コフィン・シリス症候群は、発達の遅れや特徴的な顔貌がみられる指定難病のひとつです。合併する可能性のある症状は多岐にわたり、呼吸器の感染症などの非常に重い症状が現れることもあるため、病院と連携して定期的な健康診断を受けることが大切です。その他、支援制度や交流会の機会についてもご紹介します。
今回は、コフィン・シリス症候群の治療や生活上のサポートなどについて、埼玉県立小児医療センター 大橋博文先生にお伺いしました。
コフィン・シリス症候群を根本的に治療する方法はなく、個別の症状(合併症)に対する治療を行います。心臓の構造に異常がある心房中隔欠損などの先天性心疾患、斜視などの眼科異常、背骨が湾曲する脊椎側弯などについては手術が必要なことがあります。
コフィン・シリス症候群は、知的な発達の障害がみられる病気です。赤ちゃんのときには哺乳や摂食をうまく進められなかったり、体重がなかなか増えなかったりすることがあります。このような発達の遅れに対しては、ほかの染色体異常の症候群*と同じく、療育的なケア(発達を促すトレーニング)や支援が重要です。
染色体異常の症候群…21番染色体が1本多いダウン症候群など。
障害を持って生まれたお子さんに共通していることではありますが、健康管理や定期的な通院が大切です。特に症状が出ていないときでも定期健診をしっかりと受けていくようにしましょう。
長期的には、眼科・耳鼻科的な症状、脊椎側弯や関節異常など骨格系の症状、心疾患、歯科的な症状、便秘や潰瘍などの消化管の症状、行動・性格特性に気を付けていく必要があります。
コフィン・シリス症候群は、幼い頃に呼吸器の感染症などの症状を合併しやすく、重症化すると命にかかわる恐れがあります。しかし、その時期を乗り切れば、健康面で落ち着いた時期を迎える患者さんが多くみられます。
また、長期間にわたる研究はまだ行われていないため、平均寿命などのデータは報告がありません。しかし、少なくともコフィン・シリス症候群の患者さんが短命ということはありません。
コフィン・シリス症候群は昔から存在する病気ですが、認知されてきませんでした。そこで患者さんのなかには、発達の遅れや特徴的なお顔の様子があって、何かの病気をもっている可能性があると思われていながら、診断不明の状態で過ごしている方も多かったのではないでしょうか。
近年、原因となる遺伝子が発見されたことで多くのことが明らかになりました。今後は病気への理解が深まり、認知度も上がってくると考えられています。
学校の先生や役所の職員などの関係者に対してお子さんの病気を伝えるときは、支援に役立たせることが目的となります。そのために、まずはお子さん本人の状態を理解してもらうことが大切です。
お話しされるときは、具体的に注意してもらいたい合併症や、発達の遅れがどれくらいなのか、どういう風に気を付けてほしいのかといったことを中心に伝えましょう。また、お子さんの様子をよくみてもらい、実際の状態を把握してもらうという気持ちでお話しされるとよいでしょう。
お子さんの状態の背景として「コフィン・シリス症候群」という病名を伝えることも大事です。しかし、希少な疾患であることからこの病気を知らない方は多く、病名を伝えるだけではお子さんの実際の状態に注目してもらいにくくなる恐れがあります。
そこで、実際の状態を把握してもらったあとで補助的に病名を伝えたり、信頼できるWEBサイトの情報などを活用して正確に理解していただいたりするとよいでしょう。
埼玉県立小児医療センターでは、先天異常症候群(生まれつき複数の臓器に異常を認める病気)をもつお子さんとご家族に集まっていただく取り組みを実施しています。基本的には毎月2つの病気を対象に、講義形式で情報提供を行ったり、座談会形式で情報交換会や交流会を行ったりしています。年間の予定については、埼玉県立小児医療センターのWEBサイトにて掲載しています。
コフィン・シリス症候群は、先に述べたように発達の遅れなどの症状がみられる病気です。そこで、定期的な通院や治療に加えて、トータルケアとして支援を利用していくとよいでしょう。特に、以下の2つについて連携することが大切です。
相談窓口としては、
などがあります。まずは、通院している医療機関の相談室(医療ソーシャルワーカー)に相談してみるとよいでしょう。
コフィン・シリス症候群は非常にまれな病気なので、聞いたこともない病気だと思われるかもしれません。しかし、同じ病気を持つ患者さんは日本にもいらっしゃいます。埼玉県立小児医療センターでは情報提供や交流会を実施しており、ご参加いただいた方々と情報共有を行っています。
親御さん方と集まってお話ししてみると、困ったときの対処法などの生活に即した情報を共有することができます。それは、必ずしも医学的に明らかになっていることではありませんが、患者さんが生活していくために大事な情報です。交流会を通してそういった情報が積み重ねられていくことで、患者さんとご家族にさまざまな情報提供ができるようになればと考えています。
埼玉県立小児医療センター 遺伝科 科長
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