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インタビュー

血友病の治療とは

血友病の治療とは
嶋 緑倫 先生

奈良県立医科大学 小児科 教授

嶋 緑倫 先生

前の記事「血友病の症状とは」では、血友病の症状についてご説明しました。今回は、血友病の治療を取り上げます。現在、日本では医療費の自己負担はなく治療することができます。治療費に関する制度や、治療を困難にするといわれているインヒビターについて、そしてインヒビター治療も含めた最新の治療法について、引き続き、血友病の専門医でおられる奈良県立医科大学小児科教授の嶋緑倫先生にお話を伺いました。

血友病の治療において大切なことは、「出血の予防」と「早期の止血」になります。
凝固因子の低下が中等症〜重症の場合は、出血予防のために定期的に凝固因子製剤を注射投与する定期的補充療法が行われます。現在、補充療法を行う方の中でも比較的症状が軽い血友病Bの患者さんでは、1週間に1、2回ほど凝固因子を投与する必要があります。一方、出血時の早期の止血対応をするだけで、定期的な治療は必要ない方もいらっしゃいます。

もし出血してしまったときは、できれば数時間以内に止血治療を実施することが望ましいです。その際は出血部位の診察や検査を行った後、凝固因子製剤を補充するという治療を開始します。軽症・中等症の血友病 A 患者の場合、デスモプレシン(DDAVP)という薬を投与することによって、第Ⅷ因子レベルが十分に高くなり、止血しやすくなるという治療もあります。手術など侵襲が大きい処置を行う前には、凝固因子製剤を事前に補充する必要があります。

小児期年齢では1〜2回の関節内出血でも、関節症を発症してしまうリスクが高いため、基本的に定期補充療法を行うことが多いです。現在小児科年齢では血友病患者の約75%に対して定期的補充療法が行われています。一方、成人の定期的補充療法は約50%にとどまっています。成人になると、運動量や職業によってもアクティビティに個人差が出てくるため、治療方針は個々によって異なります。

血友病は遺伝性の疾患で、幼い頃から発症するため、治療は長期に渡ります。そのため、医療費がどのくらいかかるのかということは大きな問題となります。ただ、現在日本においては医療費助成制度を利用することによって、自己負担なしで治療ができる仕組みが整っています。

その内訳として、まずは7割〜9割は国民医療保険が負担してくれます。さらに、治療期間が長く高額な治療の継続が必要な特定の疾患に対して医療費を助成する特定疾病療養という制度があります。この制度を利用すると、1ヵ月の医療費の自己負担限度額が1万円になります。

さらに、20歳未満の場合は小児慢性特定疾患治療研究事業として医療費自己負担が無料になります。一方20歳以上の場合でも先天性血液凝固因子障害等治療研究事業の制度を利用することで自己負担が無料になります。これらの制度を使うためには、医療保険の保険証、特定疾病療養受療証、小児慢性特定疾患医療受診券または成人の場合は先天性凝固因子障害等医療受給者証を用意する必要があります。詳細については各自治体によって異なるため、自治体に問い合わせて下さい。

合併症の中でも血友病インヒビター(抗体)により治療が困難になる場合があるとお伝えしました。インヒビターとは、本来は体外から侵入したウイルスや細菌などの異物を攻撃する免疫システムのひとつなのですが、血友病インヒビターとは、血液凝固因子製剤を異物とみなして攻撃してしまう抗体のことを指します。血友病 A 患者の 10%~ 15%、血友病 B 患者の 1%~3%に、凝固因子製剤による治療を困難にするインヒビター(抗体)が発生する可能性があります。

術前や出血後に適切な治療を行っていても反応が十分に出ず、血液凝固因子が上昇しない場合には、インヒビターの検査を行うことがあります。

 

血友病インヒビターの発生

 

インヒビターは本来、自己由来と思われるものには攻撃をしません。つまり、血友病インヒビターは血友病の治療のために外から血液凝固因子製剤という異物をいれることで産生されてしまうのです。インヒビター産生の原因については、自己の遺伝子のと変異が大きい場合にインヒビターが作られやすいという報告もされています。

一度体内にインヒビターができてしまうと、血液凝固因子製剤の効き目が悪くなるため、治療法の変更が必要になります。インヒビターをもつ患者さんが出血したときの治療法には、主にインヒビター中和療法とバイパス止血療法があり、患者さんの状況によって選択されます。

インヒビター中和療法とは、血液凝固因子製剤を大量に投与することでインヒビターを中和し、さらに止血に必要な程度まで凝固因子レベルを上げる方法になります。バイパス止血療法とは、バイパス製剤を投与することで欠乏している凝固因子とは異なる凝固因子を活性化させ、第Ⅷ因子、第Ⅸ因子を迂回する経路を使って止血するという方法になります。
 
また、最近は免疫寛容療法(ITI)と呼ばれるインヒビターをなくす治療がメインになりつつあります。これはインヒビター産生がわかっても、大量に凝固因子製剤を投与し続けることで、インヒビターが徐々に消失していくことを利用した方法になります。現在インヒビター患者の6〜7割に効果がでています。最近では投与量を少量にし、週3回程度の凝固因子投与でも効果があることが明らかになってきています。

血友病治療において、現在は新たな凝固因子製剤が次々に開発され非常に活気のある時期です。昨年2014年には、血友病治療のための半減期延長型第IX因子製剤が初めて発売されました。また、本年には半減期延長型第VIII因子製剤も開発されました。血友病Bの患者さんではこの製剤を使うことで、今まで週に2回定期補充のために通院や注射をしなければならなかったのが1週間~10日に1回という頻度に減らせるようになりました。また、血友病Aの定期補充療法では週3回~隔日投与が必要でしたが、週2回の投与でも可能になってきました。 今後、注射回数がもっと少なくてもいいような製剤が発売される可能性もあります。これによって患者さんのQOL(生活の質)はかなり改善されることが期待できます。

また、インヒビターの影響を受けない抗体製剤の研究も進み、現在臨床試験も始まっています。この製剤が臨床で使えるようになると、インヒビターをもつ患者さんにも効果が期待できます。さらに、皮下投与ができるために頻回の静脈注射の必要もなくなり、乳幼児の治療もしやすくなります。その結果、通院は月に1回程度で済み、患者さんのQOLは今後ますます改善される可能性があります。

欧米では遺伝子治療の臨床試験も始まっています。今後医療費の設定や安全性の問題等はありますが、血友病患者さんを取り巻く状況は、この先大きく改善されていくのではないでしょうか。

 

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