インタビュー

がんのPET検査―PET検査とは?(5)

がんのPET検査―PET検査とは?(5)

日本核医学会

日本核医学技術学会

日本アイソトープ協会

この記事の最終更新は2015年11月04日です。

がん」は、正常な機能を果たさない「がん細胞」が、体内で異常増殖して健康を維持できなくなる病気です。その「がん細胞」の性質を利用して診断を行うPET(ペット)検査は、がん検査において非常に有能だと認められています。そこで今回は、がんのPET(ペット)検査のしくみや必要性、弱点まで説明いたします。

※本記事は、日本核医学会、日本核医学技術学会、日本アイソトープ協会にご監修いただいております。

※本記事では、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧薬事法)上の医薬品であるかどうかにかかわらず、PET検査に使用する放射性薬剤を「くすり」と表現しています。

活動性が高いがん細胞は、増殖のため正常な細胞より多くのブドウ糖(グルコース)を必要とします。PET検査は、放射線を出すくすりを体内に入れ、それを検知することによって病気を発見する検査ですが、がんのPET検査ではそのがん細胞の性質を利用し、ブドウ糖の性質を持つくすり18F-FDGを静脈注射して検査を行います。

がんのPET検査は治療法と治療範囲の正しい決定に大変役立ちます。また、予想外の病巣を発見することもあります。

―がんのPET検査でわかることー

  1. 病巣が悪性か良性か
  2. 転移の有無とその広がり
  3. 治療後の再発
  4. 治療の効果

18F-FDG を用いた「がん」のPET検査は、その有用性が広く認められるようになりました。そのため、早期胃癌を除くすべてのがん(悪性腫瘍)診断が健康保険の適用対象です。また、再発や、リンパ節・肺・肝臓など内臓への転移の発見、治療の経過を追うことにも大変優れており「炎症性疾患」や「不明熱」など、がんではない病気にもPET検査での診断が役立つと報告があります。(ただし、この2つは保険適用外)

がんが疑われた場合、場所(臓器)・種類・進行度によって、PET検査の必要性が決まります。転移が多く全身のチェックを必要とするようながん(肺癌・悪性リンパ腫など)や、転移の状況(リンパ節転移・遠隔転移)を広範囲に調べなければいけない進行したがんはPET検査が必要です。がんのPET検査は従来の検査と違い、一度の検査で体の広範囲を検査することが可能です。

以下のようにPET検査でも診断しにくいがんがあります。これらが疑われた場合、PET検査を行わないことがあります。

  • 【早期胃癌・肝臓癌】…18F-FDG(ブドウ糖性質のもの)が集まりにくく判断しにくい
  • 【前立腺癌・腎癌・膀胱癌】…18F-FDGが集まりにくく判断しにくい、腎から尿に排泄される18F-FDGと区別しにくい
  • 【乳癌・前立腺癌(骨転移)】…骨に転移して硬くなった場合PET検査で検出しにくい
  • 【進行度の低い小さながん】…PET検査では検出しにくい

がんのPET検査は、がん細胞の数が少なく体内分布がはっきりしないと診断しにくくなります。たとえば、乳癌や前立腺癌の場合、骨に転移したがん細胞の刺激で骨が作られ硬くなっているので、PET検査よりも「骨シンチグラム」という検査の方がはっきりと診断できます。また、肝臓癌や腎臓癌の場合、くすりが集まりにくいのでPET検査よりも「MR検査」の方が適切です。早期胃癌は、PET検査よりも内視鏡(胃カメラ)検査が必要です。そのほかの小さながんにも、内視鏡検査・超音波検査・CT検査・MR検査などの画像診断が向いています。

PET検査の専門家は、PET検査の必要性も弱点も熟知しています。また、PET検査の判断には様々な要因を考慮する必要があり、健康保険の適用を受けるにも具体的な条件が定められているので、検査担当医とよく相談することをお勧めします。

※本記事は、日本核医学会、日本核医学技術学会、日本アイソトープ協会による『PET検査Q&A』(pdf)をもとにしています。