閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化により足の血管が狭くなったり詰まったりする病気です。歩くと足に痛みが出る間欠性跛行や、足のしびれ・冷感などの症状が特徴的ですが、無症状の患者さんも少なくありません。病気が進行すると、足の壊死が生じる重症下肢虚血という状態に発展する可能性もあるため、閉塞性動脈硬化症の発症リスクがある方は注意が必要です。
閉塞性動脈硬化症の概要、症状、進行について、札幌心臓血管クリニック 循環器内科 末梢動脈疾患センター長の原口 拓也先生に伺いました。
閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化が原因で起こる病気の1つです。足の血管の動脈硬化が進み、血管が狭くなったり詰まったりして、十分な血液が足へと流れなくなることで生じます。自覚症状として、歩いたら足が痛むことや、足のしびれ・冷感などが挙げられます。重症化すると重症下肢虚血という病名に変わり、より深刻な病状に発展してしまいます。場合によって足が壊死するケースもあります。
閉塞性動脈硬化症の原因である動脈硬化を引き起こす危険因子(リスクファクター)として、次のようなことが挙げられます。
私が診察するときは、50歳を過ぎた方や、喫煙をしている方、糖尿病にかかっている方は特に、閉塞性動脈硬化症に注意していただくようお話ししています。
そもそも動脈硬化とは、老化をはじめとしたさまざまなリスクファクターによって、動脈の血管が硬くなり、弾力性(柔らかさ、しなやかさ)が失われることです。外から見ただけでは気付きにくく、いつの間にか進行している危険性があります。
また、動脈硬化は、さまざまな病気を引き起こす原因となります。たとえば心臓の血管に動脈硬化が起こると狭心症や心筋梗塞、脳の血管に起こると脳梗塞や脳出血、足の血管に起こると閉塞性動脈硬化症に発展する可能性があります。
ここで注意していただきたいのは、動脈硬化は全身の動脈に起こり得るものであり、心臓や脳の血管の病気にも関連しているということです。閉塞性動脈硬化症の患者さんの約50%は、心臓の血管の病気も合併するといわれています。
閉塞性動脈硬化症における特徴的な症状の1つが、間欠性跛行です。一定の距離を歩くと足に痛みが出て、休むと治まるというものです。多くの場合、痛みが出てくるのはふくらはぎですが、太ももやお尻に痛みが出る方もいます。
病気が進行すると、短い距離を歩いただけでも痛みが出るようになってきます。たとえば、痛みが出ない状態で1kmくらい連続して歩くことのできた患者さんが、病気が進行すると、100m歩くのも困難だという状態になることがあります。さらに進行すると、安静時にも痛みが生じてきます(安静時疼痛)。
注意が必要なのは、重症下肢虚血と呼ばれる状態に進行した場合です。血流が滞ることにより、足が壊死してしまう可能性があるためです。
重症下肢虚血の患者さんは、足の血流が不足していることにより傷が治りにくく、また傷に細菌が入ってしまうと壊死の範囲が拡大しやすいという危険性があります。
閉塞性動脈硬化症を予防するためには、まずは動脈硬化のリスクとなる糖尿病や高血圧症といった病気を、きちんと治療することが大切です。喫煙者の方は、禁煙するようにしてください。
そして、ウォーキングなどで足をしっかりと動かすことがポイントです。足は“第二の心臓”ともいわれています。足を動かすことで血行が促進されるため、意識して歩くようにしましょう。目安は、1日7千~1万歩です。特に高齢の方は歩幅がそれほど大きくないため、距離よりも歩数を重視してください。
閉塞性動脈硬化症と診断されてから5年後の見通しを示すデータによると、患者さんの約80%は、同じ症状のままで5年間経過するといわれています。進行して安静時疼痛が生じる患者さんは約10%、足が壊死して切断が必要となる患者さんは数%程度です。
そこまで急激に進行する病気ではないといえますが、糖尿病や喫煙といったリスクファクターが多ければ、動脈硬化はより早く進行する可能性があることに注意が必要です。
閉塞性動脈硬化症の特徴である間欠性跛行やしびれといった分かりやすい症状が出る方は、実は患者さんの中でも30%程度です。残りの約70%の方は、無症状か、足の違和感などの非典型的な症状しかみられません。
無症状でも全身の動脈硬化が進んでしまっている可能性はありますし、なかには、足に違和感があって痛み止めを服用している間に、閉塞性動脈硬化症が進行してしまったという方もいらっしゃいます。
足に何かしらの症状があるなら、一度は閉塞性動脈硬化症を疑って調べたほうがよいでしょう。次ページ(『閉塞性動脈硬化症の検査と診断の流れ』)でお伝えする、ABI検査などを受けることをおすすめします。
医療法人 札幌ハートセンター 札幌心臓血管クリニック 循環器内科 末梢動脈疾患センター長
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