インタビュー

脳のPET検査―PET検査とは?(3)

脳のPET検査―PET検査とは?(3)

日本核医学会

日本核医学技術学会

日本アイソトープ協会

この記事の最終更新は2015年11月02日です。

脳のPET検査では、ブドウ糖や酸素の消費量を測定して病気の診断を行います。脳は人間の生命維持・運動・知覚・思考・情動をコントロールする大切な場所。そこで今回は、脳のPET検査のしくみや、発見できる病気を症例とともに説明いたします。

※本記事は、日本核医学会、日本核医学技術学会、日本アイソトープ協会にご監修いただいております。

※本記事では、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧薬事法)上の医薬品であるかどうかにかかわらず、PET検査に使用する放射性薬剤を「くすり」と表現しています。

脳のエネルギーは、ブドウ糖と酸素からつくられます。脳のPET検査では、その酸素が血液によって脳まで十分に運ばれているか、ブドウ糖とともにどれくらい消費されているかを見ることができます。つまり、脳の血流量と、酸素・ブドウ糖の消費量を測定することで、脳が正常に働いているかどうかがわかるのです。

以下は、脳のPET検査で発見できた病気の症例です。

60代の患者さんは、高血圧の薬を服用していましたが、1ヵ月に一度の頻度で一時的に数分間ではあるものの「右腕に力が入りにくい」「言葉が出にくい」という症状を自覚。それが頻繁になり症状も長くなったため、PET検査を受けたところ、酸素代謝は正常でしたが、左大脳半球(ひだりだいのうはんきゅう)の血流低下が発見されました。原因は頸部の血管の動脈硬化だとわかり、動脈拡張術により狭くなった血管を広げる治療を受け、脳血流が回復しました。

1年ほど前からものわすれがあり、それが増えたことでアルツハイマー病(認知症の一種)が疑われ、18F-FDG を使ったPET検査を受けることになりました。老年期の認知症患者の場合、記憶や理解力に関係する脳の部位でブドウ糖代謝が低下します。通常の脳ならば、はっきりとくすりの集まりを確認できますが、やはりその部位へのくすりの集まりが少なかったためアルツハイマー病とわかりました。(健康保険適用の対象外)

薬によるてんかん発作の治療を行っても効果がない生後4ヶ月の赤ちゃんに、てんかん焦点(てんかんの発作の原因となる脳の部分)を切除する手術が考慮され、原因となる場所をPET検査で調べることになりました。てんかんの焦点はブドウ糖の代謝が低下するため、18F-FDG を使うことでその場所を発見することができました。

症例1と症例2では、はじめ頭部CT検査やMR検査などが行われましたが異常は発見されず、その後のPET検査で病気を診断できました。このように、脳のPET検査では、中枢神経系の病気(脳卒中認知症てんかん脳腫瘍など)の正確な診断が可能です。早期発見と治療・最適な治療の選択のほか現在行っている治療の効果を確かめることもできるのです。

 

※本記事は、日本核医学会、日本核医学技術学会、日本アイソトープ協会による『PET検査Q&A』(pdf)をもとにしています。

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