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インタビュー

「チック」とよばれる症状が複雑にあらわれる病気、トゥレット症候群

「チック」とよばれる症状が複雑にあらわれる病気、トゥレット症候群
開道 貴信 先生

奈良医療センター 機能的脳神経外科

開道 貴信 先生

トゥレット症候群は、「チック」と呼ばれる症状が複雑にあらわれている状態をいいます。本人がコントロールできない不随意運動であるにもかかわらず、ある種の癖のようなもの、または精神疾患の一種であると誤解されている面があります。トゥレット症候群の重度難治性チックに対する脳深部刺激療法(DBS)における第一人者である、独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院脳神経外科診療部医長の開道貴信先生にトゥレット症候群におけるチックについてお話をうかがいました。

 

定義としては多種類の運動チックと1種類以上の音声チックが1年以上にわたり続くということが示されていますが、実はトゥレット症候群の診断基準はこのチックだけで構成されています。治療者の立場からみればそれこそがトゥレット症候群であり、それ以外のことはこの病気の本質ではないと考えています。

精神科領域で診察されることが比較的多い病気であるため、精神病の一種なのではないかという見方もありましたが、科学的な知見が蓄積され、現在では誤解であることがわかってきました。しかし、これまでよくわかっていなかったごく稀な病気であることから、トゥレット症候群というと精神症状を持っているのではないかといった誤解は未だに多く、そのことが診療上の問題となっています。

不随意運動とは、自分自身でコントロールできずに出てしまう症状をいいます。これが「自分の意志で行っていること」なのではないかというのが誤解のひとつです。また、運動以外にも言葉の症状があります。短音と呼ばれる音を発することもあれば、言葉を発することもあります。それは単語であったり、あるいはもう少し長く文章になっていたりすることもあります。他人が言ったことのオウム返しのほか、「汚言(おげん)」と呼ばれる暴言や性的な発言など、その場に不適切な単語が出てしまうこともあります。

運動にせよ音声にせよ、複雑なものになると本人の意思による「行動」のように思われがちですが、いくつかの運動が組み合わさったパターンとして現れるということは十分にありえます。私が専門としているてんかんの患者さんでも、知らない間に家に帰っていたなど、無意識とは思えない一連の行動がみられることがあります。

誤解が多い上に、診断基準もほとんど知られていません。冒頭でも述べたように、トゥレット症候群の診断基準はチックだけで構成されています。したがって我々も、チックに対してどうアプローチしているかということを明確にしておく必要があります。さもなければ、トゥレット症候群という「精神疾患かもしれない」と誤解を受けるような病気に対して手術を行っているという、間違った認識を与えてしまうことがあります。

人間は行動や運動に対する報酬系を2種類持っています。ひとつは「何かをする」ということに対して、うまくできたら脳の中で「よくできましたね」といってもらい、その報酬がもらえるからまた続けるというものです。もうひとつはその逆にブレーキの働きをするもので、「あることをせずにじっとしている」ということに対して、じっとしていることができたら「よく我慢しましたね」といって報酬が入るというものです。

そこで、「じっとしていること」に対する報酬系が破綻している場合どうなるかというと、「何かをすること」によって報酬を得る自己報酬サーキットだけが延々と回り続けて止まらなくなります。そうすると、その場で思いついたことは何でも行動に移してしまい、言葉にして言ってしまうということになります。

また、「してはいけないこと」「言ってはいけないこと」というものは、誰もが心の引き出しの奥深いところにしまっているはずなのですが、重症の患者さんの場合には、それすらもわざわざ開けて記憶の底から引きずり出し、自ら報酬を得ているのだろうと考えられています。

ですから、目の前の人に手足をぶつけてはいけない、大きな声を上げてはいけないということを患者さんは理解しています。しかし、だからこそやってしまうのです。

チックという言葉がいかにも軽妙な響きを持っているため、症状は軽いのではないか、あるいは癖のようなものなのではないかといった印象を持たれています。そのため、チックに対して手術を行うことに疑問を持つ方も多いようです。

しかし、チックといってもその重症度は非常に幅広く、重度難治性チックの場合は、不随意運動による自傷他害や絶叫のため社会生活不能となり、日常生活も困難となり、人生の破局をきたします。

私自身もここに来て診察をするまでは、本当にそのような方がいるということは知りませんでした。トゥレット症候群を専門とする医師でないかぎり、その実態を知ることが難しい疾患であるといえるでしょう。

 

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