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インタビュー

重度難治性チックに対するDBSの心構え

重度難治性チックに対するDBSの心構え
開道 貴信 先生

奈良医療センター 機能的脳神経外科

開道 貴信 先生

チックは本人の意識とは関係なく起こる不随意運動であるにもかかわらず、ある種の癖のようなもの、または精神疾患の一種であると誤解されている面があります。しかし、チック症状が複雑にあらわれるトゥレット症候群では日常生活すら困難となり、人生の破局をきたす場合さえあります。独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院脳神経外科診療部医長の開道貴信先生は、トゥレット症候群の重度難治性チックに対する脳深部刺激療法(DBS)を国内で最も多く手がけている第一人者です。これまでの症例を元に、「救済医療」としてDBSを行う心構えについてうかがいました。

  • 普通に話せば気さくな若者で、母親とも普通に会話できる
  • 幻覚・妄想や気分障害などはまったくない(精神病とは一線を画している)
  • 会話中、突然音声チックが出たり、意思に反して手が出てしまう
  • 自分の顔への打撃があるため、やむを得ず野球のキャッチャーマスクをつけなければならない
  • 顔への打撃はマスクで防げても、それによって手を痛めてしまうほどであり、自分の意志で力加減ができない
  • 常に腕を組む、足を組むという姿勢を取っていないと自分や周囲の人にけがを負わせてしまう
  • 割れ物の食器などはけがのおそれがあるため使えない
  • 母親はそばで介助しているので生傷が絶えない

この患者さん(仮にAさんとします)と家族会で知り合った別の患者Bさんが、たまたま脳腫瘍で国立精神・神経医療研究センター病院で手術を受けていました。脳腫瘍を取り除いた後、Bさんの症状が一時期軽くなりましたが、それを聞いたAさんのご家族が、もしかしたら手術で改善する余地があるのではないかと考えて来院されたことが受診のきっかけとなりました。

しかし、Aさんには脳腫瘍はありません。何とかしてさしあげたいと思っていたところ、脳深部刺激療法(DBS)という我々が持っている治療手段が有効であることがわかりました。1999年の最初の症例以降、欧米で少しずつエビデンス(医学的根拠)が出てきていたことから、我々も施設内で倫理審査委員会(IRB)の申請を経てDBSを行いました。

その結果、Aさんの症状は良くなり、1ヶ月ほどすると自分で食事を摂るというごく当たり前のことができるようになりました。その後大学に進学され、就職の準備もされているところです。

このDBSは脳腫瘍を取り除くといった根治のためのものではなく、本来はあくまでも緩和治療なのですが、Aさんの場合、多少波はあるものの年々症状が減っていき、現在はすっかりなくなっています。

  • 音声チックの症状はさほど強くない
  • 食事をしようとして口の中に固形物を入れると、舌や口の中を強く噛んでしまうため、流動食しか食べることができない

DBS手術後約1ヶ月で普通に食事ができるようになり、その後も症状が減っています。この方も社会生活に対する意欲を持ち、現在就職活動をされています。しかし、症状が強かったときには社会生活はもとより、日常生活すら困難であり、生きていくのがやっとという状況だったのです。

トゥレット症候群のチックに対するDBSは、いわば「救済医療」として、できることはしてさしあげたいという考えのもと、治療に有効な手段(ツール)を持っている者の責務として人道的に行っているものです。

チックの症状がこの方たちほど重症でない場合でも、頭を振る動作で頚椎を痛めてしまったり、手足に怪我を負ったりこともあります。また、突然声を出してしまい会話が成立しないため、学校も中退せざるを得ない、あるいは卒業しても就職できないといった問題があります。そのような状況では、日常生活は辛うじて可能であったとしても、社会生活には著しく支障をきたします。

発症は10歳前後の若い頃に始まり、軽症であれば思春期をすぎる頃には軽快するのが普通ですが、我々がDBSを行った18例の患者さんは平均年齢27歳前後です。待っていればよくなるかもしれないといっても、人生のターニング・ポイントともいうべき時期に社会からドロップ・アウトしてしまうことで、その先の将来まで大きく影響するため、人生を立て直すことが極めて難しくなります。

日常生活の困難に加え、社会生活にも関わることができなくなっていた方たちが、DBSによって日常生活が可能になり、社会生活も送れるようになりました。中には結婚してパートナーを得たという方もいらっしゃいます。

我々はこの方たちを本来のあるべき姿に近づけることで、それまでスタートラインに立てなかった方たちを何とかしてさしあげたいという思いで、縁あってお手伝いをしてきました。そこには功名心を含め、何か意図的な考えがあったわけではなく、ただ目の前の患者さんを何とかしたいという一心で突き動かされてきたというのが実際のところです。

しかし、やるべきことに関しては明確に科学的なアプローチをとり、ガイドラインに則った適切なプロセスを経て、周囲の理解を得たうえで行っているのです。

 

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