人間の体は、心臓が休みなく働いて全身に血液を送っていることで正常に機能しています。しかし、その心臓自体を養う血管が動脈硬化(硬くなって詰まる)になると、心臓に不具合が起こり全身に血液が届かず生命まで脅かされます。そのような時に適切な治療を行うため、他検査ではわからない情報を得られる心臓のPET検査が大いに役立ちます。そこで今回は、心臓のPET検査で発見・判断できることを、症例とともに説明いたします。
※本記事は、日本核医学会、日本核医学技術学会、日本アイソトープ協会にご監修いただいております。
心臓は筋肉によって全身に血液を送るポンプの役割を果たしていますが、その筋肉にはたくさんの血液が流れています。もしもその冠状動脈(心筋を養う血管)に動脈硬化が起こると、酸素と栄養が届かず働きが弱くなり、ついにはその行き届かなくなった部分が死んでしまいます。この状態を「心筋梗塞(しんきんこうそく)」といいます。放置すると全身に血液を送れなくなり、死に至る可能性が高くなります。したがって、心筋にきちんと血流が行き渡っているか、ブドウ糖の代謝があるかなどを確認できるPET検査は、治療の必要性や方針を判断するのに大変役に立つのです。
3年前に心筋梗塞で入院経験がある患者さんは、歩行時に胸の不快感を覚え、心筋血流のPET検査を受けたところ血流が低下していたため、心筋梗塞が確認されました。そこで、18F-FDGを用いたPET検査でブドウ糖の取り込みを確認すると、血流の低下(心筋梗塞)は見られるものの、その中にまだブドウ糖の取り込みがある生きた心筋を見つけることができました。その後、冠動脈再建術(血流を回復する治療)を受け元気に退院しました。
以前に心筋梗塞で入院したことのある患者さんは、造影検査で血管が狭くなっていると発見され治療を勧められました。しかし危険をともなう治療に決心がつかず、まずは「心筋シンチ」の検査を受けました。安静(この状態で小さな血管の詰まりがあっても日常生活には影響がほとんどない)と負荷(負荷がかかるとより多くの酸素が必要なので息苦しさや胸痛を引き起こす)の二通りの状態で受けたところ、いずれも血流の低下がみられ心筋梗塞が確認されました。心筋梗塞とは判断できたものの、治療の必要があるかどうかの診断ができず、18F-FDGを用いたPET検査を受けることに。結果、回復の可能性がある生き残った心筋があるとわかり、冠動脈再建術を決心されました。
※心筋シンチ…心筋細胞の状態を調べるときに使われる検査。血流や代謝、交感神経を見るなどいつくかの方法があります。
※本記事は、日本核医学会、日本核医学技術学会、日本アイソトープ協会による『PET検査Q&A』(pdf)をもとにしています。