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閉塞性動脈硬化症の検査と診断の流れ

閉塞性動脈硬化症の検査と診断の流れ
原口 拓也 先生

医療法人 札幌ハートセンター 札幌心臓血管クリニック 循環器内科 末梢動脈疾患センター長

原口 拓也 先生

目次
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閉塞性動脈硬化(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)は、動脈硬化によって足の血管が詰まり、重症化すると足の壊死(えし)などを引き起こす可能性がある病気です。患者さんの中には、典型的な症状が出ない方や、無症状の方もいますが、まずは“ABI検査”を行い、全身の動脈硬化が進行する前に発見することが重要です。

今回は、閉塞性動脈硬化症の検査の重要性と、診断がつくまでの流れについて、札幌心臓血管クリニック 循環器内科 末梢動脈疾患センター長の原口(はらぐち) 拓也(たくや)先生に伺いました。

閉塞性動脈硬化症の可能性が考えられる場合、外来診療では次のような検査を行います。

まずは足の触診や視診などの診察を一通り行います。足の血液中の酸素が不足して紫色になっていないか(チアノーゼ)、血液の流れが悪く脈の触れが弱くなっていないかといったことを調べます。血流不足により肌がカサカサと乾燥していたり、爪や毛が生えにくくなっていたりすることも、診断の参考となります。

間欠性(かんけつせい)跛行(はこう)がある場合には、どれくらいの距離を歩くと症状が出るのかを確認します。

閉塞性動脈硬化症の可能性が考えられる場合、ABI(ankle brachial pressure index:足関節上腕血圧比)検査を実施します。上腕と足関節に血圧測定用のカフを巻き、血圧の比を測定することで、血管の詰まり具合が分かる方法です。血圧の比が1.0~1.3の間であれば正常、0.9以下や1.4以上では異常と判断します。

閉塞性動脈硬化症の検査の中でも、ABI検査は特に重要だと考えています。数値で結果が出るため患者さんにとって分かりやすいことや、体への負担がかかりにくいことがメリットです。また、保険適用されているため、検査費用も抑えられます。

閉塞性動脈硬化症の可能性が考えられたら、足のエコー検査により、動脈硬化の状態を調べます。血管の詰まっている部分を画像で確認できる方法です。

血管の詰まり具合や、動脈硬化によって石のように固くなっている(石灰化)部分をさらに詳細に確認するには、造影剤という薬剤を用いたCT検査(造影CT検査)や、MRI検査を行います。

MRIと比べて、より情報量が多いのは造影CT検査ですが、造影剤を注射して行うため体への負担は大きくなります。当院では、患者さんの体への負担を最小限に抑えられるよう、足のエコー検査で閉塞性動脈硬化症をはっきりと確認できた場合は、造影CT検査やMRI検査は実施していません。

閉塞性動脈硬化症の患者さんの約50%は心臓の血管の病気を合併しているといわれています。診療においては、合併している病気を見逃さないことが大切です。

当院では、たとえば心臓のカテーテル治療を実施する患者さんにもABI検査を受けていただいて、閉塞性動脈硬化症を可能な限り早く発見できるよう取り組んでいます。

閉塞性動脈硬化症の患者さんの中には、動脈だけでなく静脈の状態も悪くなっている方もいらっしゃいます。血液は心臓から動脈を通って全身に送り出され、静脈を通って心臓に戻ってきますが、静脈の状態が悪いと、心臓に戻ってくる血液の流れに目詰まりが起こりやすくなります。そのため、当院では時間の許す限り、静脈の検査も併せて行うようにしています。

間欠性跛行やしびれといった典型的な症状に限らず、足に何かしらの違和感があったら、閉塞性動脈硬化症の可能性を考えて検査すべきだと思います。症状が非典型的であっても、検査をしてみたら閉塞性動脈硬化症だったという患者さんもいらっしゃるためです。

なかには無症状の方や、高齢で末梢神経(まっしょうしんけい)が鈍感になっており症状に気付かない方もいらっしゃいます。自己判断せず、まずは医師に相談するようにしてください。

閉塞性動脈硬化症を調べるためにABI検査を行ったことがきっかけで、全身の動脈硬化に気付き、心筋梗塞脳梗塞などのほかの病気が見つかる患者さんもいらっしゃいます。心筋梗塞や脳梗塞は、普段は症状を自覚していなくても、急に症状が起こり、命に関わることもある病気です。ABI検査を一度は受けてみることをおすすめします。

当院は、足の治療を年間で約500件*、足の検査を年間で約5,000件**行い、治療とともに診断についても経験を重ねてきました。検査を専門とする臨床検査技師も、迅速に診断できるよう日々努力しています。医師もスタッフも、患者さんをできるだけお待たせすることなく、早期発見・早期治療につなげられるスピーディーな診療を目指しています。

*足の治療は、2019年1月から12月までの累計で530例を実施。
**足の検査は、2018年1月から12月までの累計で5,678(CT、エコー)例を実施。

足の血管が狭くなったり詰まったりしている患者さんの中には、閉塞性動脈硬化症以外の病気の患者さんや、先述のように心臓の病気を合併している患者さんもいらっしゃいます。可能な限り病気を見逃すことがないよう、臨床検査技師をはじめとしたスタッフとの綿密な連携を図り、診療に臨んでいます。

当院は、北海道内の40か所でサテライト外来支援を行っています。遠方で受診が難しいという場合には、ぜひご利用ください。より詳しい検査が必要な場合には、当院の受診も可能です。当院から車両を派遣する無料の送迎サービスも行っていますので、ご活用いただければと思います。

足に何かしらの症状がある方は、ABI検査で血管の状態を調べることを強くおすすめします。私が診察するときは、特に50歳以上の方、喫煙者の方、糖尿病のある方に対し、症状がなくても一度検査することを提案しています。透析治療を受けている患者さんも、一度かかりつけ医にご相談いただければと思います。

閉塞性動脈硬化症の患者さんは、典型的な症状に当てはまらない方も多くいらっしゃいます。足の症状で何か困っていることがあれば、いつでもご相談ください。

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