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サイトメガロウイルスの再活性化を防ぐ治療

サイトメガロウイルスの再活性化を防ぐ治療
仲瀬 裕志 先生

札幌医科大学附属病院 消化器内科 教授

仲瀬 裕志 先生

この記事の最終更新は2016年04月05日です。

残念ながら、サイトメガロウイルスは一生潜伏し続けます。体から完全になくすことはできないため、とにかくウイルスを再活性化させないことが重要です。札幌医科大学医学部消化器・免疫・リウマチ内科学講座教授、仲瀬裕志先生にお話をうかがいます。

また、潰瘍性大腸炎を疑う場合、はじめからサイトメガロウイルスの検査をすることも有効と考えます。私が所属していた京都大学医学部附属病院の研究チームでは、潰瘍性大腸炎患者さんの再燃時に大腸粘膜内のサイトメガロウイルスの遺伝子量を検査しています。サイトメガロウイルスの再活性化を有する患者さんの中には、炎症を取るだけで治療がうまくいっている患者さんもいらっしゃいます。病気を悪化させるだけの量のウイルスがいると先にわかっていれば、知らずにステロイドを使用して悪化させてしまうという事態を避けられます。免疫抑制剤を使用しないのであれば、たとえば血球成分除去療法なども非常に有効でしょう。とにかく、「感染症(サイトメガロウイルス腸炎)」の前段階の「再活性化(潰瘍性大腸炎)」の状態にとどめるように、「炎症を取るだけ」の治療をすることが重要です。

活性化した白血球は炎症を長引かせる原因となります。ですから、炎症を長引かせる前にその原因を取り除いてしまおうとするものです。薬を使用しないため免疫抑制などがかかることがなく「炎症を取るだけ」の治療ができます。また、すべての白血球を取り除くわけではなく、活性化した白血球だけを取り除けるようなしくみになっています。

炎症性腸疾患の治療ではよく知られるインフリキシマブやアダリムマブなどがこれに当たります。記事3でも述べた、炎症を大きくする働きのあるTNFaをブロックしてサイトメガロウイルスの増殖を抑制する作用を有します。

どんなにサイトメガロウイルスの反応が出ていたとしても、免疫抑制剤や抗ウイルス薬をはじめに使用すべきかどうかは疑問が残ります。記事3で述べたように、サイトメガロウイルスは段階によって悪さをする度合いが変わるため、どれだけサイトメガロウイルス遺伝子が増幅されてその局所に存在しているかどうかで、潰瘍性大腸炎(炎症)でおさまってくれるか、サイトメガロウイルス腸炎(感染症)にすすんでしまうかが分かれます。サイトメガロウイルスは炎症をえさに再活性化しますから、豊富なえさ(大きな炎症)があってウイルスが大量に増幅した状態では、えさだけを除去してもウイルスはいっこうに減りません。その時、大きな炎症を抑える免疫抑制剤と増えすぎたウイルスを抑える抗ウイルス薬の両方を使用せざるをえない状況になるのです。つまり、できるだけ炎症が小さい段階(潰瘍性大腸炎)で炎症をなくしてしまえば、えさがなくなってそれ以上ウイルスが増幅することはありません。そもそも免疫抑制剤や抗ウイルス剤の出番はなくなるのです。

サイトメガロウイルスはほとんどの方が潜伏感染しているため、予防は事実上不可能です。しかし、炎症を最小限にとどめることが再活性化を防ぐもっとも有効な方法ですから、患部の炎症が小さいうちに、できるだけ早期にウイルスがどれくらい増殖しているか調べることは非常に有効と考えます。サイトメガロウイルス腸炎を合併するリスクが高いかどうか、どんな治療法が適切かを知るための早期診断につながるでしょう。もちろん、そのためには患者さんに症状が悪くなる前に早期に受診していただくことも重要です。
 

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