S414x320 a3ee01fb 745a 4e2c 990c 908aebf17376

インタビュー

公開日 : 2016 年 07 月 12 日
更新日 : 2017 年 05 月 08 日

サイトメガロウイルス感染時期の検査と「先天性CMV感染症」の赤ちゃんの診断・治療

サイトメガロウイルスはどこにでも存在するありふれたウイルスであり、日常生活中に感染する機会は多々あります。しかし、妊娠中に初めてサイトメガロウイルスに感染してしまうと、生まれてきたお子さんに聴覚や運動障害などが現れてしまうことがあります。サイトメガロウイルスにご自身が感染しているのか、感染したのは妊娠前か妊娠中かを調べるためにはどのような検査方法があるのでしょうか。また、先天性CMV感染症の赤ちゃんに有効な治療法はあるのでしょうか。東京大学医学部附属病院女性診療科・産科主任教授の藤井知行先生にお話しいただきました。

妊娠中のCMV感染の検査

記事1「妊娠中のサイトメガロウイルス感染の予防法」では、妊婦さんへのサイトメガロウイルス(以下、CMV)初感染を防ぐための教育・啓発と「妊婦CMV抗体スクリーニング」により、母体初感染率が低下したとの報告がなされていると述べました。

妊婦CMV抗体スクリーニングとは、妊娠中の女性がCMVに対する抗体を保有しているか否か、また保有している場合はいつ頃CMVに感染したのかなどを検査して、啓発やフォローアップが必要な方を抽出するものです。

※ただし、全妊婦に対するCMV抗体スクリーニングは、技術的・倫理的な問題(後述)も多いため、現時点では世界的にみても推奨されておらず、全国アンケート調査でも実施した産科施設は4.5%にとどまっています。

妊婦CMV抗体スクリーニングの2つの目的

  1. CMV抗体陰性の妊婦に感染予防の教育・啓発を行う。
  2. 初感染の可能性が高い妊婦を抽出し、新生児精査・診断・フォローアップと治療を行う。

妊婦スクリーニング藤井知行先生ご提供

(引用元:妊娠管理マニュアル)

妊娠初期にIgG「陰性」となった妊婦さんは特に注意が必要

CMVに感染しているかどうかは、採血によりCMVに特異的な2つの抗体であるIgGとIgMを調べることでわかります。

まず妊娠初期~16週にIgGを調べ、陽性となった場合はIgMを測定します。ここで注意すべきことは、「IgG陰性」という言葉に安心してはならないということです。

『産婦人科診療ガイドライン2014:産科編』でも、IgG陰性であった場合は「妊娠中の初感染ハイリスク群」と認識するよう記されています。なぜなら、妊娠初期の抗体検査でIgG陰性であった方が妊娠中にIgG陽性に転じたケースこそ、最も問題となる「妊娠中の初感染」だからです。

妊娠初期段階でIgG陽性となった場合は、妊娠する以前にCMVに感染していたと考えられます。妊娠以前の感染でもCMVの母子感染は起こり得るものの、その頻度や胎児への影響は初感染に比べて低くなっています。

ところが、多くの人は「陰性」という言葉をよい意味で捉えてしまう傾向があります。

実際に、妊娠16週にトキソプラズマの抗体を調べ陰性となった妊婦さんが、医師に「陰性と出たので安心してよい」といわれ、その後異常感染してお子さんが重症感染してしまったという事例があります。

本来であれば、医師はこのとき「今感染していないからこそ、妊娠中に初感染のリスクがある」と伝え、予防法を伝えるべきでした。トキソプラズマ症の予防法は、生肉(ユッケや生ハムなど)を避けるといった極めて簡単なものですので、それさえ知っていればこの母子は感染を回避できたのです。

CMVについても同様のことがいえます。妊娠初期にIgG陰性となったハイリスク群の方には、医師が感染予防法をしっかりと説明せねばなりません。

※予防法については記事1「妊娠中のサイトメガロウイルス感染の予防法」をご覧ください。

サイトメガロウイルスのIgM抗体は長期間にわたり陽性反応を示し続ける

IgG陽性となった場合は、CMVの感染時期を特定するためにIgMを測定します。CMVではないごく普通のウイルスに感染した場合は、下図の赤で示した箇所のように感染時期にのみIgMが陽性となります。そのため、IgMが陰性となれば「妊娠中に感染したものではない」と判断することができます。

(引用元:妊娠管理マニュアル)

ところが、CMVの場合は水色のラインで示されているように、感染後もIgM抗体が長く残る特徴があるため、長期にわたり陽性反応が出てしまい感染時期を特定することが困難になります。この現象を“Persistent IgM”といいます。(Persistent=頑固なという意味)

より噛み砕いて言うと、妊娠前にCMVに感染したとしても、妊娠中にIgM陽性となる可能性が大いにあるということです。

そこで、IgM陽性の妊婦のCMVの感染時期を推定するために、「IgGアビディティー」を調べることとなります。

サイトメガロウイルス感染症のページへ

関連記事