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インタビュー

膀胱と尿道の機能検査「ウロダイナミクス検査」とは

膀胱と尿道の機能検査「ウロダイナミクス検査」とは
中田 真木 先生

社会福祉法人三井記念病院 産婦人科 医長

中田 真木 先生

ウロダイナミクス検査とは、膀胱と尿道の本来の性能や実際の働きを理解するための生理学的な検査法です。必ずしもすべての患者さんに不可欠ではありませんが、尿もれや排尿障害の原因を調べ、治療方針を決めるために重要な検査です。三井記念病院の産婦人科・骨盤底婦人科 医長の中田真木先生は三井記念病院でウロダイナミクスラボ(ウロダイナミクス検査を行う場所)を立ち上げられました。ウロダイナミクス検査について、またウロダイナミクス検査の有用性についてお話しを伺いました。

ウロダイナミクス検査には、膀胱内に尿がたまっていく状態(=蓄尿相)と膀胱内から尿が排出される状態(=排尿相)をシミュレート(再現)するいくつかの検査法があります。蓄尿相をシミュレートする検査では、尿道内部の圧力の分布、膀胱の安定性や容れられる量、溜まった感じ(=尿意)を的確に捉えられるかなどをみます。排尿相をシミュレートする検査はもう少し複雑で、排尿の過程で膀胱の収縮、尿道の弛緩、それに、これらの2つのプロセスがよく協調しているかどうかを評価します。

ウロダイナミクス検査で測定される基本のデータは、膀胱や尿道の内部の圧力と尿の流出する速度です。その他、溜まった感じ(=尿意)の展開や括約筋・括約筋の周囲の筋肉の筋電図などの情報も収集します。これらの情報は、尿を溜めているとき排出するときのそれぞれで膀胱や尿道を制御する神経が正しく働いているかどうかを判定するために使われます。

女性特有の膀胱や尿道の不具合は、骨盤臓器脱にともなうもの・腹圧性尿失禁・子宮疾患によるものの3つが代表格です。活動期の年齢の女性では、骨盤臓器脱と腹圧性尿失禁は多くが妊娠出産の所産です。その他、70歳以降では脊柱の変形があり、足腰の問題と並行して起こってくる膀胱・尿道の機能低下が増えてきます。無症候性の脳梗塞などで、神経系の機能低下が関与しているケースもあります。現実には、膀胱・尿道の不具合は複数の原因から起こりいくつかの機転が混ざり合っていることが多いといえます。ウロダイナミクス検査を行うことで、尿失禁や慢性的な排出障害の成り立ちを非常に正確に解明することができます。これがウロダイナミクス検査のメリットです。

腹圧性尿失禁

医学上の指針によると、腹圧性尿失禁の診断や治療には必ずしもウロダイナミクス検査は必須ではありません。診察台上での慎重な評価と適切な画像検査(超音波画像検査・膀胱尿道造影など)、除外項目のチェックなどが正しく行われれば、ウロダイナミクス検査を行わずに尿失禁手術にまで進んでよいという考え方が、米国を中心に主流となっています。ウロダイナミクスをすべての患者さんに行っても治療成績は全体として向上しないというのが、その理由です。

一方、腹圧性尿失禁手術を十分に活かそうとして複数の手術を使い分ける場合、尿道内圧のデータによって患者さんをグループ分けする必要が出てきます。これには尿道内圧測定を行う必要があります。そこで、手術の前にひととおりウロダイナミクス検査を行う方針にしている施設もあります。もともと手術治療の対象となる腹圧性尿失禁の範囲は国や地域によってかなり差があります。術前のウロダイナミクスの必要度についても、国や地域による差があるのは自然なことであるといえます。

骨盤臓器脱

尿を排出する力が低下し、慢性的な残尿やたまった尿をなかなか出し切れないという問題を「低活動膀胱」と呼びます。低活動膀胱は昔からあった病態ですが、高齢人口の増大により次第に医療上の課題としての重みが増して来ました。骨盤臓器脱は、骨盤の出口を構成している支持機構(つまり骨盤底)と、腹部内臓の重量・腹筋・背筋・横隔膜などによって骨盤底に及ぼされる力のバランスの不均衡によって起こります。ここから、妊娠・出産で骨盤底を傷めた方だけでなく、低活動膀胱で排尿の都度いきみを加えている人も骨盤臓器脱になりやすいということがわかります。

低活動膀胱を伴う骨盤臓器脱を手術するときには、もしも手術で十分に堅固に整復できなかったら子宮脱や膀胱瘤は再発してしまう一方、もともと尿を排出する力が不足しているのですから、もしも過度の修正を行ってしまったら排尿できなくなってしまうかもしれない、という板挟み状態になります。また高齢者の場合、脳や神経などの故障や膀胱そのものの加齢変化など、骨盤臓器脱とは別の成り立ちをもつ膀胱尿道のトラブルが隠れている可能性も大いにあります。そこで、理想を言うならば、70歳くらいから上の年齢層では骨盤臓器脱の手術を行う前にウロダイナミクス検査でひととおり膀胱や尿道の性能を見ておくことが望ましいのです。

再手術、特に骨盤臓器脱

他施設で骨盤臓器脱の手術を受けた後に、尿もれや刺激症状(排尿時の違和感や頻尿など)のために専門施設を受診される方がいます。このようなケースでは、ウロダイナミクス検査は役立ちます。最初の手術の前にウロダイナミクス検査を行っていなかった場合でも、改めてウロダイナミクス検査を行い手術歴の詳細を取り寄せるなどすれば、多くの場合に膀胱・尿道に潜んでいた異常やそれまでに受けた手術の中の修正すべき点などが明らかになります。これは、ウロダイナミクス検査が機器分析で数量データを提供するということによる強みです。

医療連携でも有用

遠方にお住まいの方に骨盤臓器脱手術を行うとき、術後の経過観察や術後の下部尿路症状にどのように対処していくかはデリケートな問題です。特に高齢の女性の場合、術後3ヶ月くらいまでの経過観察は手術した病院で行うとしても、後々も何かあったら手術した病院ヘ受診してくださいと指導することは非現実的です。

そこで、最初からお住まいの地域の泌尿器科と連携をとり、患者さんが地域に戻ってから手術関連や膀胱・尿道の不具合がある場合はまず地域の泌尿器科にコンタクトしていただくように手配します。この場合に、ウロダイナミクス検査のデータがあると、低活動膀胱であるとか、尿道内圧が足りない、尿意が減弱しているなどのことが明確になり、患者さんへの説明や泌尿器科との連携に役立ちます。

 

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