概要
アンジェルマン症候群とは、重度の精神発達の遅れ、てんかん、失調性の運動障害など、神経系に関係した症状を有する病気を指します。ちょっとしたきっかけで容易に笑ったりすることも特徴のひとつです。
アンジェルマン症候群は、小児慢性特定疾患ならびに難病指定を受けています。日本における発症率は1万5千人の出生あたり1人であり、500〜3,000人ほどの患者さんがいると考えられています。治療は、てんかんのコントロール、療育を行うことが重要な疾患です。
原因
アンジェルマン症候群の原因は、人の細胞にある23対の染色体の15番目にある染色体に起きる異常です。
染色体の中には、遺伝子があります。遺伝子には、体を作ったり、機能させたりする重要な情報を含んでいます。遺伝子は、両親から受け継がれますが、特定の遺伝子では一方の親の遺伝子だけがはたらく、ゲノム刷り込みという現象があります。片方の親からの遺伝子がはたらくことがあらかじめ刷り込まれているのです。アンジェルマン症候群では、正常ではゲノム刷り込み現象によって母親から受け継がれた遺伝子が機能する遺伝子が、何らかの理由で機能しないことにより発症します。
もっとも多いものは、母親由来の染色体が欠けることで機能しないものです。頻度の少ないものとして、父親由来のみの遺伝子を受け継ぐこと(片親性父性イソダイソミー)、母親由来の刷り込み変異、遺伝子の点変異などがあります。
アンジェルマン症候群の多くは遺伝子の突然変異で起きるため、家族内で何人も生じることはありませんが、まれに遺伝性がある場合があります。
症状
アンジェルマン症候群の特徴は、神経系に関連した症状です。重度の知的発達の遅れ、言語の遅れなどが特徴です。言語機能では、言語を理解する能力や言葉を発声する能力がありますが、特に発語が障害されます。また、栄養がうまくとれない哺乳障害、身体のバランス障害から、ぎくしゃくとした失調性歩行もみられます。けいれん発作を伴うてんかんも合併しやすいです。
ちょっとしたきっかけで笑うことが多いのも特徴です。興奮のしやすさや多動傾向、集中力の短さ、注意されても繰り返す、といったこともみられます。夜間に眠れない睡眠障害もみられます。水に魅了されることもよくみる特徴です。
一方で、アンジェルマン症候群では、心臓疾患など命に関わる内臓臓器の合併症は少ないとされます。
検査・診断
症状や所見からアンジェルマン症候群が疑われたら、遺伝子の異常を血液検査で確認します。染色体が欠けているために生じることがもっとも多く、15番染色体をみるFISH検査を行うことが多いです。それ以外の原因については、メチル化解析、シークエンス解析など特殊な検査を行うことがあります。
また合併症について、頭部画像検査、脳波検査、超音波検査などを必要に応じて行います。
治療
赤ちゃんの頃は、上手く哺乳ができないことがあれば、栄養がうまくとれるように介入や調整をします。けいれんなどがあれば、抗てんかん薬でけいれんを抑える治療を行います。それぞれの発達の段階に応じて、運動や言語などの機能、社会性を伸ばす理学療法、作業療法、療育などを行っていきます。夜間にうまく眠れないときには、睡眠薬などを使用することがあります。
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