概要
チック障害とは、顔をしかめる・まばたきをするなど意図しない意味のない運動が素早く繰り返される“運動チック”と、意図しない音や言葉を繰り返し発する“音声チック”がみられる病気のことです。
チック障害のはっきりした発症原因は分かっていません。症状は、成長とともに自然に改善していくことがほとんどです。
一方で、チックは注意欠如・多動症(ADHD)や学習障害などの精神疾患を併発していることもあるとされており、薬物治療などが必要になることも少なくありません。
また、チック障害には運動チックか音声チックのみがみられるタイプのものも多いですが、1年以上にわたって運動チックと音声チックの両方が続くものを“トゥレット症候群”と呼びます。
原因
チック障害の原因は、現在のところ明確には解明されていませんが、ドパミン神経のはたらきの異常が指摘されています。また、チック障害は同じ家系内で発症しやすいことから何らかの遺伝的な要因が示唆されています。チック障害は注意欠如・多動症(ADHD)、強迫性障害、学習障害などを併発しやすいと考えられています。さらに、チックは精神的な緊張やストレス、疲れを感じた際に症状が出やすくなることも特徴の1つです。
症状
チック障害は、意味のない運動が意図せず繰り返される“運動チック”と、意味のない音や言葉を繰り返す“音声チック”に分けられます。
運動チックでは、まばたき・顔をしかめる・肩をすくめる・首をかしげる・首を振る・ジャンプする・物を叩く・物を蹴るなどの動作が繰り返されます。一方、音声チックでは鼻を鳴らす・咳払いをする・特定の音を発する・他者の言葉を繰り返すなどの動作が繰り返されるのが特徴です。いずれも短時間であれば部分的に症状を意識して抑えることもできます。
一般的には5〜6歳頃に運動チックがみられるようになり、数週間〜数か月の周期で症状がよくなったり悪くなったりを繰り返しながら、1年以内で自然に消失していくとされています。しかし、1年以上続く場合は思春期の頃にもっとも症状が強くなり、一部は成人になってからも症状が続いていきます。また、運動チックと音声チックが両方とも1年以上続く慢性チック症をトゥレット症候群と呼びます。
検査・診断
チック障害は、日常の中でどのような症状がみられるのかを総合的に判断して診断されます。そのため、特別な検査が必要ないことも少なくありません。
一方、上述したように注意欠如・多動症(ADHD)や強迫性障害などの病気を併発していることも少なくありません。何らかの要因や別の病気の併発が疑われる場合は、心理検査、脳波検査、血液検査や尿検査などを行うことがあります。
治療
チック障害は多くが自然に改善していくため、チックについての心理教育や環境調整で経過をみていくのが一般的です。
しかし、症状が強く集団生活や社会生活に支障がある場合は、認知行動療法などの精神療法や抗精神病薬などを用いた薬物療法が行われることがあります。また、周囲の理解を求めて生活にうまく溶け込めるよう支援が必要になるケースも少なくありません。
チック障害はさまざまな発達障害や精神疾患を併発することがあるため、それらの病気に対する治療も並行して行っていく必要があります。
予防
チック障害の発症メカニズムは明確に解明されていない部分も大きいため、確立した予防方法はありません。
しかし、チック障害は緊張やストレス、疲れなどによって症状が強くなる傾向があります。チック症状がある場合は日常生活を整えてストレスや疲れをためないようにし、過度に緊張する場面は避けることが大切です。
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