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末梢動脈疾患や透析シャント狭窄・閉塞に対する血管内治療について

末梢動脈疾患や透析シャント狭窄・閉塞に対する血管内治療について
平瀬 裕章 先生

医療法人高岡みなみハートセンター みなみの杜病院 理事長

平瀬 裕章 先生

目次
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末梢動脈疾患や透析シャント狭窄・閉塞などで、血管が狭くなったり閉塞したりして血液が流れにくくなった場合、血管を内側から広げる「血管内治療」を行います。以前は、PTA(経皮的血管形成術)と呼ばれていましたが、現在(2018年)では末梢動脈疾患の血管内治療は「EVT」、透析シャント狭窄・閉塞の血管内治療は「VAIVT(バイブト)」と呼ばれることが多くなってきています。

今回は、それぞれの治療法について 医療法人 高岡みなみハートセンター みなみの杜病院理事長である平瀬裕章先生にお話を伺いました。

※末梢動脈疾患については「記事1」を、透析シャント狭窄・閉塞については「記事2」をご覧ください。

末梢動脈疾患に対する血管内治療「EVT」とは

末梢動脈疾患に対する血管内治療「EVT」とは
術者:太田宗徳先生(高岡みなみハートセンター 循環器内科医師)

末梢動脈疾患とは、動脈硬化によって足の動脈が狭くなったり閉塞したりする病気です。末梢動脈疾患を発症すると、足に十分な血液が流れなくなり、歩行時に痛みが生じたり、皮膚に潰瘍(かいよう)*ができたりしてしまいます。もっとも重症な場合には、足が壊疽(えそ)*して足の切断に至るケースもあります。

このような状態から足を守るために、末梢動脈疾患の患者さんに対して行われる治療法が「EVT:Endovascular Treatment」です。

EVTとは、カテーテルを血管内に挿入して、病変部をバルーン(風船)で内側から広げる治療法です。バルーンで拡張したあとは、再狭窄・閉塞を防ぐためにステント(金属でできた網)を留置することもあります。

*潰瘍…皮膚がえぐれたようになった状態

*壊疽…皮膚や組織が腐ってしまった状態

EVTの適応

EVTは末梢動脈疾患の症状がある患者さんに対して行われる治療法です。ただし、強い動脈硬化によって血管がぼろぼろに脆くなっていたり、病変部分が非常に長かったりする場合にはEVTができないことがあります。その場合には、患者さん自身の血管や人工血管を使用して血液の通り道を作る外科手術である「バイパス手術」を行います。

EVTの方法

EVTの方法は、末梢動脈疾患が起きている場所によって異なります。本章ではそれぞれの方法について解説します。

大動脈腸骨動脈領域

お腹から大腿骨頭*付近までを「大腿骨腸骨動脈領域」といいます。この領域のどこかに病変がある場合には、冒頭でお話ししたようにバルーンで血管を拡張したあと、ステントを留置する方法が一般的です。

*大腿骨頭…骨盤と大腿骨をつなぐ股関節にある骨

浅大腿(せんだいたい)動脈領域

大腿骨骨頭から膝までを「浅大腿(せんだいたい)動脈領域」といいます。浅大腿動脈領域のEVTは、2018年現在、治療法の転換期にあります。さまざまなデバイスが開発されている段階で、病院によって治療法も異なります。

以前は、大動脈腸骨動脈領域と同様、バルーンで拡張したあと、ステントを留置する方法が一般的でした。しかし、浅大腿動脈領域は病変部が非常に長いうえに、足を動かすたびにねじれたり伸展したりするため、ステントに負担がかかり再発率が高くなるという問題点がありました。また、バルーンで拡張するだけでは、再狭窄が起きてしまう確率も上がります。

そこで、当院では再狭窄を防ぐための薬剤をバルーンに塗布した「薬剤溶出性バルーン」を使用した治療を行っています。

膝下動脈領域

膝から下の領域を「膝下動脈領域」と呼びます。膝下動脈領域に対するEVTは、重症下肢虚血(CLI)*で潰瘍が生じている患者さんに対して、足を切断から守る「救肢(きゅうし)」目的で行います。

潰瘍を治すために血流を改善させることが目的であり、長期的な再発予防が目的ではないため、ステントの留置は行いません。再狭窄率は3か月後で約70%1)といわれており、再狭窄が起きてからでは潰瘍は治らないため、その間に形成外科や皮膚科と協力をしながら潰瘍を治す治療を行います。また、新たに潰瘍ができることも防ぐ必要があります。

