あんじぇるまんしょうこうぐん

アンジェルマン症候群

監修:

概要

アンジェルマン症候群とは、生まれつき特定の遺伝子のはたらきが失われていることで、重度の精神発達の遅れ、てんかん、歩行時のふらつき(失調性歩行)などを引き起こす病気です。そのほかにも、ちょっとしたことで容易に笑うなどの行動特性、尖った顎や大きな口などの特徴的な顔貌、低色素症、睡眠障害などが特徴として挙げられます。

根治的な治療法がないため、治療は症状を和らげる対症療法となります。たとえば、てんかん発作には抗てんかん薬、睡眠障害がある場合には睡眠薬を使用します。また、理学療法や作業療法など、状態に応じた治療が行われます。

原因

アンジェルマン症候群は、15番染色体に存在するUBE3Aという遺伝子のはたらきが、何らかの原因で失われて引き起こされる生まれつき(先天性)の病気です。多くは突然変異で起きるため、どの家庭でもアンジェルマン症候群の子どもが出生する可能性があります。ただし、まれに家族性のケースも存在するとされています。

症状

乳児期の後半くらいから発達の遅れに気付かれることが多く、幼児期には次第に言語障害、失調性歩行、容易に笑うなどの特徴的な症状がみられます。てんかんが合併するケースが多く、乳児期に熱性けいれんとして発作が現れやすいとされています。また、睡眠障害を合併し、入眠に時間がかかる、途中で起きてしまう、早くに起きてしまうなどさまざまなケースがみられます。言語障害においては、言葉を理解する能力よりも発語が障害され、文章などの長い言葉を話すのは難しいとされています。

また、ちょっとしたきっかけで容易に笑うことが多いのも、よくみられる症状です。好奇心が強い性格が現れる場合が多く、水やビニールを触るのを好む、興奮しやすい、落ち着きがない、何でも口に入れる、注意されても繰り返すといった行動もしばしばみられます。

そのほかの症状として、乳児期の哺乳不良、小頭症斜視脊柱側弯(せきちゅうそくわん)(背骨が曲がる)、特徴的な顔貌(口が大きい、歯間の隙間が広い、舌や下顎の前突)なども知られています。

検査・診断

特徴的な症状などからアンジェルマン症候群が疑われる場合は、遺伝学的検査*を行います。状況に応じて、検査の前あるいは後に遺伝子カウンセリング**を行う場合があります。また、アンジェルマン症候群はさまざまな合併症を伴う可能性があるため、その評価のために、脳波検査、画像検査(MR、CT、X線など)、超音波検査(エコー検査)などが行われることがあります。

*遺伝学的検査:採血を行い、染色体や遺伝子の異常の有無を調べる検査

**遺伝カウンセリング:遺伝の専門医や遺伝カウンセラーと直接相談することによって、遺伝に関するさまざまな医学的情報の提供、心理面や社会面などに関する支援を受けることができる診療のこと。

治療

アンジェルマン症候群は生まれつきの病気であるため、根本的な治療はありません(2024年2月時点)。そのため、治療は症状や合併症を緩和するための対症療法が基本となります。乳児期に哺乳不良があり母乳やミルクをうまく飲めない場合は、鼻から胃までチューブを通して栄養補給を行う経管栄養などの処置を行うことがあります。てんかんや重度の睡眠障害に対しては、発作を防ぐための抗てんかん薬、睡眠薬などの薬物治療を行う場合があります。

脊柱側弯がある場合はコルセットの着用や手術、アキレス腱のつっぱりには専用の装具の使用や手術を必要に応じて行うなど、合併症に応じた治療を行います。また、それぞれの発達の段階に応じて運動や言語などの機能や社会性を伸ばすことを目的として、理学療法、作業療法、療育などを行います。

治験

アンジェルマン症候群に関連する治験の情報をご覧いただけます。

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最終更新日:
2025年07月31日
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2025/07/31
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