきました。長年の活動として喫煙者個人への働きかけに加え、2022年からは国内ヤマハグループ敷地内で全面禁煙を開始するなどの対策が行われ、ヤマハ単独では、喫煙者率が10%を下回るところまで低下しています(2024年度9.98%)。
ここまで低下してしまうと大きな対象群とはならないことから、新しい取り組みを考える必要が出てきました。再構築とまではいきませんが、よい点を伸ばすということで、「誕生月健診」の位置づけを強化すべく「定期健康診断受診はゴールではなくスタートです」というスローガンを新しく設けて、各種会議などで浸透を図っています。「誕生月健診」の保健指導を案内する基準の見直しも開始しています。長年使用してきた基準は、病気の早期発見、予防を考えると「甘い基準値」となっているものもありますので、より適切な基準に改善するための検討が進められています。
――全社的な取り組みとして強化していることは何ですか
健康経営という概念が一般的になる前から従業員の健康管理について取り組みを行い、良好な状態を維持している状況ですが、健康経営視点で求められている健康の概念(プレゼンティーイズム、アブセンティーイズムなど)への取り組みは不十分だと考えています。これらへ取り組むことでさらなる社員一人ひとりの“Sound Living”の向上に結びつくと考えています。
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