インタビュー

天疱瘡の種類と症状ー尋常性天疱瘡や落葉性天疱瘡など、様々な病態がある

天疱瘡の種類と症状ー尋常性天疱瘡や落葉性天疱瘡など、様々な病態がある
天谷 雅行 先生

慶應義塾大学大学院医学研究科 皮膚科学 教授

天谷 雅行 先生

この記事の最終更新は2015年10月20日です。

天疱瘡は自己免疫水疱症と呼ばれる自己免疫疾患の一種で、デスモグレインという特殊なたんぱく質が関与していることが分かっています。また、ひとくちに天疱瘡といっても、天疱瘡には症状別に様々なタイプがあります。はたして天疱瘡はどんな種類があるのでしょうか? 自己免疫疾患研究のトップランナーであり慶應義塾大学医学部皮膚科教授の天谷雅行先生にお話をお聞きしました。

古典的な天疱瘡尋常性天疱瘡と落葉性天疱瘡で、最も患者数が多いのが尋常性天疱瘡です。

尋常性天疱瘡は重度の自己免疫疾患の一種であり、具体的には皮膚・口の内側・性器など、体表面や体粘膜のあらゆる部分に対して水疱が大量に発生します。その水疱は弛緩性水疱といい、水がすぐに漏れてしまうため水ぶくれがパンパンに腫れあがらないのが特徴です。

また、尋常性天疱瘡には粘膜優位型と粘膜皮膚型の2種類があり、粘膜優位型ではその名のとおり口腔内や腸管・肛門開口部・女性では膣などの粘膜にできる水疱およびびらん(表皮細胞がはがれてただれ、内側が見えてしまう状態)が主症状となります。一方、粘膜皮膚型では、粘膜のみならず、体のあらゆる皮膚に水疱やびらんが広がり、皮膚から水分が漏れることにより脱水状態になったり、感染症を合併してしまう恐れもあります。

尋常性天疱瘡の皮膚症状

落葉性天疱瘡はデスモグレイン1にのみ抗体を持つ患者さんが発症する病気です。小さな水疱が多発的に皮膚にできて、鱗屑上の紅斑とびらんを生じ、頭部・顔面・胸・背中など汗をかきやすく体内の油分が溶け込みやすい場所に症状が多発します。水疱はすぐに破れてしまい、浅いびらんの上に落屑(らくせつ:ふけのようなもの)をつけることが特徴で、その様子が落ち葉のように見えることから落葉性天疱瘡と呼ばれています。尋常性天疱瘡と違い、粘膜に症状がでることはありません。

落葉性天疱瘡の皮膚症状

腫瘍随伴性天疱瘡はリンパ球系の悪性および良性腫瘍に伴って発症する天疱瘡です。その症状は口腔内を中心に、咽頭にかけて広範囲の粘膜部にびらんや潰瘍ができます。皮膚症状は紅斑・弛緩性水疱・緊満性水疱(水疱で水が溜まり、パンパンに腫れ上がる)・紫斑・多形滲出性紅斑様・扁平苔癬様など多彩です。

また、目の粘膜にも症状があらわれるため、偽膜性結膜炎という症状も生じます。食道・鼻粘膜・膣・陰唇・亀頭部粘膜にも潰瘍ができてしまうことがあります。

その他の天疱瘡には、増殖性天疱瘡、紅斑性天疱瘡(落葉性天疱瘡の亜系)、疱疹状天疱瘡、薬剤誘発性天疱瘡などがあります。

なお、いずれの天疱瘡も遺伝性の病気ではないため、基本的には遺伝しません。ブラジルで風土病的に起こっている特殊な天疱瘡などもあり、その場合は家族内発症をするケースも見受けられますが、それはどちらかというと環境因子が関係しているといえます。

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