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第7次医療計画にむけた岐阜県の医療構想

第7次医療計画にむけた岐阜県の医療構想
松波  英寿 先生

社会医療法人蘇西厚生会 松波総合病院 理事長

松波 英寿 先生

この記事の最終更新は2018年01月11日です。

2017年に厚生労働省より提示された「第7次医療計画」では病床の機能分化や地域包括ケアシステムの構築、地域医療連携推進法人制度の創設などを目標としています。岐阜県ではこの「第7次医療計画」の策定を受け、革新的な地域医療の体系づくりを目指した新しい取り組みが行われ始めています。そうした取り組みは医学書院から発行されている「病院」2017年7月号にも取り上げられました。

今回は注目される岐阜県の医療構想について進められていることや、今後の展望について社会医療法人蘇西厚生会 松波総合病院 理事長の松波英寿先生にお話を伺いました。

岐阜県は県全体の人口が約202万人(平成28年岐阜県人口動態統計調査結果より)です。このように多くの人口を抱える岐阜県ですが、なかには病院が少ない地域も存在しています。そのため、県の中心地となる「岐阜市」とその周辺に位置する医療機関が、この岐阜県全域の医療を支えてきました。

岐阜市とその周辺には500床を超える中核病院が4つあり、その他にもいくつかの病院が点在しています。これらの医療圏のことを「岐阜医療圏」とよんでいます。

岐阜医療圏の現在の課題は、医療圏内に点在する病院の医療機能が高度急性期・急性期、あるいは慢性期に偏っていることです。これでは回復期の機能を担う病院が不足してしまいます。そこで岐阜県では下記のような取り組みを行うことで課題を解消しようとしています。

上記のような課題を踏まえ、岐阜県では地域の方に必要な医療を網羅できるよう、それぞれの病院が担うべき役割を決めていく取り組みが行われています。

まず岐阜県内の高度医療を岐阜医療圏に集約し、なかでも急性期医療を中心的に行う病院を下記4施設に限定することを検討しています。

岐阜県の急性期医療を担う4施設

・岐阜大学医学部附属病院

・岐阜県総合医療センター

・岐阜市民病院

松波総合病院

上記の4施設は先に述べた岐阜医療圏に位置する500床以上の病院です。このように急性期医療を集約することによって、コストの削減が図れるほか、急性期医療が必要となる症例を集約することが可能となり、県内の医療の質を向上させることが期待されます。

上記で紹介した4施設以外で岐阜医療圏に位置する病院は、特別な場合を除いて回復期病床を中心に役割をシフトすることで、今まで不足していた回復期病床を補完するとされています。また療養病床については、病院の運営による介護老人保健施設への転向を検討しています。

さらに第7次医療計画では地域医療連携推進法人の導入を目標としています。地域医療連携推進法人とは地域の医療機関が協力し、一体となって複数の医療機関や介護施設を運営するための制度です。この制度を導入することによって、物品の共同購入など病院の経営面の効率化や、地域医療協力体制の円滑化を図ることができると期待されています。

岐阜県では岐阜大学を中心に上記4つの急性期病院が地域医療連携推進法人の導入を検討し、診療科の標榜科目や病床の区分を検討する研究会などを設置するとされています。また公的病院と民間病院が連携推進法人を組むことで、どちらの医療機関もその役割を全うできる体制を整えることができると考えられます。こうした計画が進むことで地域にとってより有益な医療環境を作れると考えられています。

私は岐阜県全体の医療をよりよくするため、2017年現在さまざまなことを構想しています。ここではそのなかから3つの構想をご紹介いたします。

私は最終的には岐阜医療圏の急性期医療を行う4つの中核病院が「1つの大きな総合病院」のような機能を果たすことを想定しています。今は従来の総合病院と同じくそれぞれの病院にいくつもの診療科がある状態ですが、いずれ各病院がそれぞれ専門の診療科をもち、「この疾患はこの病院」ということが明確になると連携が取りやすいのではないかと考えているのです。

このアイデアはオーストラリア連邦クイーンズランド州の州都ブリスベンの医療システムに倣って作られました。ブリスベンの急性期医療は都心部に位置する5つの中核病院に集約されています。これらの中核病院はそれぞれ限られた診療科のみを担い、相互に密な連携を取ることによって1つの巨大な総合病院のような機能を果たしています。

また岐阜県では日本の高齢化対策のために、在宅医療の充実化と医療情報の共有化を目指すさまざまな取り組みを行っています。その取り組みのうちの1つが「ぎふ清流ネット」です。2017年現在岐阜県には「ぎふ清流ネット」という情報共有システムがあり、クラウドシステムを用いて病院と診療所が患者さんの医療情報を共有することに役立てています。

私はこのシステムをさらに活用していくため、今後は病院と診療所の間だけでなく、介護施設、訪問看護ステーション、薬局などその他の医療機関や、自治体などにも医療情報を共有することを検討しています。このシステムでは画像など重いデータを省き、患者さんの基本的な情報だけを共有できるようにしたいと考えています。これは完全な情報ではないという意味合いから「疑似患者情報共有システム」と呼称されています。こうしたシステムを導入することによって、電子カルテのシステムのない施設でも患者さんの基礎的な医療情報を閲覧することができ、地域の医療機関の連携がより強化されるのではないでしょうか。

さらに在宅医療に注目が集まる昨今、私は患者さんそれぞれの自宅からいざという時に医療従事者とスムーズに連絡をとり、支援を求められるシステムが必要だと考えています。そこで松波総合病院では「いつでもウォッチ」という在宅患者見守りシステムの運営を実用化に向けて検証しているところです。

いつでもウォッチとは、バイタルサイン感知機能、ドクターコール機能、見守り機能、駆けつけ要請機能を持った腕時計型のデバイスです。何かあった際に患者さん自ら医療従事者にすぐに連絡できる機能を持つほか、バイタルサイン(脈拍・体温といった生命兆候)に異常がみられると医師や消防署に連絡が届く仕組みとなっており、緊急時にはすぐに医療従事者が駆けつけられるようになっています。

 

現在各都道府県では、その地域性に合った医療の形を実現するためにさまざまな取り組みが行われています。岐阜県では従来の体系を大きく変えるような動きがみられています。地域の方が安心して暮らしていけるような医療をつくるため、県内の病院で協力して新しい環境を整えていきたいと考えています。

 

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