てんぽうそう

天疱瘡

最終更新日:
2023年08月22日
Icon close
2023/08/22
更新しました
2017/04/25
掲載しました。
この病気の情報を受け取るこの病気は登録中です

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

医師の方へ

概要

天疱瘡(てんぽうそう)とは、皮膚や粘膜に水ぶくれ(水疱(すいほう))や皮むけ(びらん)などを引き起こす自己免疫疾患で、国の指定難病の1つです。

自己免疫疾患とは、異物から体を守るためにはたらく免疫が、誤って自身の体を攻撃してしまうことによって起こる病気です。天疱瘡では皮膚や口の中、食道といった粘膜の表面にある “デスモグレイン”というタンパク質に対する自己抗体が生じ、デスモグレインのはたらきを阻害してしまいます。デスモグレインには細胞同士を接着させる役割があるため、皮膚、粘膜の上皮細胞同士がうまく接着できなくなり、水ぶくれや皮のめくれなどの症状が現れます。

難病情報センターによると、天疱瘡で指定難病受給者証を交付されている人の数は2020年度で3,500人程度といわれており、より重症度の低いものを含めると、それ以上の患者が存在することが予想されます。好発年齢は40~60歳代で、やや女性に多いことが分かっています。

種類

天疱瘡には、主に“尋常性天疱瘡(じんじょうせいてんぽうそう)”と“落葉状天疱瘡(らくようじょうてんぽうそう)”があり、原因となる自己抗体や症状などが異なります。天疱瘡の患者の半数以上は尋常性天疱瘡とされています。次いで落葉状天疱瘡が多く、ごくわずかにまれな病型の天疱瘡がみられます。まれな病型としては、口内を中心に粘膜の皮むけや潰瘍(かいよう)を生じさせる腫瘍随伴性天疱瘡(しゅようずいはんせいてんぽうそう)などがあります。

尋常性天疱瘡では、デスモグレイン3に対する自己抗体がみられ、落葉状天疱瘡では、デスモグレイン1に対する自己抗体がみられることが特徴です。デスモグレイン3は主に粘膜に存在しますが、一部皮膚にも存在します。また、デスモグレイン1は主に皮膚に存在します。自己抗体が攻撃するデスモグレインの種類に応じて、症状が現れる部位なども異なります。

原因

天疱瘡はデスモグレインに対する自己抗体が生じることで発症しますが、自己抗体が作られる原因についてはまだ明らかになっていません。他人への感染や遺伝はしないと考えられています。

症状

天疱瘡の主な症状は、皮膚や粘膜に生じる水ぶくれや皮のめくれですが、天疱瘡の分類によって症状は異なります。

尋常性天疱瘡

口内の粘膜を中心に水ぶくれや皮のめくれが生じ、痛みによって食事が困難になる人もいます。重症の場合、飲み物を飲むことも難しいケースもあります。

尋常性天疱瘡の中にも“粘膜優位型”と“粘膜皮膚型”があり、粘膜優位型は口内をはじめとする粘膜の症状が中心となります。一方で粘膜皮膚型では、口内だけでなく全身に水ぶくれや皮のめくれが広がり、皮膚表面から体液が漏れ出てきたり、傷から感染を引き起こしたりすることがあります。

落葉状天疱瘡

粘膜には症状が現れず、皮膚のみに症状が現れます。好発部位は頭や顔、胸、背中などで、尋常性天疱瘡と比較すると皮膚の浅い部分に水ぶくれが生じるため、水ぶくれとして認識されることは多くありません。

具体的には、皮膚がフケのように剥がれ落ちる(落屑(らくせつ))ほか、赤い皮疹や浅い皮のめくれがみられます。重症化すると、全身の皮膚へと症状が広がる場合もあります。

検査・診断

天疱瘡を疑う症状がみられる場合は、皮膚や粘膜の組織検査と血液検査を検討します。症状と組織検査の所見、血液中の自己抗体の確認という3つの項目がそろってはじめて、天疱瘡と診断されます。

組織検査

局所麻酔をして皮膚や粘膜の一部を切り取り、顕微鏡で水疱のできる様子を観察します。水ぶくれの生じ方や自己抗体の沈着状態などを、直接蛍光抗体法という特殊な検査で確認します。

血液検査

血液中の自己抗体を確認します。尋常性天疱瘡の原因となる“抗デスモグレイン3抗体”や落葉状天疱瘡の原因となる“抗デスモグレイン1抗体”の有無を確認することが可能です。

治療

軽症の場合でも、中等症、重症と進行していくため注意が必要です。中等症や重症の場合は、基本的に入院をして薬物療法や血漿(けっしょう)交換療法などを行います。

入院が必要となる理由は、治療薬の投与などによって合併症が起こる可能性があるためです。初期の段階で適切な治療を受け、退院後も継続的に治療薬を服用することで、再発の予防が期待できます。

薬物療法

入院中に行われる初期治療としては、ステロイド薬(飲み薬)の投与が挙げられます。ステロイド薬にはさまざまな副作用が存在するため、免疫抑制薬を併用し、ステロイド薬を減量しやすい状態にする場合もあります。病状が落ち着いてきたら、ステロイド薬の投与量を少しずつ減らしていきます。

治療を始めてから2週間ほどたっても病状がよくならない場合は、ステロイドを点滴で投与する“ステロイドパルス療法”や、正常な免疫機能を維持しながら治療する“免疫グロブリン製薬静注療法”、そのほか血漿交換療法などが検討されます。

退院後も定期的に通院し、天疱瘡による症状が新しく発生しないようステロイドの飲み薬を服用し続けることが一般的です。

また近年、抗体を産生するB細胞の表面マーカー“CD20”に対する抗体療法(リツキシマブ)が難治性の天疱瘡に有効であることが示されました。リツキシマブは点滴で投与する生物学的製剤で、2021年12月に日本でも保険適用となりました。

血漿交換療法

血漿交換療法とは、血液中の病気に関連する物質を除去することで病状を改善させる治療方法です。患者から血液を抜き取り、血漿分離器を使って血液から血漿だけを分離・破棄して、新鮮な凍結血漿、または5%アルブミン製薬を補充して患者の体の中に血液を再び戻します。

医師の方へ

医師向けの専門的な情報をMedical Note Expertでより詳しく調べることができます。

この病気を検索する

「天疱瘡」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

実績のある医師をチェック

天疱瘡

Icon unfold more