天疱瘡は自己免疫水疱症と呼ばれる自己免疫疾患の一種で、デスモグレインという特殊なたんぱく質が関与していることが分かっています。また、ひとくちに天疱瘡といっても、天疱瘡には症状別に様々なタイプがあります。はたして天疱瘡はどんな種類があるのでしょうか? 自己免疫疾患研究のトップランナーであり慶應義塾大学医学部皮膚科教授の天谷雅行先生にお話をお聞きしました。
古典的な天疱瘡は尋常性天疱瘡と落葉性天疱瘡で、最も患者数が多いのが尋常性天疱瘡です。
尋常性天疱瘡は重度の自己免疫疾患の一種であり、具体的には皮膚・口の内側・性器など、体表面や体粘膜のあらゆる部分に対して水疱が大量に発生します。その水疱は弛緩性水疱といい、水がすぐに漏れてしまうため水ぶくれがパンパンに腫れあがらないのが特徴です。
また、尋常性天疱瘡には粘膜優位型と粘膜皮膚型の2種類があり、粘膜優位型ではその名のとおり口腔内や腸管・肛門開口部・女性では膣などの粘膜にできる水疱およびびらん(表皮細胞がはがれてただれ、内側が見えてしまう状態)が主症状となります。一方、粘膜皮膚型では、粘膜のみならず、体のあらゆる皮膚に水疱やびらんが広がり、皮膚から水分が漏れることにより脱水状態になったり、感染症を合併してしまう恐れもあります。
落葉性天疱瘡はデスモグレイン1にのみ抗体を持つ患者さんが発症する病気です。小さな水疱が多発的に皮膚にできて、鱗屑上の紅斑とびらんを生じ、頭部・顔面・胸・背中など汗をかきやすく体内の油分が溶け込みやすい場所に症状が多発します。水疱はすぐに破れてしまい、浅いびらんの上に落屑(らくせつ:ふけのようなもの)をつけることが特徴で、その様子が落ち葉のように見えることから落葉性天疱瘡と呼ばれています。尋常性天疱瘡と違い、粘膜に症状がでることはありません。
腫瘍随伴性天疱瘡はリンパ球系の悪性および良性腫瘍に伴って発症する天疱瘡です。その症状は口腔内を中心に、咽頭にかけて広範囲の粘膜部にびらんや潰瘍ができます。皮膚症状は紅斑・弛緩性水疱・緊満性水疱(水疱で水が溜まり、パンパンに腫れ上がる)・紫斑・多形滲出性紅斑様・扁平苔癬様など多彩です。
また、目の粘膜にも症状があらわれるため、偽膜性結膜炎という症状も生じます。食道・鼻粘膜・膣・陰唇・亀頭部粘膜にも潰瘍ができてしまうことがあります。
その他の天疱瘡には、増殖性天疱瘡、紅斑性天疱瘡(落葉性天疱瘡の亜系)、疱疹状天疱瘡、薬剤誘発性天疱瘡などがあります。
なお、いずれの天疱瘡も遺伝性の病気ではないため、基本的には遺伝しません。ブラジルで風土病的に起こっている特殊な天疱瘡などもあり、その場合は家族内発症をするケースも見受けられますが、それはどちらかというと環境因子が関係しているといえます。
慶應義塾大学大学院医学研究科 皮膚科学 教授
関連の医療相談が9件あります
腫瘍マーカーでSCCが基準値を超える値
12/5に人間ドックでタイトルの判定がされました。特に症状はありません。ただ昨年の人間ドックで初めて検査し、同じ判定となり、病院でレントゲンとCTの検査の結果、問題ないと言われました。母親が肺癌で亡くしている為、遺伝と思い不安になってます。またSCCは別の癌でも反応するとのことで不安です。まず初動として何科を受診すれば良いでしょうか。因みに値は前回は4.2、今回は3.7です。あと子供の頃からアトピーですが関係ありますか?
手に出来る水泡と腕の痒み
数ヶ月前から、不定期ではありますが指の側面に小さな水泡が出来ては消える、といったことを繰り返しています。 痒みを伴うのですが、数日〜1週間ほど我慢すると消えてなくなります。 また、手首より腕側の皮膚もカサカサして痒みを伴い、出血を伴う場合があります。 赤みがあったりなかったり、かゆさが酷かったり、日によってまちまちです。 病院を受診すべきでしょうか?
足の浮腫み。昨日から足にヘルペスができた今日から微熱あり
一週間前から足の浮腫みがありからだが重だるいです。 昨日から、膝の横にヘルペスのような水泡ができて、ヒリヒリ痛いです 身体がだるくて、今日は37,2度あります 新型コロナも身体の倦怠感から始まり微熱も出ると聞いたので、わたしの症状でもどうなのかと思い不安です
4歳の血清補体価について
大学病院での血液検査の結果、血清補体価が60<と書かれていました。これは60以上の数値ということですか? 調べると、成人基準値は57ぐらいまでで、健康な小児は30前後ぐらいと書かれていました。 また、小児急性白血病の子どもは高い数値になると書かれていて心配しています。 4歳で60<は数値は高いのでしょうか? ちなみに、C3とC4は基準値内でした。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「天疱瘡」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。