難治頻回部分発作重積型急性脳炎は、発熱をきっかけに、けいれん発作を繰り返す病気です。この病気は、幼児から小学生くらいの子どもに発症が多いといわれています。
子どもにけいれんが起こる病気は他にもありますが、この病気にはどのような特徴があるのでしょうか。今回は、けいれんや意識障害を起こす病気の研究に携わられている東京大学大学院医学系研究科発達医科学の水口 雅先生に難治頻回部分発作重積型急性脳炎の原因や症状についてお話しいただきました。
難治頻回部分発作重積型急性脳炎とは、繰り返すけいれん発作を特徴とする脳の病気です。この病気では、発熱の数日後から、一日に数10回〜数100回のけいれん発作が繰り返し起こります。けいれん発作の頻度は、1〜2週間程でピークに達しますが、その後もけいれん発作が続きます。
急性期(病気が始まり、病状が不安定かつ緊急性を要する期間)はこのように「脳炎」の症状が現れますが、その後の慢性期(病状は安定しているが、治癒は難しい状態が続く期間)には、薬が効きにくく治療が難しい「てんかん」へと移行していきます。
この病気は子どもにも大人にも起きますが、幼児期から学童期(6〜8歳くらいの小学校低学年)に発症することが多いといわれています。男女ともに発症する可能性のある病気です。
子どもが発熱後にけいれんを起こす病気は、難治頻回部分発作重積型急性脳炎以外にもあります。たとえば、感染症などによる体温の上昇に伴いけいれんが起こる熱性けいれんは、子どもに起こりやすい病気のひとつです。
このような他の病気の場合、けいれん発作は特別な治療をしなくても、自然に止まることが多いです。なかにはなかなか止まらず長時間続くけいれんもありますが、抗てんかん薬を静脈に注射することによって、けいれんを止めることができるケースがほとんどです。
しかし、難治頻回部分発作重積型急性脳炎の場合、通常使用する量の抗てんかん薬を静脈に注射しても、けいれんを止めることができません。記事2の治療の項で詳しくお話ししますが、この病気では、通常は使用しないような大量の抗てんかん薬を静脈注射して初めて、けいれんを止めることができます。
これは、他のけいれんを起こす病気との違いのひとつといえるでしょう。
2018年5月現在、難治頻回部分発作重積型急性脳炎の原因はわかっていませんが、何らかの免疫反応(体内に侵入したウイルスなどの異物に対してはたらく反応)が関係していると考えられています。
また、ごく少数ですが、患者さんのなかにはてんかん症候群に関連した遺伝子の変異をもつ方も報告されています。
2018年5月現在、病気が遺伝する可能性はないと考えられています。実際に家族内で2人以上がこの病気を発症したケースはほとんど報告されていません。しかし、遺伝子の役割も含めて原因については解明されていない点が多く、研究が続けられています。
けいれんの前に起こる発熱は、数日程度続きます。この発熱は、インフルエンザなどの原因がわかるケースもまれにありますが、原因を特定できないケースが多いです。そのため、患者さんやご家族は、風邪による発熱だと思うことがほとんどです。患者さんによって体温上昇の程度も異なります。
難治頻回部分発作重積型急性脳炎の急性期(病気が始まり、病状が不安定かつ緊急性を要する期間)には、発熱の数日後から、1日に数10回〜数100回のけいれん発作を繰り返します。このけいれん発作は、5分や15分の間隔で起こります。たとえば、15分間隔であると1日に数10回のけいれんが起こりますし、5分間隔であると1日に100回を超えることもあるでしょう。
けいれん発作は、体の全身ではなく一部分がけいれんします。具体的には、顔や目の筋肉、上半身であることがほとんどです。この発作は、数日でおさまるわけではなく、数週間〜数か月もの間、同じけいれん発作が継続して起こります。けいれん発作には意識障害を伴うことが多く、患者さんは意識を失っていることがほとんどです。
発熱とともにけいれん発作や意識障害が生じるケースは、単純ヘルペス脳炎や日本脳炎などいろいろな脳炎でみられます。したがって、難治頻回部分発作重積型急性脳炎の急性期は脳炎によく似ています。
急性期を過ぎ慢性期になると発熱はなくなり、けいれん回数もピークを過ぎますが、薬が効きにくくけいれんの治療が難しい状態が相変わらず続きます。つまり、脳炎から難治性てんかんへと移行します。急性期ほど頻回ではありませんが、けいれん発作を何度も繰り返します。知的障害や手足の麻痺が残ることもあります。
この病気は、後遺症として知的障害を合併する可能性がかなりあります。また、高次機能障害と呼ばれる障害を残す方もいます。高次機能障害とは、脳の機能の損傷によって、記憶したり感情をコントロールしたり、計画を立てたりすることに支障をきたす状態です。そのため、難治頻回部分発作重積型急性脳炎の患者さんは、学校の勉強や日常生活が困難となるケースがあります。
さらに重症であると、手足の麻痺などの運動障害を残すこともあります。
難治頻回部分発作重積型急性脳炎では、薬の副作用や脳の障害のために亡くなるケースもありますが、少数です。基本的には直ちに生命に直結するような病気ではありません。
知的障害をもつ方が多いこともあり、福祉や教育のサポートを受けながら治療を続けるケースが多いと考えられます。
難治頻回部分発作重積型急性脳炎の診断と治療に関しては、記事2『けいれん発作をおさえる治療とは? 難治頻回部分発作重積型急性脳炎の診断と治療』をご覧ください。
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