インタビュー

がんのPET検査における症例―PET検査とは?(6)

がんのPET検査における症例―PET検査とは?(6)

日本核医学会

日本核医学技術学会

日本アイソトープ協会

この記事の最終更新は2015年11月05日です。

現在、PET検査はがんの診断において高い有用性が認められ、一部を除きほとんどのケースにおいて健康保険の適用対象になりました。そこで今回は症例をもとに、がんのPET検査で発見できることを説明いたします。

※本記事は、日本核医学会、日本核医学技術学会、日本アイソトープ協会にご監修いただいております。

※本記事では、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧薬事法)上の医薬品であるかどうかにかかわらず、PET検査に使用する放射性薬剤を「くすり」と表現しています。

がんを心配する50代女性は、がん検診でPET検査を利用しました。1回の検査で全身をチェックすることができ、異常はみとめられませんでした。(保険適用外)

※ただし、記事5で紹介したPETで診断しにくいがんは除く

80歳の患者さんは、咳と背中の痛みでX線CT検査や気管支鏡検査を受け肺癌と診断されました。リンパ節転移もなく手術が予定されましたが、病巣の範囲を確認するためPET/CT検査を受けたところ、両側の副腎への転移、胸椎への骨転移が発見されました。手術は中止し、より状態に適した放射線と抗がん剤による治療に変更されました。

※PET/CT装置は、PETとX線CTが融合した装置。両者を重ね合わせた画像で診断するため、異常がある場所をより正確に判断できる。

大腸癌と診断された患者さんは、すでに肝臓への転移が明らかでしたが、ほかの転移も調べるためPET/CT検査を受けたところ、胸部への転移が見つかりました。従来であれば肺への転移とも考えられる位置ですが、PET/CT画像のおかげで肺ではなく大動脈近くのリンパ節への転移だと判明しました。これは病巣から遠く離れた遠隔転移と判断できたため、大腸と肝臓を手術するという治療方針から、大腸のみを摘出し術後に全身化学療法を行う治療方針に変更されました。

60代の患者さんは食事がのどを通らず体重が減ったため、胃カメラ検査を受け下部食道の進行がんと診断されました。その後PET/CT検査で転移を調べると、リンパ節転移が2ヶ所、そのほか皮下転移・骨転移という予想外の転移を発見しました。そのため、計画していた食道全摘出手術をすることなく、化学療法と放射線治療に変更されました。

41歳女性は、7年前に乳癌の手術をしました。PET検査で経過を見守っていましたが、40歳のときに胸の正面付近が腫れたためPET検査をしたところ、胸骨やリンパ節に異常が認められたため化学療法を行いました。1年後、治療の経過を確認するためにPET検査で確認してみたところ、くすりの異常な集積はなく化学療法が効いているとわかりました。

70歳代の男性は、おなかの痛みや食欲低下があり、胃の内視鏡やCT検査を受けました。すると、おなかのリンパ節が腫れ腹水があるとわかりました。悪性リンパ腫が疑われました。治療前にPET検査で病気の段階を確認し、化学療法を行ったのち(1~3ヶ月後)再度PET検査を受けたところ、治療前にみられたような異常はないと確認できました。PET検査は、悪性リンパ腫に関して精度が高く迅速な特定が可能とされており、治療後の検査で陰性の場合に治療の追加をせず様子をみることが多くなります。

がんのPET検査は全身の検査が可能なので、肺癌や悪性リンパ腫など、転移が多くて全身のチェックが必要ながんの場合に非常に有用です。また、ある程度進行したがんの場合にも、リンパ節転移や遠隔転移など広範囲の検査が必要であるため適しているといえます。しかし、人間ドック・がん検診・早期胃癌のPET検査は健康保険が適用されないため、検査担当医とよく相談することが望ましいでしょう。

 

※本記事は、日本核医学会、日本核医学技術学会、日本アイソトープ協会による『PET検査Q&A』(pdf)をもとにしています。