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なぜ病院総合医が必要なのか−日本病院会で行う病院総合医の育成
一般社団法人日本病院会では、2018年(平成30年)4月から病院総合医の育成を開始しています。今年度は、200名を超える医師が育成プログラムに応募をしました。今回は病院総合医育成事業担当である日...
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なぜ病院総合医が必要なのか−日本病院会で行う病院総合医の育成

公開日 2018 年 04 月 16 日 | 更新日 2018 年 04 月 19 日

なぜ病院総合医が必要なのか−日本病院会で行う病院総合医の育成
末永 裕之 先生

小牧市民病院

末永 裕之 先生

目次

一般社団法人日本病院会では、2018年(平成30年)4月から病院総合医の育成を開始しています。今年度は、200名を超える医師が育成プログラムに応募をしました。今回は病院総合医育成事業担当である日本病院会副会長・末永裕之先生(小牧市民病院病院事業管理者)に、病院総合医の育成に至った背景や日本病院会における病院総合医育成プログラムの特徴についてお話を伺いました。

日本病院会の病院総合医

医師の地域偏在には改善がみられず、また多疾患を抱える高齢者がますます増えてきています。このような状況があるにもかかわらず、専門領域しかみない医師が増えてきています。そのため、全身をみることができ、チーム医療の中心となるような医師が病院のなかにも求められています。そこで、日本病院会では「病院のなかで総合診療を行う日本病院会認定病院総合医」の育成を始めました。

なぜ病院総合医が必要なのか−日本の病院が抱える課題

日本病院会が病院で総合診療を行う病院総合医を育成するに至った背景には、日本の中小病院や大病院が抱えているいくつかの課題があります。

中小病院の課題と病院総合医の役割

まずは中小病院における課題についてです。

近年医療の専門化が進み、自らの専門領域を持つ医師が増えてきています。たとえば、整形外科医であっても膝関節の診療だけ行う、というようなことです。

このような細分化が進むと、病院は診療科のなかに各専門領域の医師を配置しなければなりません。しかし、医師を集めにくい中小病院で、診療科内にすべての専門医を揃えることは現実的に不可能です。

そこで、医師不足に悩む中小病院では、患者さんをトータルに診療できる病院総合医が必要になります。特に高齢化が進む現代、同時にさまざまな病気を抱えている方は増加しています。このような方々に対して、病院総合医が全身をみて診断を行い、専門治療が必要な場合には院内外の専門医に紹介する、というような役割が求められます。

大病院の課題と病院総合医の役割

また、大病院においても病院総合医が必要となる課題があります。

大病院では各診療科に多くの専門医が揃っていることから、自分の専門以外の診療を行わない傾向は、中小病院よりも顕著です。

そのため、このような大病院では、患者さんを専門医につなぐ役割を担い隙間を埋める医師、すなわち病院総合医が必要です。

たとえば、入院中の患者さんの全身管理を病院総合医が行い、専門的な治療が必要な場合には各専門医に任せる、というような役割分担を行うことが可能となります。

日本病院会が目指す病院総合医

チーム医療

先述のような課題を解決するためには、病院総合医をいかに育成していくかが重要です。そこで、日本病院会では以下の5つの理念のもとで育成プログラムを作成しています。

  1. 病院において包括的かつ柔軟に対応できる総合的診療能力を有する医師を育成する
  2. 複数の診療科、介護、福祉との連携を調整し、全人的に対応できる医師を育成する
  3. 医療と介護の連携の中心的役割を担うことができる医師を育成する
  4. 多職種をまとめチーム医療を推進できる医師を育成
  5. 総合的な病院経営能力を持ち、地域医療にも貢献できる医師

すなわち、総合的に患者さんを診療する能力を持ちながら、多職種協働や地域連携、病院経営など、医療全体を俯瞰して幅広く考えることのできる病院総合医を育成していきたいと考えています。

チーム医療におけるコミュケーション能力

これからの医療現場において、チーム医療の重要性が叫ばれています。そのなかで、病院総合医に特に求められる力は、チーム医療の中心的存在となることです。

チーム医療には、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、リハビリスタッフなど、あらゆる専門職が介入します。そのため病院総合医には、各専門職が持つ個々の能力を活かすために、それぞれの意見にしっかりと耳を傾ける力が必要です。

そして、患者さんの治療のゴールに向かって、どの専門職がどこで関与すればよいか、などのチームを束ねるコミュニケーション能力が非常に重要であると考えます。

病院総合医育成プログラムの内容

研修病院

日本病院会には、国立病院、JCHO(地域医療機能推進機構)、自治体病院協議会、日本赤十字社、済生会、厚生連など、あらゆる病院団体が加入しています。そのなかから、今回の育成プログラムの研修施設として91施設の病院が認定されています。(2018年4月現在)

対象者・研修期間

育成プログラムの対象となるのは、医学部卒業後6年目以降の医師です。つまり、初期臨床研修2年、後期臨床研修3年間を終えた方を想定していますが、新たなキャリアパスとして病院総合医を目指す医師が当面の対象者になると思われます。

研修期間は原則2年間ですが、すでにお持ちのキャリアによっては1年間に短縮していただくことも可能です。たとえば、すでに内科や救急診療科で総合診療に近い実臨床を行っているなど、育成プログラムを十分に到達できると考えられる方については研修期間の短縮ができます。

研修内容

育成プログラム(カリキュラム)は研修病院ごとに作成されるため、研修を受ける病院によって異なります。また、育成プログラムは日本病院会に提出、認定をされたものです。

基本的には、座学ではなく実際の臨床のなかで病院総合医としての力を身につけていただくことを重視しています。しかし、臨床だけでは学ぶことのできない医療安全や感染対策、医療情勢、病院経営などは日本病院会が行う講習会に参加していただくようにしています。

指導医・評価方法

病院総合医育成に携わる指導医は、日本病院会等の臨床研修指導医講習会を修了した医師、または病院管理者としています。最終的には指導医の評価によって履修項目が達成しているかを確認します。

便利屋ではなく、リスペクトされる病院総合医に

末永先生

病院総合医が行うことは非常に幅広く、そのために病院のなかの便利屋のような扱いをされることも少なくありません。しかし、私たちが目指している病院総合医は使い勝手のよい医師ではなく、チームや病院の中核となる病院総合医です。

冒頭でお話ししたように、医療の細分化が進むなかでは、どうしても最先端な専門医療に目が行きがちです。専門的な医療はもちろん重要ですが、それだけでは医療は成り立ちません。

特に高齢者が増加していくなかでは、専門的な治療の前後に、患者さんを総合的に診療・管理できる医師の存在が大きくなるでしょう。

将来的には、「病院総合医がいないと病院がまわらないね」とみんなにリスペクトされるような病院総合医の育成に努めていきます。

1971年名古屋大学医学部卒業。1982年には小牧市民病院外科部長に就任し、1999年には同病院の院長に就任。また、病院事業管理者としても病院経営に深く携わる。日本病院会の副会長を務める傍ら、病院総合医育成事業担当を務め、病院総合医の育成と普及を行っている。