インタビュー

トゥレット症候群の重度難治性チックに対するDBSの今後

トゥレット症候群の重度難治性チックに対するDBSの今後
開道 貴信 先生

奈良医療センター 機能的脳神経外科

開道 貴信 先生

この記事の最終更新は2016年03月17日です。

1999年に最初の治療例が報告されて以来、トゥレット症候群に対する脳深部刺激療法(DBS)は欧米を中心に普及してきました。そして2015年、ガイドラインの改定によって、より多くの患者さんに対して治療への道が開かれるようになりました。トゥレット症候群の重度難治性チックに対するDBSの今後について、日本のトップランナーである独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院脳神経外科診療部医長の開道貴信先生にお話をうかがいました。

2015年にMovement Disordersという医学雑誌において、トゥレット症候群のDBS治療に関する全症例のレビューと、それに基づく最新の知見が示されました。(Movement Disorders Volume 30, Issue 4, pages 448–471, April 2015)私も共著者のひとりとして名を連ねていますが、その中で120例以上の症例が安全に行われ、良好な予後が得られたことが明らかになりました。

このことを受け、今後治療を推進していく上で年齢についても制限を設けず、若い患者さんに対しても治療を許可していくよう、ガイドラインの改訂が提案されています。また、チックの重症度を示すYGTSSのスコアも35点以上に縛られることなく、点数が低くても危険な症状を呈する患者さんについては同様に許可すべきであるとしています。ただし、乱診乱療を防ぐためには、施設内申請という形をとるべきであるという考えも同時に示されています。

私はこの論文が受理されたことにより、トゥレット症候群における難治性チックに対するDBS治療をさらに推し進めるべき時が来たという、ひとつの時代の流れを感じています。

トゥレット症候群の難治性チックに対する脳深部刺激療法(DBS)は、チックを軽減させるという緩和治療の域にとどまらず、根治的な治療に繋がる可能性があります。ある症例では、電気刺激装置の埋め込みにともなう感染症のため、電極をいったん除去する必要がありました。この患者さんは長期に渡りチック症状が出ていませんでしたが、少しずつ電圧を下げ、最終的にはDBSを離脱しても良好な状態を維持することができています。

トゥレット症候群で苦しんでおられる患者さんの中には、脳深部刺激療法(DBS)のことをご存じない方もまだまだいらっしゃることと思います。我々は人道的な見地からひとりでも多くの患者さんを助けたいと考え、非常に難しい症例についても治療を可能にしてきました。

おそらく患者さんは社会から隔絶され、闇の中にいるようなお気持ちではないかとお察ししています。若くして発症されるだけに、将来に対する不安が大きいということもあるでしょう。日本ではまだ20数人の方にしかこの治療は行われていませんが、全国にはまだまだ多くの患者さんがいらっしゃるはずです。

幸いなことに、内科的な治療を中心とする国内有数の医療機関からも患者さんをご紹介いただくようになり、良好な連携がとれるようになってきました。このDBSでしか効果がないという患者さんが一定数いらっしゃる限り、我々は少しでもそこに光を当てるお手伝いをしていきたいと考えています。

 

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