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インタビュー

トゥレット症候群の重度難治性チック、治療の課題と対策

トゥレット症候群の重度難治性チック、治療の課題と対策
開道 貴信 先生

奈良医療センター 機能的脳神経外科

開道 貴信 先生

トゥレット症候群の重度難治性チックに対する脳深部刺激療法(DBS)の適応基準は、2015年になって緩和する方向性が示され、これまで手術を受けることができなかった患者さんにも治療の道が開かれました。しかしながら、チック症状が極めて重い患者さんの場合には、自傷他害の懸念があるため入院加療そのものが困難となります。患者さんと治療者の双方の安全を確保しながら手術を成功させるまでのさまざまな工夫について、独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院脳神経外科診療部医長の開道貴信先生にお話をうかがいました。

ひとつ前の記事「重度難治性チックに対する救助活動としての医療」でご紹介した超重症例の患者さんに対する手術を行う上で、我々は総務省消防庁の「救助活動に関する基準」をひとつの拠り所として臨むことにしました。

(救助活動)

第一九条の3

隊員は、修得した知識及び技術を最高度に発揮するとともに、救助器具を有効に活用して救助活動を行わなければならない。この場合において、隊員は、自らの安全を確保するとともに、相互に安全に配慮し合い、危険防止に努めなければならない。

(救助活動の中断)

第二一条

消防長等又は消防署長は、災害の状況、救助活動に係る環境の悪化、天候の変化等から判断して救助活動を継続することが著しく困難であると予測される場合、又は隊員の安全確保を図る上で著しく危険であると予測される場合においては、救助活動を中断することができるものとする

 

(総務省消防庁「救助活動に関する基準」より一部抜粋)

適応年齢(18歳未満)

 →人道的医療として倫理審査委員会(Institutional Review Board: IRB)へ申請

自傷他害のチック

 →十分な抑制・鎮静、心理検査は面接を省略して書面で行う

過度な抑制による下肢静脈塞栓など、合併症の懸念

 →短期間の入院で必要最小限に留める

設備・物品破損の懸念

→不要なものは撤去し、クッションやシートを張るなど養生を行う

他の患者さんへの危害の懸念

→入退院時は裏口を使用、隔離された経路で要所にスタッフを配置、包括的暴力防止プログラムの応用

受傷する危険と人道的行為の葛藤

→災害救助の心構えで臨む

実は2015年になってある論文が発表され、DBSのガイドラインが緩和されました。このことにより適応年齢も引き下げられ、倫理審査委員会(IRB)の承認を得ることができました。(次の記事「重度難治性チックに対するDBSの今後」を参照)

頭部MRIを含む術前検査については日帰り入院で行いました。また、通常は手術にともない数週間の入院が必要ですが、今回のケースでは手術当日に入院、翌日には退院というスケジュールで手術を行ないました。

包括的暴力防止プログラム(Comprehensive Violence Prevention and Protection Programme: CVPPP)とは、主に精神科医療領域の現場における暴力に対して、専門的な知識・技術に基づいた包括的な対処技能を身につける研修プログラムです。チックは不随意運動ですので、患者さんは暴れようと思って動いているわけではありません。しかし、お互いの身の安全のため、入院時にはCVPPPに習熟した院内のスタッフが周囲に付き添ったうえで、他の患者さんとの接触を避けるため裏口から入り、また施設内の通路では要所にスタッフを配置しました。

安全かつ十分に患者さんの行動を抑制するために、体幹四肢抑制(手足、体幹を縛り、肩を抑えて起き上がれないようにする)に加えて、ご本人が普段使っているプロテクト用マスクで顔面保護を行いました。患者さんはまったく身動きがとれないわけではなく、ある程度の可動域で動くことができます。抑制をすり抜けてしまうと患者さん自身がけがをしてしまう懸念があるため、このような措置が必要になります。

患者さんとは会話による意思疎通が問題なく行えるため、抑制・鎮静をかける際にも一方的にベッドに押さえつけるわけではなく、ベッドに横になっていただくよう了解を得ています。そのため、術前の検査なども安全に行うことができました。

この入院期間は非常に高リスクな診療ではありましたが、結果として重大な危険事象はもちろん、ヒヤリ・ハットに属するようなことも一切なく、患者さん自身のけがなどもありませんでした。

手術から2ヶ月が経過し、口の中を噛んでしまうことによる傷もほとんどなくなり、近づいて診察することもできるようになりました。また、外来での通院の際にも、ご家族の付き添いだけで院内を普通に歩いて移動していただくことができるようになっています。

チックの重症度を示す臨床評価尺度であるYGTSSのスコアも術前より良くなっています。この患者さんの症状がチックという不随意運動であるからこそ治るのであって、もしそれ以外の精神症状などが原因であれば、DBSによって治ることはないはずなのです。

 

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