「自分では気づいていなくても、排尿障害を起こしていることがある」と、宮原 茂先生おっしゃいます。排尿障害はさまざまなパターンがあるため、そのタイプを見極めることが重要です。今回は排尿障害の診断法についてお話を伺いました。
「尿が近い」「夜中に何度もトイレにいく」「トイレまで間に合わずにもらしてしまう」など、排尿障害にもさまざまなパターンがあります。加齢によって排尿機能は低下し、さまざまな尿のトラブルが起こってきますが、症状を改善するためにはまず自分の排尿状況を知ることが第一歩となります。患者さんには、数日間で構いませんので排尿日誌をつけてもらうようにします。朝起きて何時に排尿したのか、およそ何ml尿が出たのかといったことを記入してもらいます。可能であれば飲み物などの摂取量も記録してもらうと、より状況を把握することが可能となります。
排尿トラブルがない人でも、水分を多量に摂ればトイレに行く回数が増えるのは当然のことです。またよくみられるのが、脳梗塞や心筋梗塞などの治療を受けている患者さんで、1日に2リットル以上の水分を摂取している場合です。血液がドロドロにならないようにと内科の主治医の先生に水分を多く摂るように指導されている場合があるようですが、1日に2リットルというのは量が多いように感じます。通常は1.5リットル、あるいは1.2リットル程度で十分といえます。排尿日誌をつけてもらうことで患者さんの排尿状況がみえてきます。患者さんの日常生活の中で何が問題となっているのか確認をすることで、適切な判断が可能となるのです。
また、排尿障害をはじめ尿のトラブルで重要なことは残尿(膀胱の中に残っている尿)の状態を把握することです。自分では排尿後の残尿がないと思っていても、実際には尿が残っていることがあるのです。膀胱の容量はおよそ200〜300mlで、膀胱に150mlほど溜まると軽い尿意、250mlほど溜まると強い尿意を感じるようになります。尿意を感じて尿を排出したあとも、膀胱の中の尿量が全くゼロになるわけでなく、多少の尿が残っています。
排尿後、膀胱にどの程度尿が残っているのか通常自分ではわかりません。例えば、膀胱に尿が300ml溜まっていて、排尿によって200ml排出して本人はすっきりしていたとしても、膀胱には100ml残っているのです。つまり、本人は気づいていなくても残尿があるということです。
排尿の後、膀胱に残っている尿を計るのが残尿測定です。トイレで尿を出してもらった後に尿量を計ります。排尿機能を把握する上で、この残尿の状態を確認することは非常に重要となります。以前は導尿(尿道からカテーテルを膀胱に挿入して尿をからだの外に出す)を行って測定していましたが、現在は超音波で簡単に計ることができるようになりました。残尿検査で50ml以上の尿が残っていれば治療が必要になります。患者さん本人が気づいていない残尿を確認することにより、排尿機能の状態を知ることが可能です。泌尿器科の使命は、「排尿機能の低下の有無を早い段階で発見すること」にあると考えています。
やなせ内科医院 院長
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