アンジェルマン症候群は、生まれつき発症する遺伝子の病気です。現代の医学では、根本的な治療方法は明らかになっていません。ご家族は、患者さんがよりよい健康状態を保てるように、普段から病院と繋がりを持っておくことが大切です。また、親御さんだけでなく周囲の人々がアンジェルマン症候群の特性を理解して、患者さんの生活にプラスになるような支援を行うことも大切です。
今回は、アンジェルマン症候群の治療方法と、病院での取り組みについて、埼玉県立小児医療センター 大橋博文先生にお話を伺いました。
アンジェルマン症候群は、遺伝子の異常に基づく生まれつきの病気です。根本的な治療方法は残念ながらありません。
実際に困っている個別の症状については、たとえば、けいれんであれば投薬を行うなどの対症療法(症状を和らげる治療)が行われます。症状を少しでも和らげることで生活の質の向上が期待されます。
また、病院では年齢に応じて以下のような対応が行われます。日頃の生活のなかでよりよい健康状態を保てるよう、病院との繋がりをしっかりと持つようにしてください。
生後間もなく、あるいは診断がついた時点で、まずは眼科的検査や聴覚の検査が行われます。何らかの合併症*の有無を調べるためです。
合併症…基礎疾患(アンジェルマン症候群)が原因となって起こる実際の症状。
赤ちゃんのときに多くみられるのは哺乳障害です。哺乳障害には、胃から食道に逆流するような現象がよく伴います。そこで、体位指導、薬物治療、体重増加のケアが必要となります。
幼児期からは、お子さんの健康管理が中心になります。睡眠障害、斜視(目の向きがずれる)、けいれん発作、背骨の側弯(曲がること)などの症状に注意し、必要に応じて治療が行われます
発達の遅れに対しては、以下のような治療やトレーニングが並行して実施されます。
また、歩くことに困難があるため、身体障害者手帳を取得して装具を使っていくことも必要になる時期です。
学童期に入ると、肥満傾向がみられる場合があります。栄養状態には注意が必要です。斜視・側弯・けいれん発作・睡眠障害などの症状にも引き続き注意します。
アンジェルマン症候群は、未だ解明されていないことが多く、研究者のあいだで注目が集まっている病気です。なぜこのように発語が困難なのか、といった脳の機能に関する研究が進められています。
また、原因遺伝子であるUBE3Aの働きについても基礎研究が行われています。2017年現在、発表されている情報はありませんが、脳で作用する薬剤の開発などが期待されています。
アンジェルマン症候群の患者さんのご家族には、情報が不足していることや、同じ病気の人と知り合えないことから、不安感や孤独感を抱えている方が多くみられます。そこで、ご家族同士で交流し、互いの状況や生活の知恵などについて情報共有し合える場を設けることは、有意義であると思います。
埼玉県立小児医療センターでは、アンジェルマン症候群の方を含め、希少疾患をもつ方に集まっていただく取り組みが行われています。
アンジェルマン症候群は、医療関係者の間では、医学的な面や体の症状について注目されがちな病気です。しかし、実際には発達特性や療育・教育の問題が重要です。
たとえば、学校の先生がアンジェルマン症候群の生徒にかかわった経験は、療育・教育に関する貴重な情報となります。厚生労働省難治性疾患克服研究事業「アンジェルマン症候群の病態と教育的対応の連携に関する事業」(2009年に実施)では、アンジェルマン症候群の子どもを受け持ったことのある先生方から、教育的対応の難しさや対処方法などに関する回答が集まりました。
アンジェルマン症候群のお子さんのために、このような研究・情報を役立てていくことが大切だと考えています。
なお、上記の研究は『アンジェルマン症候群をもつ子どもたちと教育対応~教師の実践記録:103人の調査から~』と題して製本しています。学校の先生や親御さんにとって参考になる内容だと思います。残部数が少しあり、希望される方にはお送りすることができますので、必要な場合は埼玉県立小児医療センターにお問い合わせください。
学校の先生をはじめ教育者には、認知特性や発達特性のあり方を広くとらえて、アンジェルマン症候群の特性をわかったうえで患者さんに対応するということに、注目してもらいたいと思います。
たとえば、病気の特性にあわせた教育として、下記のような方法は参考になるのではないでしょうか。
アンジェルマン症候群の方は、水などが大好きであるという特徴を持っています。この特徴は、歩行がうまくできない子どものトレーニングとして活かすことができます。大好きなもの(水道、好きな人など)を目標にして歩かせると、集中が持続して普段よりも長く歩けることがあります。
アンジェルマン症候群の方は、2つのものを同時に意識し、順序だてて考え、捉えていくことが難しいとされています。これは、一般的には2歳の子どもがクリアできる課題とされています。しかし、このような課題があることに注目して意図的に練習すれば、改善される可能性が高くなります。
アンジェルマン症候群は、診断された後、特性を知ることが大切な病気です。根本的な治療は難しくても、お子さんへの対応の仕方などにとってプラスになると思います。
重度の発達の遅れがある病気ですから、診断がついたときはショックを受けられるかもしれません。しかし、家族の一員として幸せに過ごし、家族のことも幸せにしているという患者さんが大勢いらっしゃいます。
ご家族のかたは、お子さんができるだけよい状態で過ごせるように、将来に希望を持ってしっかり育ててもらえればと思います。
アンジェルマン症候群のお子さんが元気に成長されるためには、親御さんだけではなく学校の先生や周りの人たちも、この病気について理解する必要があります。病気の知識を共有し、お子さんのためになるようなよい連携関係をつくっていきましょう。
埼玉県立小児医療センター 遺伝科 科長
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