概要
コフィン・シリス症候群とは、発達の遅れとともにさまざまな体の症状を持つ可能性がある生まれつきの病気で、指定難病のひとつです。この病名は、1970年に報告したコフィンとシリスという人物の名前にちなんでつけられました。
世界での報告例は200例未満ですが、原因となる遺伝子異常が報告されて日が浅いことから、今後はさらに報告例が増えてくるのではないかと考えられています(2018年時点)。
原因
コフィン・シリス症候群は、いくつかの遺伝子異常が原因となることが知られています。原因となる遺伝子群は2012年に報告されており、ARID1A、ARID1B、 SMARCB1、SMARCE1、SMARCA4などがあります。特にARID1B遺伝子異常に関連して発症することが多いとされています。
また、コフィン・シリス症候群の患者さんがお子さんを有する場合は、「常染色体優性遺伝」という遺伝形式で遺伝子の異常が受け継がれるため、お子さんが同じ病気を有する確率は50%です。
症状
コフィン・シリス症候群の主な症状は、知的運動面の遅れと特徴的な顔貌です。知的運動面の遅れは中程度から重度であり、発語が困難になることがあります。顔貌には、髪の毛が薄い、眉毛が濃い、口唇が厚いなどの特徴がみられます。
また、多くの場合、手・足ともに小指の爪や先端の骨が小さいという特徴がみられます。約半数の患者さんは、てんかんを発症します。
その他、呼吸器感染症を繰り返すこと、哺乳障害や成長障害、筋力低下がみられることがあります。心臓や腎臓、眼や聴覚などに生まれつきの障害を生じることもあります。
検査・診断
コフィン・シリス症候群は遺伝子異常が原因で発症するため、基本的には遺伝子検査を行うことにより診断が可能です。しかし、すべての患者さんに遺伝子異常が認められるわけではなく、その場合は症状を基準として診断されます。
また、生まれつき起こる別の症状について検査が必要になることがあります。たとえば、先天性心疾患(生まれつき心臓の構造に問題がみられる病気)の検査として、胸部単純レントゲン写真、心電図、心エコーなどが行われます。
治療
コフィン・シリス症候群を根本的に治療する方法はありません。合併する可能性がある症状に応じた治療が中心となります。症状は全身多岐に渡るため、各分野を担う医療従事者がチーム体制を組み、アプローチをすることが求められます。
呼吸器感染症については、抗生物質などの使用が検討されます。感染症予防を目的とした予防接種も重要です。呼吸器感染症や心不全などをきっかけとして呼吸不全が生じることがあるため、その場合は人工呼吸器が使用されることがあります。
心疾患については、病気に合わせて内服薬や手術が検討されます。てんかんについては、抗てんかん薬の使用が検討されます。難聴については、補聴器の使用などが検討されます。
また、知的面での障害を認めるため、療育的支援(理学療法、作業療法、言語療法)が重要です。
医師の方へ
「コフィン・シリス症候群」を登録すると、新着の情報をお知らせします