肩甲骨が痛い:医師が考える原因と対処法|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
筑波大学 医学医療系整形外科 准教授
國府田 正雄 先生【監修】
肩甲骨の痛みは肩こりなどが原因と思われがちですが、病気が原因となって起こっていることもあるため注意が必要です。
このような症状がみられる場合、考えられる原因にはどのようなことがあるでしょうか。
肩甲骨は骨や関節の病気や、場合によっては体の病気によって引き起こされることがあります。
肩甲骨を痛くする骨や関節の病気としては次のようなものがあります。
首から出た神経は腕神経叢という神経の束となり腕へと続いていきます。腕へつながる神経が通るスペースには太い血管、筋肉、骨が密集しているため、体格や生まれつきの構造によっては神経が刺激されてしまい、首・肩・腕の痛みやしびれが起こります。この状態を胸郭出口症候群といいます。胸郭出口症候群には鎖骨のあたりが狭くなって神経・血管が圧迫されて起こるタイプと、なで肩体型のために腕に行く神経が下の方に引っ張られて起こるタイプがあります。
つり革をつかむ・洗濯ものを干すといった、腕をあげる動作の際に痛みが悪化することもあります。
首の骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板が、あるべき位置からずれて飛び出してしまう病気です。飛び出した椎間板が神経を圧迫すると、肩甲骨や首の後、肩、腕などに痛みやしびれなどの症状が現れます。20~30代の若年層に多いといわれています。
頚椎の後ろにある靭帯(後縦靭帯)が骨化する病気です。神経が圧迫されることで肩甲骨の痛みの他、手足のしびれ、細かい動きができないなどの症状が現れます。少しずつ症状が進行していくことが特徴です。
時には内臓の病気が原因で肩甲骨の痛みが現れることもあります。特に注意が必要な病気には以下のようなものがあります。
心臓に必要な栄養や酸素を供給する冠動脈が狭くなる・つまることで起こる狭心症や心筋梗塞や、大動脈という太い血管の壁が裂ける大動脈解離でも肩甲骨や背中が痛むことがあります。いずれの場合にも突然の激しい痛みで、冷や汗や呼吸困難を伴うほど強い症状であることが多いといわれていますが、高齢者などでは自覚症状が薄い場合もあるため注意が必要です。当てはまるような症状が万が一見られた場合には速やかに受診しましょう。
胆石や胆のう炎、膵炎などの内臓の炎症を起こす病気でも肩甲骨の痛みを感じることがあります。
いずれも、突然もしくは繰り返すみぞおちや脇腹の強い痛みが特徴です。痛みが突然で、しかも激しい場合には速やかに受診しましょう。
肩甲骨が痛む状態が長く続く、もしくは繰り返しているようなときには一度整形外科を受診しましょう。また、突然の激しい痛みの場合には体の病気の可能性を考え早期に内科などを受診することが大切です。医師にはいつから肩甲骨が痛いのか、他の症状はいつからどんなものがあるのか、できるだけ詳しく伝えることがポイントです。
日常生活上の習慣などが原因で肩甲骨が痛い場合もあります。
PCやスマホを使っているときは、どうしてもうつむいた姿勢になりがちです。このため首の後ろから肩にかけての筋肉がこわばり、ときには肩甲骨の痛みを感じる場合もあるといわれています。
適宜休憩をはさむなど、同じ姿勢が長時間に渡って続かないようにしましょう。休憩時間にはストレッチなどをして、できるだけ体を動かすようにすることが好ましいです。
筋肉は血流を促すポンプのような役割を担っています。運動不足によって起こる筋力の低下や、動かさないことによる筋肉の緊張は痛みの原因となることがあります。
毎日の生活の中で、継続的に行える運動を取り入れるようにしましょう。全身を使うストレッチなど、首や肩・背中の筋肉をよく動かすことがポイントです。
過度のストレスや緊張は筋肉の緊張を招き、長く続くことで痛みにつながることがあります。
上手な気分転換やストレス解消方法を見つけましょう。スポーツや趣味など楽しめることを持つことはもちろん、自分がストレスや緊張を感じやすいシチュエーションを把握し対策を立てておくなども大切です。
日常生活の中で行える対処法を試しても痛みがよくならない場合には、思いもよらない原因や病気が隠れていることも考えられます。一度病院で相談してみましょう。