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PSMA-PET検査とは、前立腺がんの9割以上で発現するといわれるタンパク質のPSMA(前立腺特異的膜抗原)を認識することで、前立腺がんを高い精度で診断可能な画像検査です。この検査は、前立腺がんの検査方法として、国内では2019年に初めて導入されました。
検査の仕組みとしては、前立腺がん細胞の表面に存在するPSMAを標的とする放射性医薬品を静脈注射し、その薬が体内に分布した様子をPET検査*で確認します。放射性医薬品が前立腺がんに集まることから、小さながんでも高精度に検出することが可能です。
従来のMRI検査や骨シンチグラフィー検査、18F-FDGとよばれる医薬品を用いたPET検査などでは再発部位や遠隔転移の特定が難しいケースもありましたが、PSMA-PET検査ではより正確な診断が可能となりました。再発の早期発見、病期(ステージ)の判定、治療効果の判定により、個々の患者に合った適切な治療計画を立てることができます。
現在のところPSMA-PET検査は公的医療保険の適用はなく自費診療になります。実施できる医療施設は限られており、特定の基準を満たした施設でのみ行われます。
*PET検査:放射性医薬品を使って体内の代謝の様子を画像化する検査。がんの有無や広がりの確認に役立つ。
PSMA-PET検査は、前立腺がんの再発や転移が考えられる場合に実施される検査です。
前立腺がんの診断がついた際に、現在はCTや骨シンチグラフィーによって転移の有無を調べます。しかし、PSMA-PET検査は感度が高いためより正確な転移の診断ができ、適切な治療選択に役立つと考えられます。さらに治療により低下していたPSA(前立腺特異抗原)*が上昇傾向を示す場合には、再発や転移の可能性を考慮してPSMA-PET検査を行います。
*PSA(前立腺特異抗原):前立腺から分泌されるタンパク質。前立腺がんなどの病気で数値の上昇がみられる。
PSMA-PET検査では食事制限や服薬制限などは特にありませんが、いくつかの注意点があります。まず、検査で使用する放射性医薬品は非常に高価であるため、検査のキャンセルの際にはキャンセル料が発生する場合があります。また、放射性医薬品は有効期限が短いため、検査の時間に遅れると検査を受けられなくなる可能性があります。
以下に該当する方は検査を受けることができません。
また、ICD(植込み型除細動器)やDBS(脳深部刺激療法)などで体内に電子機器を装着している方は検査を行うにあたって注意を要するため、事前に申し出るようにしましょう。
PSMA-PET検査は、全体で約2~3時間を要する検査です。検査では、まず放射性医薬品を静脈注射した後、薬が病変部に集まるまで約60分待機します。その後の撮影時間は約20分ですが、診断精度を向上させるための追加撮影が必要になる場合があります。撮影後には約30分の待機時間が必要です。また、検査前には検査の説明を受け、身長・体重の測定や撮影前の排尿なども行います。
検査自体に痛みはありませんが、撮影中は仰向けの状態で体を動かさずに維持する必要があります。
PSMA-PET検査の結果は、専門の医師が撮影画像を詳しく分析し、前立腺がんの有無や再発・転移の状況を確認します。結果の通知方法は医療機関によって異なり、多くの場合はデータをCDなどに記録して自宅に郵送します。通常1~2週間以内に届きます。また医師が直接撮影した画像を見ながら説明を行う場合や、口頭での説明のみの場合もあります。
PSMA-PET検査は、前立腺がんの再発・転移診断において精度の高い検査方法であるため、通常は追加の画像検査を必要としません。検査で原発の前立腺がんや前立腺がんの再発・転移が確認された場合は、患者の病態に応じて手術、放射線治療、薬物療法などの適切な治療が選択されます。かかりつけの病院で治療を受ける場合、郵送などで受け取った検査結果を持参するようにしましょう。
日常生活で注意すべきことは特にありませんが、PSMA-PET検査では放射線医薬品を使用するため、検査当日は乳幼児との接触を控えるようにしましょう。
治療においては、医師が個々の患者の病態に応じた適切な治療方法を提案しますが、各治療方法にそれぞれメリット・デメリットがあるため、医師とよく話し合い納得したうえで自分に合った治療を選択することが大切です。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。