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インタビュー

MERSとは(2)―MERSの感染経路と予防

MERSとは(2)―MERSの感染経路と予防
倉田 毅 先生

国際医療福祉大学塩谷病院 教授/中央検査部部長

倉田 毅 先生

韓国で流行していることが大きなニュースとなっているMERS(Middle East Respiratory Syndrome 中東呼吸器症候群)。耳慣れない病気ですし、とにかく「怖い」というイメージだけをお持ちの方も多いと思います。実際はどのような病気なのでしょうか。MERSの感染経路と予防について、国際医療福祉大学教授であり、元国立感染症研究所所長の倉田毅先生にお話をお聞きしました。

はっきりとしたことはまだ分かっていませんが、SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome 重症急性呼吸器症候群)の事例と今までMERSにおいて判明した事実を根拠に考えると、「飛沫感染」と「濃厚な接触感染」が主要な経路であると推測されます。接触感染においては特に、尿と糞便に対して注意が必要といわれています。

MERSでは咳をしたときに、「エーロゾル」ではなく「飛沫感染」の状態になると考えられています。エーロゾルとは、2~8μm径の小水滴として空中を浮遊していく状態のことです。一方、飛沫感染は、咳とともに咳痰が出た時、重いために空中を浮遊せず下に落ちていく状態です。

MERSの咳では後者の飛沫感染になるため、飛ぶ距離としてはわずか90cm~1m前後であると考えられます。つまり、感染者による咳と咳痰をかなり近い距離であびないと感染しないという結論です。SARSでもせいぜいベッドサイドで(患者さんから)1m以内であり、2m離れている人には全く感染はなかったと香港大の教授は断言していました。

そのため、空気感染はゼロではないが非常に低いと考えられています。同様に、大量のエーロゾルが発生して、室内の空調に乗ることによってすべての部屋に運ばれるようなことは全くあり得ませんでした。

MERSは尿中・糞便から大量のウイルスが検出されていると報告されています。SARSのときも同様のことが起きていましたが、特にMERSでもそれが顕著のようです。なお、SARSでは香港のホテルにて、便器を拭いたタオルで机など他の部分や他の部屋も清掃してしまい、それで感染が広がったことが知られています。MERSも同じ事態にならないよう、各国は厳重な警戒をする必要があるでしょう。

MERSの感染力がはっきりと強くなるのは、MERSの患者さんが発熱し、肺炎を起こしたときであると考えられます。また、MERSで下痢がひどいときに、接触感染することも考えられます。
一方で、MERSに感染していたとしても、症状が出ていない状態では感染力が弱いと考えられます。市中感染(医療施設に関わることのないような健常者が突然発病すること)の可能性もゼロではありませんが、現在ではそれらしい症例はひとつも報告されていません。

接触した後、4日〜14日くらいであると考えられています。

上記のような感染経路をとるため、それを理解した上でどのように予防していくかを考えるのが良策です。

まず、飛沫感染についてですが、飛沫を浴びて吸い込まないためにはマスク(サージカルマスク)が有効です。また、感染力が強い人(発熱、肺炎などの症状がはっきりしている人)には近づかないことです。

また、MERSは接触感染であるため、徹底した手洗いも有効な予防法です。私は「あらゆるところで手を洗え」とよく言います。当然、大量のウイルスが検出されているとする糞便や尿にも気をつけるべきです。SARSのときの検査で、電話機・ドアノブ・エレベータのボタン等々から遺伝子が検出されています。

特に患者さんの家族や医療従事者は念入りに手を洗わねばなりません。排泄物やウイルスを消毒するためには、市販のアルコールや中性洗剤でも十分に効果がありますので、うまく活用することをお勧めします。

さらに言えば、流行地域では自然宿主であるヒトコブラクダへの接触も避けるべきです。ちなみに、まだワクチンはありません。

記事1:MERSとは(1)―MERSの基礎知識
記事2:MERSとは(2)―MERSの感染経路と予防
記事3:MERSとは(3)―MERSの症状と治療、致死率は?
記事4:MERSとは(4)―SARSと韓国におけるMERS流行の経験から考えるべきこと
記事5:MERSのまとめ-感染症の専門家に聞く。

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