末梢動脈疾患の患者さんの場合、靴擦れや胼胝(たこ)などの小さな傷から潰瘍になってしまう恐れがあります。ですから、自分の足のサイズに合った靴を着用したり、足を清潔な状態で保ったりすることが、足を守るために非常に重要です。

*重症下肢虚血(CLI)…末梢動脈疾患が重症化して、下肢の血流が著しく低下した状態

透析シャント狭窄・閉塞に対する血管内治療「VAIVT」

透析シャント狭窄・閉塞とは、血液透析のために作成した「内シャント」が何らかの原因で狭くなったり閉塞したりすることを指します。透析シャント狭窄・閉塞が起こると、血液透析が困難となります。そこで、狭窄・閉塞したシャントを内側から広げる治療法を「VAIVT(バイブト):Vascular Access Intervention Therapy」といいます。

VAIVTの適応

VAIVTは、透析シャント狭窄・閉塞によって血液透析ができなくなったり、血液透析中に何らかのトラブルが起こったりする患者さんに対して行います。具体的には、十分な脱血ができない、返血圧が高く返血ができない、透析中に痛みを伴うなどのトラブルがみられる患者さんに対して行います。

ただし、狭窄や閉塞が起きてから長い時間が経過して、閉塞した先が見えなくなってしまっているような場合などには、VAIVTによる血管内治療ができません。このようなケースに対しては、シャントを別の場所に新しく作り直す手術を行うことがあります。

VAIVTの方法

VAIVT

VAIVTでは血管内にカテーテルを挿入し、病変部をバルーン(風船)で拡張します。日帰りで行うことができ、拡張したシャントは翌日から血液透析に使用できるなど、患者さんにかかる負担が少ないメリットがあります。

一方、治療ではカテーテル刺入部には局所麻酔を行いますが、病変をバルーンで拡張する際に強い痛みを伴うという課題もあります。

医療法人 高岡みなみハートセンター みなみの杜病院におけるVAIVT

シャントに血栓が詰まって閉塞している場合にも対応

一般的に、VAIVTは心臓血管外科医が行う病院が多いですが、当院では循環器内科医がVAIVTを行っています。循環器内科医がVAIVTを行うメリットは、カテーテル治療に精通していることです。そのため、当院では通常VAIVTが難しいとされる症例に対しても、カテーテル治療のデバイスを駆使しながらVAIVTを行っています。

たとえば、「血栓閉塞(血のかたまりが詰まることでシャントが閉塞してしまうこと)」による透析シャント狭窄・閉塞ではシャントを新しく作り直す手術が選択されることが多いですが、当院ではVAIVTで治療を行っています。

また、時間が経って硬くなってしまい吸引が難しい血栓に対しては、生検鉗子(かんし)で血栓をつまみ取るなどしてVAIVTを行っています。

シャントを新しく作り直す手術を行うと、シャントが使用できるまで約2週間かかるため、その間は入院をして血液透析を行う必要があります。患者さんの身体的負担をできるだけ軽減するために、当院ではあらゆる工夫をしながらVAIVTによる治療を行っています。

透析患者さんのシャントを守るために

透析患者さんのシャントを守るために
平瀬裕章先生

透析患者さんは、血液透析を行うためのシャントがないと生きていくことができません。そのため、私たちは心筋梗塞の治療に臨むのと同じような気持ちで、透析シャント狭窄・閉塞の治療にあたっています。

心筋梗塞と同様、透析シャント狭窄・閉塞が起きている場合にも早急な対処が必要です。狭窄や閉塞が起きてから長い時間が経過してしまうとVAIVTによる血管内治療が極めて困難となります。

患者さんによっては、聴診器を使い、シャント音の異変に自ら気付く方もいらっしゃいますが、日頃の血液透析にかかわっているスタッフによる早期発見が何よりも重要だと考えます。また、透析を行っている病院と血管内治療を行っている病院が、普段から密接な連携をとることも非常に重要です。異常を感じた場合に、早急に連絡を取ることができる関係を構築していくことで、地域全体で患者さんのシャントを守っていく必要があるでしょう。

1)末梢閉塞動脈疾患の治療ガイドライン(2015年改訂版)より